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【MaaS体験記】海上もオンデマンドで結ぶ「辺境の地」、その課題をテクノロジーで解決する志摩市

今回取材したのは、伊勢志摩エリアの観光を主目的とした近鉄グループホールディングスと志摩市の取り組み(以下「志摩MaaS」)だ。オンデマンド交通(オンデマンドバス)を利用して実際に観光地に足を運び、同乗した利用者の声を聞くことができた。志摩MaaSの取り組みの背景にある地域課題と、新しいテクノロジーの活用で見えてきた最先端の取り組みを紹介する。

◆志摩MaaSの取り組みとは

志摩MaaSは、伊勢志摩エリアの志摩地域を対象に、タクシー・バス・英虞湾舟運などの二次交通の利便性向上を図るとともにオンデマンド交通も取り入れ、広範囲に観光客の利用促進を図ることを目的とした取り組みだ。2019年に、国土交通省「新モビリティサービス推進事業」の先行モデル事業に選定された取り組みで、近鉄グループホールディングスを中心に実施されている。

志摩市では、市が掲げる『住んでよし、訪れてよしの志摩市』の実現に向けて、近鉄グループホールディングスと「志摩MaaS推進に係る連携協定」を締結している。

2019年10月と11月におこなわれた実証実験では、タクシー・バス・船など二次交通のオンデマンドのサービス提供を中心に行い、2回目にはMaaSに関する一連のシステム(検索、予約、決済)の開発と鉄道のデジタルフリーパスや旅行商品のサービス提供まで行っている。特に、2020年はじめにリリースしたMaaSアプリ「ぶらりすと」により、出発地から目的地までの交通手段の検索・予約・決済がまとめて可能になったことで、オンデマンド交通がさらに利用しやすくなった。

◆オンデマンド交通で観光体験

志摩地域の近鉄特急停車駅でもある鵜方駅と観光地である横山展望台を結ぶ二次交通「オンデマンドバス」を利用した。今回の取材を計画するにあたっては事前に、MaaSアプリ「ぶらりすと」をダウンロードし、アプリから特急券の購入を行った。オンデマンド交通の予約は旅先での所要時間がわからない課題もあり、ゆとりをもって予約した。 鵜方駅に着くとロータリーがあり、端っこのバス停に「ぶらりすと乗降場所」という張り紙があったので、そこから時間通りに乗車する。

三重交通の運転手さんは「電話での予約が多い」と話す。電話で受けて代行入力をしているのが現状らしい。これまでは駅からの直通便がなかったこともあり、オンデマンド交通を利用する観光客は意外と多いと言う。国内観光客の場合はガラケーユーザーも多く、「ぶらりすと」アプリを使うことができないため電話での予約が多くなるようだ。

所要時間15分程度で横山展望台まで行ける。平日の昼ごろだったが小さい駐車場がほぼ埋まるくらい車があり、数組の観光客がいた。天空カフェテラスのある展望台までは登っていくと志摩地域が一望できた。奈良からきた親子は、マイカーで2時間程度かけて来たと話していた。帰りもオンデマンド交通を予約していたが、バス停がわからなかったこともあり予定が少し遅れた。アプリでバス停の場所を正確に示すことが必要だと痛感した。

また、帰りのオンデマンドバスで同乗した年配のご夫婦は「駅についてから周遊バスがあると思った」と話した。テレビで横山展望台を見て行きたくなり、奈良から2時間かけて「しまかぜ」に乗って来たらしい。鵜方駅について展望台まで直通がないことを知り、あわてて電話で予約したそうだ。利用した感想を聞くと「電話で呼べば来るのは便利」と話す一方で「システムがわからなかった」と漏らす。駅に着いてからの利用をどう見るかは大きな課題だ。実際に電話で予約するケースを考えると、そうした窓口を設けるのも手段のひとつかも知れない。

◆志摩地域の魅力を発信する

以前から公共交通の課題はあったが、志摩地域の公共交通機関の9割が近鉄グループというのもあり、近鉄グループの中長期計画をキッカケにMaaSの取り組みがスタートしたと志摩市の竹内千尋市長は言う。

志摩市が選ばれたのは、観光地が多くレジャー施設も集中していることが理由にある。また、1970年(昭和45年)大阪万博以来、交通手段も変わり駅からの二次交通が大きな課題だった。タクシーで回るには費用がかさむし路線バスは本数が少ない。そうした理由からオンデマンド交通を検討するに至った。

観光スポットが点在するという点も大きな課題だ。海上の移動も含めて公共交通機関だけで回ることは難しい。日本人観光客でも難しいのだから、外国人にとっては尚更だ。そのため、実証実験の二期目でリリースしたMaaSアプリ「ぶらりすと」では、多言語対応(英語や繁体字)を行い、出発地から目的地までの交通手段を一括で利用できるようにした。

MaaSアプリ「ぶらりすと」はまだ進化中だが、ゆくゆくは定額利用(サブスクリプション型)も見据えている。アプリには「アクティビティ」というメニューもあり、食文化や体験など志摩地域の魅力を取り入れようとしている。

そのほか、移動を楽にする「YADOKARI」のようなモビリティの実証や、離島の物資輸送にドローンを活用した実証事業も進めている。「いくら移動が便利になり、スムーズに目的地に行けることができても、行き先の魅力度があがらなければ活用されない」と市長は言う。目的地の魅力を発信することに加え、そこまでの移動手段がわかり、楽に移動できるようにすることを目指す。

全国で、空港がない・新幹線が止まらない場所というのは、三重県・奈良県・群馬県の3つだけだと言う。こうした辺境の地から新しい取り組みを発信することを市長は楽しんでいるようにも見えた。

◆何のためにMaaSに取り組むのか

志摩MaaSの主体でもある近鉄グループホールディングスの担当である吉野氏は、この実証実験を通じてほかの交通事業者やMaaS関係者に対して「何のためにMaaSに取り組むのかを参加する事業者間で十分に話し合うことが重要」と話す。目に見える成果としては、「伊勢・鳥羽・志摩デジタルフリーパス」の売れ行きが好調であることや、外国人によるアプリのダウンロード数増加などがあげられる一方で、「中長期的に考えると、いかにマネタイズ化するかが大きな課題」と話す。

ほかの地域でも、実証実験という一時的なキャンペーンではなく、持続可能性のある取り組みにしていくことが大きな課題だ。

◆実証実験してわかったこと

二期目になる志摩MaaSの実証実験は、MaaSアプリ「ぶらりすと」から予約ができ、海上も含めたルートの提案とデジタルチケットの購入ができる。これは全国でも先行モデルといえる。一方で、実際に体験してみてわかった課題も非常にシンプル。それは予約の仕方と、乗降場所の案内だ。これらは利用者の声にもあったように、事前にわかっていれば解決する問題が多い。すでにあった課題に対して必要な交通手段を用意できたことで、今後は利用時の課題を改善していくことが求められる。

「辺境の地ならでは」と何度も話す志摩市竹内市長の話が印象深い。これまで解決できなかった移動の課題や半島ならではの地理的な課題を、最新テクノロジーを利用することで解決できると語る姿勢は、ほかの地域にも参考になる点が大いにあると思う。

英虞湾が生んだ「真珠王」御木本幸吉が明治初期に真珠養殖を開始して世界に打って出たように、辺境の地ならではのビジョンを掲げて、最先端テクノロジーで世界をあっと驚かせる、そうした志摩市の取り組みにますます注目が集まるだろう。

■MaaS 3つ星評価

エリアの大きさ ★★★

実証実験の浸透 ★★☆

住人の評価 ★★★

事業者の関わり ★★☆

将来性 ★★★

坂本貴史(さかもと・たかし)

株式会社ドッツ/スマートモビリティ事業推進室 室長

グラフィックデザイナー出身。2017年までネットイヤーグループ株式会社において、ウェブやアプリにおける戦略立案から制作・開発に携わる。主に、情報アーキテクチャ(IA)を専門領域として多数のデジタルプロダクトの設計に関わる。UXデザインの分野でも講師や執筆などがあり、2017年から日産自動車株式会社に参画。先行開発の電気自動車(EV)におけるデジタルコックピットのHMIデザインおよび車載アプリのPOCやUXリサーチに従事。2019年から株式会社ドッツにてスマートモビリティ事業推進室を開設。鉄道や公共交通機関におけるMaaS事業を推進。

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