■法人ニーズはほとんどない!? 「ヴェルファイア」のユーザー層は?
高級感のある大型ミニバンのなかで、トヨタ「アルファード」は圧倒的な人気を集めています。そして、アルファードと基本部分を共通化した姉妹車として「ヴェルファイア」もラインナップされ、2026年6月にアルファードと同時に一部改良が行われました。
【画像】これが「ヴェルファイア&アルファード」最新モデルです! 画像を見る
そこで販売店で、購入を希望する来店者のニーズを探ってみました。
トヨタの販売店スタッフは以下のようにいいます。
「アルファードとヴェルファイアは姉妹車ですが、お客様はこのふたつのモデルを異なるクルマと考えています。アルファードは上級ミニバンの典型で、ファミリーのお客様が多いです。重役などを乗せるために、法人のお客様が購入することもあります。
一方、ヴェルファイアには法人のお客様はほとんどいません。大半が個人のお客様で、基本的にはファミリーカーとして使います。そしてヴェルファイアには、クルマの好きな方が多いです」
では、アルファードとヴェルファイアで迷うことはないのでしょうか。
「両車で選択に迷われることは少ないです。アルファードは、法人も含めて『豪華なミニバン』を欲しいお客様が購入されますが、ヴェルファイアは『走りが好きなこだわり派』のお客様が多く、指名買いで最初からお目当てが決まっているケースがほとんどです」
ちなみに以前は、アルファードは「トヨペット店」、ヴェルファイアは「ネッツ店」と、それぞれ別の販売店でしか買えませんでした。
しかし2020年5月からは、トヨタのすべてのお店で全車種を扱う体制に変わり、どこでも同じクルマが買えるようになったため、見た目だけを変えた姉妹車は必要性が薄れ、「ルーミー」や「ハイエース」のようにひとつの車種へ統合されていきました。
しかし例外もあり、アルファードとヴェルファイアおよび「ノア」と「ヴォクシー」は、全店が全車を売る体制になった後も姉妹車関係を続けています。
販売店のコメントにあった通り、姉妹車でありながら、個性を際立たせる商品開発が可能になり、基本部分を共通化することで開発や生産に要するコストを抑えて別の車種として販売できれば効率が良いというわけです。
ヴェルファイアの大きな特徴として、まずアルファードとは一線を画すフロントマスクのデザインが挙げられます。アルファードはフロントグリルにメッキを散りばめた華やかな形状ですが、ヴェルファイアは「Zプレミア」にブラック、「エグゼクティブラウンジ」にはガンメタの塗装を採用し、非常に精悍で引き締まった印象を与えます。
パワーユニットも異なります。2.5リッター自然吸気(NA)エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドとプラグインハイブリッドは共通ですが、ガソリンモデルは、ヴェルファイアが動力性能の高い2.4リッターターボ、アルファードが2.5リッターNAエンジンです。
また、ヴェルファイアには、アルファードが装着していないフロントパフォーマンスブレースも備わります。ボディ前側の剛性を向上させ、ステアリング操作に対する車両の反応も一層正確に仕上げました。アルファードと比べると、ハンドルを切り始めた瞬間から、自分の思い通りにクルマがキビキビと曲がってくれます。
ヴェルファイアは、サスペンションもアルファードに比べて少し硬めに設定しているため、カーブを曲がったり車線変更をする時にボディが傾きにくく、安定した姿勢で走ることができます。
ハイブリッドの売れ筋グレードが装着するタイヤサイズは、アルファードは17インチですが、ヴェルファイアは19インチです。そのためにタイヤが路面をつかむ性能も高く、フロントパフォーマンスブレースなどと相まって、走行安定性も向上しました。
このように、ヴェルファイアの運転感覚は、フロントマスクのデザインと同じくラージサイズミニバンでありながらスポーティです。アルファードと比べると、峠道を走っても車両の動きが鈍く感じることは少ないでしょう。その代わり乗り心地は、アルファードよりも少し硬く感じられるかもしれません。
■150万円高くてもヴェルファイアが“割高”ではない理由は?
ラージサイズミニバンでは、多くのユーザーが豪華な内装とリラックスできる柔軟な乗り心地を重視するため、販売台数はアルファードのほうが多いです。
2025年度(2025年4月から2026年3月)の1か月平均登録台数は、アルファードが6780台で、ヴェルファイアは2737台でした。ヴェルファイアの売れ行きは、アルファードの40%に留まります。
販売店では、ヴェルファイアとアルファードの売れ行きの違いを以下のように説明します。
「走りを向上させたスポーティなヴェルファイアはクルマ好きのお客様に人気ですが、やはり販売台数は、豪華で快適なアルファードのほうが多いです。ヴェルファイアは装備が充実して価格が高いことも販売に影響しています。そのためトヨタの販売計画もアルファードが多く、ヴェルファイアは少ないです。この影響で、ヴェルファイアを注文すると納期がアルファードよりも長引くことがあります」
販売店の指摘通り、ヴェルファイアの装備と価格はアルファードを上回ります。それぞれの売れ筋であるヴェルファイアの「ハイブリッドZプレミア(2WD)」と、アルファードの「ハイブリッドZ(2WD)」を比べてみましょう。
まず価格ですが、アルファードは最も安い売れ筋グレードが559万9000円から手に入るのに対し、ヴェルファイアの売れ筋モデルは709万9400円と、約150万円も高く設定されています(価格は消費税込)。
しかし装備を比較すると、この価格差にも納得がいきます。アルファードではオプション扱いになっている「左右独立ムーンルーフ」や「自動駐車機能」、「カラーヘッドアップディスプレイ」などが、ヴェルファイアにはすべて最初から標準で付いているからです。
さらに、シートも上質な本革仕様になり、走行性能を高めるパーツや大径19インチタイヤも標準装備されます。
つまり、ヴェルファイアは「最初から高級な装備を全部のせした贅沢仕様」になっているため、一概に割高とはいえません。とはいえ、これらの豪華装備が全員に必要かといえば、そうではないでしょう。
バリエーションを見ても、ヴェルファイアは最も安いモデルでも670万円台からしか選べないのに対し、アルファードは必要な装備に絞って550万円台から購入できます。この手頃なスタート価格こそが、アルファードの方が圧倒的に売れやすい大きな理由となっています。
しかし、車両本体価格が高めなヴェルファイアですが、購入時の大きな強みもあります。ヴェルファイアの残価設定ローンの残価(残存価値)は、3年後の段階で新車価格の67%、5年後でも53%に達します。
一般的なクルマの3年後の残価が新車価格の42~48%程度であることを考えると、この2台の残価は相当な高水準です。
つまりヴェルファイアの資産価値はアルファードと同等なので、好みに応じて選び分ければ良いでしょう。
カーブを曲がる時のステアリング操作に対する車両の反応はヴェルファイアが正確で、乗り心地はアルファードが柔軟です。デザイン、装備、価格も含めて相違点が多いため、乗り比べて判断すると良いでしょう。
またアルファードは、ハイヤーなどの営業車を含めて、街中で頻繁に見かけます。「周りとは違う個性を重視したい」というユーザーにも、ヴェルファイアは適しています。(渡辺陽一郎)
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