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不自然に「宙に浮いたボディ」 ロータス・シックス(1) 傑作はオフロードも強かった

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不自然に「宙に浮いたボディ」 ロータス・シックス(1) 傑作はオフロードも強かった

トライアルレースのためのシックス

伝説的なロータス・セブンの前身となったのが、ロータス・シックス。別名、ロータスMk VIだ。

【画像】傑作はオフロードも強かった ロータス・シックス ケータハム・セブンと最新エミーラも 全175枚

クルマを愛する英国人が、自宅のガレージで組み立てることができる、軽量なスポーツカーだった。コーリン・チャップマン氏による知的な設計が与えられ、ロータスというブランド名を冠して売られていた。

スペースフレーム構造の軽いシャシーに、サイドバルブのフォード・エンジンが搭載され、多くの若手レーサーのキャリアアップへ貢献してきた。1957年に、セブンへ交代するまで。

今回ご紹介する「HEL 46」のナンバーで登録された、ペール・ブルーに塗られたシックスも、確かな歴史を築いてきた1台。サーキットでのレースや、ヒルクライムでのタイムアタック以外にも、活躍の場を広げていた事実を証明している。

見た目は、少し不格好かもしれない。正式にロータス・エンジニアリング社が設立される4年前、1948年に生産されたシックスだが、車高は不自然なほど高く、幅が細い。

険しい山岳道路を駆け巡った、トライアルレースのために仕立てられた貴重な1台だ。1953年から、シックスはレース用のキットカーとして正式に販売が始まるが、それ以前からトライアル用モデルが合計3台作られている。

シックスは、合計で約100台が提供された。このHEL 46は、その最初期に作られたクルマに当たる。

サイクルフェンダーが高くボディは宙に浮く

セブンと同様に、シックスのイメージといえば、路面へ低く構えたボディで、凛々しい姿を思い浮かべるはず。しかし、HEL 46は例外。タイヤから遥か高い位置にサイクルフェンダーが載り、ボディは宙に浮いている。

最低地上高は印象的なほど高く、荷重移動による傾きも明確。2脚の小さなシートはフレームで持ち上げられ、着座位置も高い。通常なら、路面へ着きそうなほど低い位置へ座るのだが。

通常のシックスよりトレッドが狭く、全長は約300mmも短い。同じシックスを名乗るとは思えないほど、プロポーションが違う。

それでも、このトライアルレーサーは、他のシックスと同様に成功を残してきた。初勝利を収めたのは、1953年6月のフランス・アヌシーで開催された、ロンドン・モーター・クラブのイベントだった。

マシンの名前は「ヴィッキー」。当時は、女性の名前でクルマを登録する習慣があった。現在のオーナーは、マーティン・ハリデー氏。自らステアリングホイールを握り、今も積極的にイベントへ参加している生粋のマニアだ。

カヤックのように、開口部が小さいキャビンへ身体を収める。ソフトなスプリングが、優しくボディを傾ける。まったく、ロータスらしくない。

1172ccとは思えないほど太いトルク

非力なエンジンを搭載したオフロードモデルらしく、トランスミッションのギア比は信じられないほど低い。アスファルト上での発進時は、1速を必要としない。フォード由来の3速MTは、2速と3速の間が離れており、70km/h以上まで2速で引っ張れる。

フォードのサイドバルブ4気筒ユニットは、旧式な1172ccとは思えないほどトルクが太い。アクアプレーン社のチューニング・パーツと、ハイリフトなニューマン社製カムが組まれている。

推定される最高出力は、ノーマルの33psより若干高いだけだろう。とはいえ、静止状態から勢いよくスピードを乗せていく。

トライアルレースでは、ロードタイヤを履くという決まりがあり、リミテッドスリップ・デフの装備は許可されていなかった。優しく粘り強いパワーデリバリーが、必然的に求められた。

ツイン・リーディングシューを備えるフロントのドラムブレーキは、感心するほどしっかり効く。強力なリアブレーキは、ハンドレバーで操る。

フロントノーズは短い。木々や地面の岩を避けるのに、理想的な前方視界を提供している。フロントタイヤは大きく向きを変える。直進時のステアリングは曖昧で、左右へふらつく。

コーナーでは、思い切りボディが傾く。アクセルペダルはベタ踏みのまま、なんとなく意図したラインの付近をトレースしていく。かなり特殊なロータスだ。

36.3kgしかないセブンのシャシー

このHEL 46のシャシーを製造したのは、プログレス・シャシー・カンパニー社。4番目に作られたものだと考えられる。ボディはウィリアムズ&プリチャード社が仕上げた。

ロータスへ製作を依頼したのは、ホレス・シンクレア・スウィーニー氏。ロイヤル・オートモビル・クラブ(RAC)のナショナル・トライアルズ規定に則り、フォード・トライアル・スペシャルとして提供されていた部品が利用されている。

トライアル用シックスのパンフレットで、ロータスはシャシーが36.3kgしかないことを強調していた。「スポーツレーシング・ユニットほど、高度ではありません。リジッドかスイングアクスルのサスペンションを、お好みで選べます。価格は110ポンドです」

フロントアクスルは、コイルオーバー・ダンパーが支える。シャシー番号は残っていない。本来は、左右に別れたフロントアクスルのブラケット上に、プレートが備わっていたはず。

エンジンは、通常のシックスより高い位置に搭載されている。キャブレターの吸気用トランペットが、ボディサイドから突き出ている。空間を稼ぐため、シャシーレールの左上部分は形状が変更されている。

スウィーニーはトライアルレースへ挑み、1953年のフランスで勝利。同じ年にシックスはアーサー・ヘイ氏という人物へ売却された。

彼は10年という所有期間に、グレートブリテン島南西部のエクセターやランズエンド、北東部のエディンバラなどの長距離トライアルレースへ参戦。モーターサイクリング・クラブから「トリプル」賞を贈られるなど、好成績を収めた。

この続きは、ロータス・シックス(2)にて。

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