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eスポーツとSFに共通点アリ。ルーキー・フラガの速さに「マジでグランツーリスモで練習した方がいい」と伊沢監督

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eスポーツとSFに共通点アリ。ルーキー・フラガの速さに「マジでグランツーリスモで練習した方がいい」と伊沢監督

 4月19日にモビリティリゾートもてぎで行われた全日本スーパーフォーミュラ選手権第3戦では、今季ルーキーとして参戦するイゴール・オオムラ・フラガ(PONOS NAKAJIMA RACING)が予選で3番手タイムを記録。これは、昨年来連勝記録を伸ばしているDOCOMO TEAM DANDELION RACINGの2台に続く好結果であり、さらにスタートで2番手へと浮上したフラガは、決勝ペースにおいてもダンディライアン勢の牙城を崩す勢いを発揮した。

 最終的にはピット作業後に3番手へと順位を落としたものの、フラガはそのまま3位表彰台を獲得。FIA F2などトップフォーミュラの経験者の参入を除けば、参戦3戦目でのポディウムフィニッシュは快挙と表現しても差し支えないものだ。

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 第3戦後、PONOS NAKAJIMA RACINGを率いる伊沢拓也監督に、フラガの速さの秘密について聞いた。


■切り分けられるコメント力と、山本尚貴の功績

 グランツーリスモ世界王者のフラガはブラジルから渡欧後、2022年より日本に活動拠点を移し全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権とスーパーGT・GT300クラスに参戦。前者でシリーズ4位となった。2024シーズンはANEST IWATA Racing with ArnageからスーパーGTに継続参戦しながらスーパーフォーミュラではPONOS NAKAJIMA RACINGのリザーブドライバーを務め、オフのルーキーテストからは65号車でデビューに向けたマイレージを重ねてきた。

 迎えた鈴鹿サーキットでの第1戦では、デビュー戦ながら予選Q2へと進出。第2戦では5位入賞と、早くもポイントを獲得することに。そしてスーパーフォーミュラでの初走行となったもてぎでは、前述の活躍を見せた。

「彼はテストから速さを見せていましたが、本人を含めた期待値と比べると、鈴鹿ではとくに予選で思うような結果を出せなかったかなと思います。2レース目は展開にも恵まれて上位に行きましたけど、彼の持っている実力からしたら、ちょっと不甲斐ない週末でした」と伊沢監督。テストにはない、レースウイークならではの組み立てという部分で、まだ不慣れな部分があったようだ。

 もてぎでの第3・4戦を迎えるまで、フラガのスーパーフォーミュラ経験は鈴鹿サーキットのみ。初走行となるもてぎでの走りは「未知数」だっというが、第3戦でフラガが見せた活躍には「いい意味で、すごく驚いています」と伊沢監督も認める。

 第3戦ではスタートで2番手に浮上。上位を戦うなかでも、無線からは落ち着きが感じられたという。なお、ルーティンピット後に3番手へと後退したことに関しては、「僕の中での反省点」と伊沢監督はピットタイミングの判断ミスを悔やんでいた。

 フラガの“ルーキーらしからぬ点”、そのひとつはマシンをセットアップしていく中でのコメント力の高さにあると伊沢監督は指摘する。

「コメントが分かりやすいですし、すべてをエンジニアに投げるのではなく、『直して欲しい部分』と『自分でどうにかする部分』の棲み分けが、はっきりしています。全部クルマのせいにするのではなく、『自分ののびしろ』も加味して考えられていますね。また、たとえばアンダーステアのときに、それをフロントで直すのか、リヤで直すのかといった選択肢について、ある程度自分の意見を交えて伝えながら、エンジニアのアイデアを引き出ししています」

 12月のルーキーテストから速さを見せてきたフラガ。伊沢監督は、2024年まで岡田淳エンジニアとともにこの車両のセットアップを煮詰めてきた、前任の山本尚貴の貢献度も大きいと強調している。

「彼が残してくれたものがあるから、テストを含めて最初からリズムをつかむことができています。周りから見たら『イゴール、すごいね』という評価になっていると思うのですが、このレースはクルマ(のセットアップ)が占める割合はすごく大きい。山本選手が作ってきたクルマがしっかりしたものだからこそ、彼を良く見せることができているのだと思います」


■「100%の、ちょっと手前」を感じ取る技術

 そんなフラガの現在課題について聞くと、「いや、このままでいいんじゃないですか。自分のリズムを崩さずにやっているし、『ここを、もっとこうしたらいい』という部分は、正直とくに見当たらない」と伊沢監督。そして、こんな洞察を付け加えた。

「最近ドライバーの間でも話すのですが、マジでグランツーリスモで練習した方がいいんじゃないかと思っています。今回、小林(利徠斗/ITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPULから代役参戦)選手も、少し良い雰囲気で走っているじゃないですか」

 フラガと同じく、小林もeスポーツの世界で活躍しており、2023年のグランツーリスモ・ワールドシリーズのネイションズカップでは日本代表のひとりとして戦い、世界第2位にも輝いている実力者だ。

 彼らのオンボード映像を観察すると特徴的な操作があり、それが現在のスーパーフォーミュラマシンの特徴に合致しているのではないか、というのが伊沢監督の仮説だ。

「小林くんもイゴールも、びっくりするくらいステアリング操作が丁寧。もう、めちゃくちゃ丁寧に、ゆっくり、ゆっくりとステアリングを切っていて、『本当にいま、アタックしてる?』と思うくらいなんですよ。もちろん、ふたりがたまたま同じ特徴を持ち合わせている可能性もありますが、グランツーリスモ独特の難しさが、現在のこの空力に対して超ピーキーなクルマに通じているのは間違いないと思っています。彼らは自然にその走り方が身についてきた結果、スーパーフォーミュラに乗ってもいきなりちゃんと走れるのではないでしょうか」

 姿勢変化に敏感な空力依存度の高いレーシングカーを速く走らせるコツである『丁寧なステアリング操作』。理屈で理解できていても、いきなり実践するのはトップドライバーとはいえ難しい技術である。

 これについてフラガ本人に話を向けると、「無意識にやっていますね。逆にちょっと攻めようとすると、まとめきれなかったりするので……こういう感じでしか、自分は乗れないです」と笑う。そして、このスタイルがeスポーツからの影響であることは、本人の意識の中にもあるようだ。

「実車のタイヤは、100%を超えても、そこから多少粘ってくれますが、シミュレーターの場合は100%のグリップを超えるとそこからは落ちる一方なので、常に99.5%から100%の間で走らないといけません。とくにグランツーリスモではフロントを気合いで曲げようとすると、アンダー方向になってしまう。その『100%のちょっと手前』をうまいこと感じながらゆっくりとステアリングを切る、というイメージがついているんじゃないかという気がします」

 今週末のオートポリス含め、この先もスーパーフォーミュラでは未経験のサーキットが続くが、シミュレーターやオンボード画像、データロガーを活用しながら、フラガは準備を進めていくという。特徴的な走法を武器に、このまま上位で戦う常連となれるかどうか、注目のポイントとなりそうだ。

[オートスポーツweb 2025年05月15日]

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