直前でのカレンダー変更を受け、9月8~10日の週末に約26年のときを経て“7月9日”との愛称(独立記念日が由来)を持つサーキットに到着したアルゼンチン最高峰のFFツーリングカー選手権、TC2000(旧スーパーTC2000)の第9戦は、公式練習からスピードを披露したホンダ陣営YPFホンダRVレーシングが席巻。
予選でポールポジションを奪ったエースのファクンド・アルドゥソ(ホンダ・シビックTC2000)が、そのままレース1での覇権を手にするかと思われたが、最終周にまさかのトラブルで勝機を失うことに。
フロントロウ独占のルノー・フルーエンスGTが週末2ヒートを完全制圧/TC2000第8戦
その仇討ちとばかりに、僚友ベルナルド・ラヴァー(ホンダ・シビックTC2000)が最終コーナーで大逆転を決め、今季もTCRサウスアメリカとの“二足の草鞋(わらじ)”を履く男が、最後の数十mで復活の勝利をモノにした。
一方のレース2では週末の厳しいスタートから這い上がった最年長王者リオネル・ペーニャ(ルノー・フルーエンスGT)がラヴァーを逆転。2ヒート連続の“マルチ・マニュファクチャラー”による表彰台で今季6回目の頂点に立っている。
シリーズの源流たるTC2000が1989年に初訪問して以来、1997年まで断続的にレースを開催してきたブエノスアイレス州ヌエベ・デ・フリオのトラックは、その後も歴史のなかで幾度もの変貌を遂げた最新鋭かつ“南米で最も技術的なツーリングカー”の選手権を迎え入れることとなった。
そのギュレルモ“ヨーヨー”マルドナドの正式名を持つトラックでは、金曜最初のFPセッションでオクタノス・コンペティションのルイス・ホセ・ディ・パルマ(フィアット・クロノスTC2000)が最速タイムを刻んだが、この時点で平均179.984km/h、最高速度262km/hに達し、サーキットレコードをあっさりと更新してみせた。
その晩に開催された公式プレゼンテーションでは、シリーズ運営組織タンゴ・モータースポーツの代表を務めるアレハンドロ・レヴィが「我々に扉を開き、こうしてTC2000の復活を可能にしてくれたサーキットに感謝する」と挨拶した。
「この街には多くの歴史があり、国内最高のドライバーがここでレースをするのに相応しい土地だ。ホテルは満室となり、通りには短期間で人が溢れた。市にこの贈り物を贈ることができてうれしく思っている」
さらに同席したルノー陣営アクシオン・エナジー・スポーツTC2000の現王者ペーニャも「今週末はすべてのドライバーにとって“7月9日”のようなサーキットでレースをするのは挑戦だ」と語り、同国サンタフェ州出身のアルドゥソは「僕らのモータースポーツがどんなものか、そこで自分たちの姿を表現したいと思っている。今週末は素晴らしいショーができることを願っている」と続けた。
そんなアルドゥソの言葉どおり、明けた土曜午前9時30分からのFP2では王者ペーニャとファクンド・マルケスのルノー・フルーエンスGTを退け、83号車シビックが最速タイムを記録。続くFP3でも僚友ラヴァーの10号車がトップタイムを刻むなど、予選に向けYPFホンダRVレーシングがセッションを制圧する勢いを見せた。
■レース2では逆転に成功したペーニャが今季6勝目
迎えた午後2時15分からの予選でも、ペーニャのフルーエンスGTと僚友ラヴァーのシビックを抑え切ったアルドゥソが最速タイムを記録し、1分31秒248が新たなレコードタイムとして樹立されることに。4番手にはルノーのマルケス、5番手にTOYOTA GAZOO Racingアルゼンティーナ(TGRA)のエースを務めるジュリアン・サンテロ(トヨタ・カローラTC2000)のトップ5となった。
日曜午前11時30分から始まった25分+1周の最初の決勝は、ポール発進を決めた83号車のシビックが順当にリードを維持。そのまま波乱を寄せ付けず、ファイナルラップに入っていく。しかしここでアルドゥソを突如の異変が襲い、シビックの右フロントタイヤがパンクしたことで優勝の可能性を奪われることに。
チェッカーまで残り3分。ここで2番手につけていたTGR陣営の29号車ファクンド・アルドリゲッティ(トヨタ・カローラTC2000)に勝機が巡ってきたが、最後のコントロールライン通過まで残り数mとなった最終コーナーで、シビックの10号車がインサイドから急接近。
メインストレートに入る手前からの駆け引きで優位を築いたラヴァーが、最後のトラクション勝負でカローラを逆転し、ひさびさのトップチェッカー。TCRシリーズではトヨタ製のカローラGRS TCRに乗る男が、ここでは僚友の無念を晴らす「勝利の位置」に返り咲いた。
3位に続いたペーニャを含め、これでホンダ、トヨタ、ルノーと“マルチブランド”による表彰台が実現すると、正午過ぎに始まったレース2でも各モデルが入り乱れる展開に。
首位発進のホンダ・シビック10号車は、スタートから中盤まで背後の重圧に耐え続けたが、残り13分でルノー・フルーエンスGTの1号車が満を持して“プッシュ・トゥ・パス”を発動。メインストレートでの逆転に成功し、じわじわとリードを拡大。そのままペーニャが今季6勝目、シリーズ通算32勝目を飾ることに。
最後はトヨタのサンテロにも前に出られ、ホンダのラヴァーは3位でフィニッシュ。ふたたび異ブランドのポディウムが完成するとともに、4位にフィアットのディ・パルマも続き、都合4車種が上位を占める結果となった。
続くTC2000の第10戦は、シリーズを代表する祭典『ブエノスアイレス200km』となるが、同10月6~8日の週末には隣国ブラジルを代表する最高峰“ティントップ”シリーズのSCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”も合流。南米相互交流の新プロジェクトとして、ブエノスアイレスのオスカー・ファン・ガルベス・オートドロームにて両選手権のシリーズ戦が開催される。
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