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ブランド最高傑作の1台 アストン マーティンDB9(2) 雄叫びへ転調するV12 現代でも薄れない運転体験の充足度

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ブランド最高傑作の1台 アストン マーティンDB9(2) 雄叫びへ転調するV12 現代でも薄れない運転体験の充足度

製造品質は現代のアストンに劣らない

アストン マーティンDB9の、流麗なボディへ埋め込まれたドアハンドルを引くと、斜め上方12度へ巨大なスワンウィング・ドアが開く。ドア底辺を縁石へ当てないための配慮だが、優雅な印象を一層強く与えもする。

【画像】ブランド最高傑作の1台 アストン マーティンDB9 DB4と5 DB11に最新の12も 全152枚

インテリアは、落ち着いたブラック・レザー。ガラスエリアより上はグレーで、ステアリングホイールにはレッドがあしらわれ、単調さを打ち消している。

造形や装備は時間の経過を感じさせるものの、製造品質は現代のアストン マーティンに劣らない。アルミ削り出しのメーターパネルなど、素材は概ね上質。スピードメーターは、タコメーターと逆回転で針が回る。

スタートボタンはガラス製。この粋な処理は、インテリアデザイナーのサラ・メイナード氏によるものだ。長押しするとスターターモーターが唸り、5935ccのV12エンジンが始動。直後のひと吠えは穏やかだが、重低音で存在感は半端ない。

実際の寸法より小さく感じられるボディ

プラスチック製なのが惜しいが、センターコンソールのDボタンを押すと、滑らかに進み出す。低く構えた運転姿勢は理想的で、視界は良好。最新のDB12はガラス面積が狭く、ボディの大きさを実感してしまうが、DB9では実際の寸法より小さく感じられる。

乗り心地は、アスファルトの剥がれた穴を避けても、正直硬め。補修跡を通過する度にトントンと揺れ、ノイズも届く。それでも、高いシャシー剛性がサスペンションの能力を引き出し、不快なほどではない。

20年以上前に組まれた内装も、時折カタカタと鳴く。上質な印象を乱すように。国立公園を巡る道幅は広くなく、路肩にはゴツゴツした岩が露出する。

勇ましい雄叫びへ転調していくV12

V12エンジンは、極めて活発。右足の角度を深めるほど、前方で放たれる燃焼音が増大し、多気筒ユニットらしい巨大なトルクの波に乗れる。ZF社製の6速ATは、洗練された印象を保つべく、早めにシフトアップしたがるが。

ステアリングホイール裏のパドルを弾き、シフトダウンすれば、回転上昇が生む音響へ浸れる。3速と4速を活用し、大地の起伏へ沿うように伸びる道を疾走すれば、まさに悦楽。豊満な運転体験へ満たされる。

速度域が高まれば、硬めの乗り心地は解消。路面のツギハギは均され、スポーツカーらしい姿勢制御が顕になる。90度曲がるようなきついカーブでも、バランスは白眉。ステアリングはやや重すぎるかもしれないが、正確で、グリップ力が高く扱いやすい。

開けた直線区間でシフトダウンし、アクセルペダルを踏み込む。2速の2000rpmから引っ張ると、100rpm増す毎に速度上昇は鋭くなる。4000rpmを過ぎた辺りで排気音がキャビンを満たし、図太い唸りから勇ましい雄叫びへ転調していく。

ブランドの一時代を構成した最高傑作の1台

最新のDB12より、DB9は350馬力ほど劣るかもしれない。だが公道では、シンフォニックさとダイナミックさで陶酔させてくれる。

素晴らしいエンジンを積んだアストン マーティンを、屈指の優雅さを称えたこのグランドツアラーを、近年は2万ポンド(約420万円)前後で入手できる。同時期のフェラーリ612 スカリエッティより、7割近く安いらしい。

歴代最高傑作の1台と呼べる、DB9。ブランドの一時代を構成した、HVプラットフォームを真っ先に採用したという点で、歴史的な重要性も高い。運転体験の充足度は、現代にもまったく薄れていない。

新しいアストン マーティンの開発は、相当な難題なはず。このDB9を、確実に超える必要があるのだから。

番外編:タングステン・シルバーのDB9

今回の車両のオーナーは、アダム・オズボーン氏。認定中古車だったDB9を、2024年に約4万ポンドで購入したという。走行距離は4万3500kmだった。

20年ほど前に、BBCのクルマ番組、トップギアで目にして以来、欲しいと考えて来たと振り返る。直近の1年間で走った距離は、5000kmほど。定期点検以外の出費は、ドアのゴムシールと補機ベルトの交換だけだという。

自動車保険は、クラシックカー扱いで月額90ポンド(約1万9000円)とお高め。自動車税は月額66ポンド(約1万4000円)と、こちらも安くはない。燃費は平均6.7km/Lとのことだが、夢のクルマに乗れるという充足感は何にも勝るはず。

協力:アストン マーティン、スコット・フィッシャー氏
執筆:アントニー・イングラム(Antony Ingram)

アストン マーティンDB9(2004~2012年/英国仕様)のスペック

英国価格:10万3000ポンド(新車時)/6万ポンド(約1260万円)以下(現在)
生産数:約1万6500台
全長:4697mm
全幅:2017mm
全高:1318mm
最高速度:299km/h
0-97km/h加速:5.4秒
燃費:4.3km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1760kg
パワートレイン:V型12気筒5935cc 自然吸気 DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:456ps/6000rpm
最大トルク:57.9kg-m/5000rpm
ギアボックス:6速オートマティック/後輪駆動

文:AUTOCAR JAPAN AUTOCAR JAPAN
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