ロールス初のEVはどんな「ロールス」に?
ロールス・ロイスが2023年末に発売予定の新型EV「スペクター」は、2016年に販売終了したファントム・クーペの精神的後継車に位置づけられている。
【画像】次期ロールス・ロイス・スペクター【テスト車両をレイス/ドーンと写真で比較】 全118枚
同社は約2年にわたる車両テストプログラムを開始しており、新型車のパラメーターが設定されつつある。AUTOCARはテスト車両に同乗し、その影を掴もうと試みた。
その結果、ラインナップにおけるスペクターの位置づけは、単に「電動ロールス・ロイス」というだけでなく、かなり明確になってきた。現行の2ドアモデルであるレイスとドーンは、後継車種がないことが決定している。この2台の受注は終了し、2023年初頭に生産を終える予定だ。
その隙間を埋めるのが、新型スペクターだ。全長5.6mのファントム・クーペに準じる、2ドアEVである。
ロールス・ロイスのトルステン・ミュラー=エトヴェシュCEOは、スペクターが単にEVとして以上の役割を持つと述べている。また、既存モデルを単にEV化することは、ブランドの付加価値にはプラスにならないため、真剣に検討されたことはないという。「まず、ロールス・ロイスであること。その次にEVなのです」
新開発のモジュ―ル式アルミニウム・スペースフレーム「アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー」の影響もあり、ファントム、ゴースト、カリナンとはまったく異なる製品となる。車軸の間には、ロールス・ロイスと親会社のBMWが共同開発した700kgのバッテリーパック(オーストラリアとモロッコの採掘源から得られたコバルトとリチウムを使用)が搭載されている。バッテリー重量以外の詳細は、まだほとんど確認されていない。
しかし、ロールス・ロイスのエンジニアリング・ディレクター、ミヒャエル・アヨウビは、スペクターの技術的進展について、多くの洞察を示してくれた。例えば、バッテリーはパッケージ全体の中で重要な役割を担っている。バッテリーの下(アンダーボディ)は完全にフラットで、空力効率を高めるために滑らかな形状となっている。また、バッテリーの搭載により、前後重量配分を良くして乗り心地とハンドリングを改善したほか、低重心化も実現。さらに防音効果も期待でき、防音材の量をファントムの120kgより減らす事ができるという。
ロールス・ロイスのクーペとしては1926年のロワイヤル以降最大径となる23インチホイールの装着と、ツインモーターによる四輪駆動方式も決定している。
後輪操舵やアクティブ・アンチロール・システムなど、他のモデルでおなじみのシャシー技術も継承。スタイリングでは、ファントム・クーペの分割型ヘッドライトが復活する。
EV時代におけるクルマづくり
アヨウビは、スウェーデン・アルジェプローグで行われた初期テストは、まずプロトタイプが期待通りに機能することを確認し、次に来るテストのためのパラメーターを設定することだったと語る。「このクルマは歩くことを覚えたばかりです」
この初期テストでは、窓やドア、冷暖房、ゴムシールなどの基本部品が過酷な環境下で正常に機能するかどうかを確認する作業が行われた。しかし、アヨウビは、「静寂こそ贅沢。このような条件下で性能を発揮するだけでなく、静かに機能する必要があります」と話した。
また、開発中の「電気バックボーン」によってコネクティビティも大幅に向上しているという。通常の高級車が長さ約2000mのケーブルを使用しているのに対し、スペクターには合計7000mのケーブルが使われているという。電気システムの強化により、最新のコネクテッド技術に対応する狙いだ。
「ハードウェアとソフトウェアのインテリジェンスが高度に統合されているのです」とアヨウビは言う。「システムはインテリジェントです。マルチチャンネル、マルチコントロール・システム、そして、これらの競合システムの動作を調和させるアルゴリズムを開発しました」
「このクルマには、通常の25倍もの『アルゴリズム』が搭載されています。1000の高度な機能と2万5000のサブ機能、14万1200の送受信機能があります。それぞれの許容誤差は25ミリ秒で、失敗は許されません」
これは、「ロールス・ロイス3.0」と呼ばれる、来るべきEV時代における同社の自動車開発アプローチだ。
アルジェプローグでの開発作業はまもなく終了し、続いてフランス・ミラマスでの高速走行試験、ドバイや南ヨーロッパでの高温試験、ミュンヘンや英国本社での試験に移行する予定だ。年末には再びアルジェプローグでテストを行い、「プロトタイプがどれだけ成長したかを確認する」とのこと。
30台以上のプロトタイプが製造され、合計で約250万kmに及ぶテスト走行が行われる予定だ。
ミュラー・エトヴェシュCEOによると、ロールス・ロイスはすでにスペクターの注文を受け付けているという。
どこまで「静寂」を求めるか
新型スペクターの開発でまだ議論が続いている要素の1つは、歩行者に存在を知らせる「音」をどのように出すか、そして車内をどれだけ静かにするかということだ。
ロールス・ロイスといえば、静かで落ち着きのある走りが特徴だが、エンジンも排気系もないスペクターでは、それを次のステージへ進化させるはずだ。しかし、室内の「完全な静寂」は実現可能ではあるが、望ましいものではなかったという。
アヨウビは次のように語っている。
「騒音に関わりがあるのは、排気音、エンジン音、風切り音、そしてタイヤ音です。このうち、最初の2つは排除できます。お客様は、本当の意味での静寂を得ることもできる。しかし、人は完全な無音状態ではいつまでも耐えられないという問題があります。最低限のノイズが必要なのです」
残る風切り音については、可能な限り低減するための空力開発、タイヤ音についてはタイヤメーカーとの協議が進められている。
アヨウビは、ロールス・ロイスの要求によって「タイヤサプライヤーが我々と仕事をするのを嫌がるようになった」と冗談を飛ばした。
「要求が厳しいんですよ。タイヤは路面との唯一の接点です。燃費、防音、安全、ブレーキ、動力性能など、タイヤには非常に多くのことが要求されます。そこへロールス・ロイスがやってきて、『まだ完成度が足りない』と言うんですから」
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
併走するクルマへの目潰しでしかないのにナゼやる? 斜め後ろに「白色ライト」を点灯して走行するトラックは法令違反だった!!
アストンマーティン代表、ストロールへの裁定は厳しいと語る「しっかりと理解されないまま判定が下された」/F1第5戦
乗って納得の「ロープライス実力派」 ホンダWR-Vは背伸びしない、等身大のパートナー
やってはいけない「マフラー交換」5例。「爆音」「落下」「黒焦げ」など本当にあったダメなカスタムをお教えします
マツダ「新型“最上級”ステーションワゴン」!? まさかの「復活」に期待の声も! 次期「MAZDA6“ワゴン”」予想CGが「カッコイイ」と反響集まる
みんなのコメント
BMWのデザイン影響が皆無
安心された富裕層も多いでしょうね
瞬時に最大トルクを発生する余裕のある走りや大きな振動を発生させにくい特性など考えれば
ある意味ロールスロイス程モーター駆動に適したブランドは無いかもしれない。
大容量のバッテリーを積むために車体が大きくなろうが重くなろうがあまりそれも関係ないだろうし。