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【佐藤琢磨インタビュー】現役を続けることで若手に伝えたい「プロとしての生き方」

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【佐藤琢磨インタビュー】現役を続けることで若手に伝えたい「プロとしての生き方」

 インディ500への挑戦を続けながら、2019年からはホンダレーシングスクール鈴鹿(HRS)のプリンシパルに就任し、精力的に若手レーシングドライバーの育成に取り組む佐藤琢磨。そんな琢磨が、フォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ(FRECA)に参戦するホンダの育成ドライバー加藤大翔をサポートするべく10月初頭にドイツ・ホッケンハイムに現れた。そこで琢磨に、海外レースを戦う若手ドライバーのサポート状況や自身の活動について聞いた。

──自身も現役ドライバーとして活動しつつ、日本国内外問わず若手育成ドライバーをサポートしていますが、そのうち海外レースのサポートはどれくらいの割合ですか?

土橋皇太が2025年度ホンダレーシングスクール鈴鹿のスカラシップを獲得

「各シリーズで一応50パーセントを目指しています。国内レースに参戦中の選手もいますので、全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権(SFライツ)、FIA-F4選手権に加えて、スーパーフォーミュラとスーパーGTも含まれています。さらにHRSでのサポート、FFSA主催のフランスF4やFRECAなど、育成ドライバーの研鑽の場は多岐に渡りますが、可能な限り現地で平等にサポートできるように心掛けています」

「また、自分のインディ500の活動がある関係で、その期間はアメリカ滞在となります。去年のルーティンをみると6月から欧州を軸にしつつ、単発で日本に帰国してスクールを見ながらシーズンが進んでいくという感じでした」

──HRSだけでもかなりの人数の若手ドライバーがF1を目指しているとのことですが、そのなかで光る原石を見付けるのは至難の業ですか?

「難しいですよね。期待値を数値化することはできません。そのため、現状でそのドライバーのパフォーマンスや、それまで得てきた経験値というのを加味しながら、取り組んでいます。レースに対して、あるいはそれに対する姿勢を見て『このドライバーは伸びるだろうな』というドライバーは支援して行きたいと思っています。とはいえ、ラップタイムの速さというところは絶対値なので、そこで一番を取りつつも、そのドライバーの良さを伸ばしていくための環境作りに取り組んでいます」

「特にヨーロッパは、フォーミュラレースへの参戦開始年齢の若年化の波が強いです。そのため、日本から1年でも早く飛び出し、実際に海外のレースを経験して海外でやっていく、という取り組みでは岩佐歩夢が最初の成功例で、それに加藤や佐藤凛太郎が続いています」

「加藤はフランスF4でシリーズチャンピオンを獲得し、FRECAへステップアップしたことは自然な流れでした。今年はFRECAのルーキーとしてはとても頑張っています。ただ目を見張るようなリザルトというところにはまだ手が届いておらず苦労していますが、それも彼自身の成長という意味では凄く大事な経験になってきますので、その辺を僕はすごく気をつけて見ています」

「本人がただ速く走るだけではなく、なぜうまくいかないのかを紐解いて分析できる力が必要で、レースは他のスポーツのように日々練習できる訳ではありません。今はシミュレーターがあるとはいえ、限られた時間のなかで前へ進むためには、ただ走るだけではなく、クルマへの知識だったり、エンジニアとどうコミュニケーションを取り、メカニックを含めてどうチームを動かしていくのかという力も必要とされます。ドライバーは強い求心力を兼ね備えつつ、あるいは身につけながら成長していってほしい。それが自分たちが掲げている育成のテーマです」

「加藤は今、そのど真ん中で頑張っている最中です。彼自身が足りないところはまだまだあるのですが、それに早く気づいてひとつひとつ克服してほしいと思いますし、他のホンダ育成の若手ドライバーもそれぞれが、日々葛藤しながら頑張っている途中です」

──加藤選手は今季のFRECAにおいて、エンジニアやメカニックとマシンを作り上げていく上で、彼らと密接になるコミュニュケーション能力の大切さを実感し、不慣れな点に直面した際に琢磨さんのサポートのありがたさを痛感しているようですね。

「僕自身がジュニアフォーミュラで苦労しながらF1まで行ったのと同じように、彼にも数多くの経験をしてほしいし、時には痛みも必要だと思っています。ただ無意味に同じ事を繰り返して苦労する必要はないと思っています。そこで助言・サポートというかたちで『こういうやり方もあるよ』という風にヒントを与えています。ただ僕が彼のすべてのレールを引くわけではなく、あくまで彼のやり方を尊重しつつ成長を見守っています」

「実は僕も彼のエンジニアとは直接すごく密に話していて、僕とエンジニアがやろうと思えばいろいろなことができてしまうのですが、あえて僕たちからは提案しません。エンジニアサイドには『こんなこと言ってくるかもよ』と話して準備だけはして貰って、あとは加藤本人に考えさせ、エンジニア達と自分自身でコミュケーションを取りながらマシンを作っていく。その過程を僕は側で見守りながら、必要に応じてサポートするということを今はしています」

「そういう経験は何度も経験していかないと突然にはできません。加藤はおそらく僕が帯同していなくても、ひとりで頑張ると思います。ただ同じ日本人で細いニュアンスは日本語で話せるし、僕がいることで安心感というものあるのではないかと思っています。だからそういう環境を大いに活用してのびのびやって貰いたいですね。この『のびのび』というのは、僕がいることによるプレッシャーを感じつつもパフォーマンスに繋げて貰いたい、という意味を込めています」

「モータースポーツにおいて、チーム内のドライバーが毎年どんどん変わっていくのが常です。そんな環境下でドライバーにもしも何か困りごとや不利があった際、チームは最終的にチームの利益を考えるのが常です。だから、そういう時にはチームの立場も理解できますが、僕はドライバーサイドに立ち、時にはチームと戦わなきゃいけないので、そういう意味で現場に足を運ぶ事は大事ですね」

「今はリモートでほとんどのことができます。ただサポートするだけならそれでも良いのですが、もしも何かあった時には実際に現場にいないと実質的なサポートができません。去年も実際に(フランスF4の)シーズンの半分に来てみてそう思いましたし、特にチャンピオンシップに勝つにも、その裏では凄いバトルにもなりました。レーススチュワード(審査委員)と話す際にはありとあらゆる素材を持って行き、実際にペナルティを覆したりと……。このようなことは特にヨーロッパではなかなかやって貰えないようなところですが、僕が実際に経験してきたことでもあるので、そこはサポートをできると思っています」

──加藤選手は来季のことはどうなるか分かりませんと話しましたが、今後の目標とされていることは?

「現状(取材はFRECAホッケンハイム戦)の加藤の状況をお話すると、既に旧型F3マシンのテストを先週に始めていて、ホッケンハイム戦後にはスペインのヘレスに飛んで引き続きテストをします。まだFRECAのシーズンは終了していませんが、やはり次のステップを見据えてFRECAドライバーたちは既に活動を始めていますので、加藤もそういう意味ではできる範囲で次へ向けてやっていければ良いなと思っています」

──琢磨さん自身のレース活動についてお伺いします。今までの経験を活かしてHRSでの育成活動をはじめ日本とヨーロッパを飛び回って多忙を極めています。若手育成に携わるアスリートの中にはそのポジションに満足して、選手活動を終えて教育者としての仕事に集中する道を選ばれる方も多いですが、現在もレーシングドライバーとして精力的に挑戦される意味と意義はなんでしょうか。

「それはいくつかあり、ひとつは自分への挑戦みたいなところがあります。僕も夢を持っていますから、それに向かって可能な限り挑戦したい。自分の今までの人生のなかで、できるところまでやりたいいうのがひとつと、もうひとつは若手へのメッセージと言いましょうか。ただ、若手の貴重なチャンスまで奪いたくないので、彼らが乗れるようなシートに自分が無理意地して収まることは絶対にありません。ただ、僕の場合はホンダのドライバーとして誇りを持って活動していますが、実は僕のインディ挑戦はホンダ側から用意されたプログラムではありません」

「僕は完全にインディビジュアル(個人)で活動をしており、毎年ホンダ本社、そしてホンダ・レーシング(HRC)と交渉する立場です。僕のインディ500の活動を応援してくださるスポンサーさんを僕自身で見つけた上で、ここまで揃ってやっとチームから信頼を持って挑戦の場へ呼んで頂けるのであり、『こういうパッケージをご用意できますので、ホンダさんでインディに挑戦させて頂けますか』という交渉を毎年しています。もし若手がそこに本当に収まれるのであれば、ぜひそうしてあげたい。でも、それが困難なのであれば、僕自身が走る姿を見せていきたい。そう考えて挑戦を続けています」

「要するに僕は『こういう状況でもレースは続けられる』というひとつの例です。僕はスクールでさまざまなことを教えていますけれど、それは走りについてだけではなく、どうやってプロとして生きていくのか、みたいな部分も含んでいます。僕が走ることでそういった部分まで若手ドライバーたちに感じ取ってもらえればいいと思っています」

「もちろん才能ある若い子たちがどんどん出てくる世界ですが、僕自身も彼らから刺激を受けながら『負けたら次はないぞ』となります。やはり挑戦する気持ちはいつまでも持ち続けたい。ただそうは言ってもスポット参戦から優勝を目指すということはすごく難しく、他のレースではおそらく相当厳しいと思います。まだインディ500に関しては、プラクティスの期間が長かったり、準備段階が十分に確保されている上に、自分も長年の経験があるので挑戦し続けることができています」

「応援してくださる方々への感謝の気持ちは本当に大きく、応援してくださる限りは、全力で戦い続けるつもりです」

[オートスポーツweb 2025年10月14日]

文:AUTOSPORT web
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みんなのコメント

2件
  • fan********
    アロンソもまだ頑張っているのだから期間限定でもいいのでF1復帰してみては?
  • dor********
    2000年から2008年にホンダが当初はフルワークスを念頭にF1へ参戦した第3期の主役ですからね琢磨さん、スーパーアグリも含め日本企業が欧州のモータースポーツへ鳴り物入りで参戦しての消え去るまで 現在のホンダ第4・5期だか第5期だかしか知らない人達は調べてほしい
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