みなさん、こんにちは!筆者の住むドイツでは、先日の選挙で「アンゲラ・メルケル首相の後任は誰なのか?」「気候変動への対策はどのように行うべきか?」が焦点となり、選挙が終わった今は次期連立政権について話し合いの最中です。
2人の息子と手に入れた「デイムラー・ダブルシックス」オーナー、小池 嬉久夫さんへインタビュー
連立政権ともなると調整が難航するので、新政権が発足するまでかなりの時間がかかってしまう点は、日本の選挙との大きな違いといえるでしょう。
また、新型コロナによる接触制限は続いているものの、州によっては感染者数が非常に低いレベルで収まっているところもあり、ドイツ国内やEU内の移動については少しずつ緩和されてきています。
接触制限の緩和を受けて、今回から2回にわたり、とあるきっかけで知り合うことができた方のオーナーインタビューと、その方に紹介いただいたドイツ現地のクラシックカークラブの取材記事を掲載します。
まず第1回目は、ザクセン・アーンハルト州タンガーミュンデにお住まいである、ミヒャエル・スチューデントさんのオーナーインタビューをお届けします。
■ドイツ人の画家の愛車は漆黒のアルファ ロメオ スパイダー
スチューデントさんとは、ドイツでの仕事を通じて知り合いました。ふとした会話がきっかけで、彼が古いアルファ ロメオに乗っているということを知り、ぜひ取材をしたいと伝えたところ、こころよく引き受けてくださいました。
1954年生まれのスチューデントさんのご職業は、フリーランスのアーティスト、画家です。ドイツの国内外で数多くの展示を行ってきたほか、展覧会の取りまとめや、後進の教育などにも熱心に取り組んでいます。
スチューデントさんの愛車は、1987年製アルファ ロメオ スパイダー1.6です。ドイツにお生まれなのにイタリア車、そしてボディカラーは定番の赤ではなく黒!ちなみに普段の足クルマとして、メルセデス・ベンツの初代Cクラス(W202)も所有されています。
取材当日は残念ながら快晴ではなく、厚い雲に覆われた天気だったのですが、スチューデントさんはわざわざ幌を開けて「川沿いまで写真を撮りに行きましょう。ほら、隣に乗ってください!」と勧めてくださるような、非常に親切な方です。
彼のスパイダーはとても美しい状態を保っていて、アルファ ロメオ製ツインカム独特の排気音も健在。助手席に乗っている間、筆者は常に頬が緩みっぱなしでした。タンガーミュンデを彼の運転で一周したのち、エルベ川沿いで写真撮影を行ったのですが、とにかくスチューデントさんとスパイダー、そして街に残る市壁がどこを切っても絵になる!
■早速スチューデントさんにインタビュー
ここからは、スチューデントさんのご自宅で行ったインタビューをお届けします。
――愛車のアルファ ロメオ スパイダーについて教えてください
私のスパイダーは1987年製で、2017年に購入しました。自宅にガレージがあるので、修理はできるだけ自分で行うようにしています。いちいちお店に出すと、たくさんのお金がかかってしまいますしね。
このスパイダーは、購入時点でとても状態がよかったのです。ただし、エンジンに関しては、多くの部品を新品に取り換えました。特にシリンダーやピストンまわりのパッキンはほとんど交換していますね。おかげで現在はとても快調です。
――なぜこのクルマを選んだのですか?
アルファ ロメオはとても古くからあるイタリアのメーカーで、伝説的なブランドです。そうした歴史そのものを好ましく思っています。それからこのスパイダーに関して言えばもちろん「カブリオレである」ということも選んだ理由ですね。
――スパイダーのどんなところが気に入っていますか?
すべてですね!デザイン、色、運転する感覚、エンジンの音……すべてが気に入っています。
――どんなときに運転しますか?
天気のいいときにだけ運転するようにしています。季節でいえば春・夏・秋、つまり冬以外ですね。このクルマは通常のHナンバーなので走る時期の制限はありませんが、冬は乗らないようにしています(筆者注・ドイツにはHナンバーと季節ナンバーを組み合わせた「H・シーズンナンバー」も存在する)。
――スパイダーに乗っていてよかったと思うことはなんですか?
うーん、なんでしょう。幌をオープンにして走っていると、周囲の人々の視線が集まるので、そんな時は素敵な気分になりますね。
――クラシックカーのイベントには参加しますか?
はい。近所で行われるイベントには、スパイダーと一緒に参加することがあります。
――ガソリンエンジン車がEVへ移行しつつありますが、なにか思うところはありますか?
非常に難しい問題です。EV化についてはドイツでも進めていますが、充電ステーションなどのインフラ整備の面で問題は数多く残っています。個人的には、EVだけでなく水素燃料車にも将来性を感じていますね。
――EUでガソリンエンジン車が禁止になったら、このスパイダーもEV化しますか?
現時点で既に、クラシックカーが通行を許可されている、ということが重要だと思っているので、こうしたクラシックカーが通行禁止になる日は来ないのではないか、と個人的には考えています。
――クラシックカーの魅力とは?
ノスタルジーでしょうか。現代では得難いものに心惹かれるのだと思います。スパイダーはピニンファリーナによるデザインで、ボディサイドにはバッジも付いていますが、それも含めて芸術作品だと感じます。1960年代のクルマのデザインは、今見てもとても美しく、先進的ですよね。
――日本車にはどんなイメージを持っていますか?
パーフェクト!ドイツ車とは異なり、車両価格にたくさんのオプション装備が含まれた状態で売られていて、あとから何かを付け足す必要がない点は素晴らしいです。それによく走りますし、故障もしません。特にトヨタとマツダの品質は高いと思います。
――好きな日本車はありますか?
私は古いクルマが好きなので、トヨタやホンダのスポーツカー…トヨタ・スポーツ800や2000GT、ホンダ・S600やS800が好みですね。
――日本のクルマ好きにメッセージをお願いします
今回、私にインタビューの機会を与えてくれたことについて感謝しています。日本にも自動車愛好家が大勢いて、クラブなどの活動をしているのはとてもよいことです。今回がきっかけで、なにか日本の自動車クラブとの交流ができるようになれば嬉しいですね。日本の皆さんには、コロナのパンデミックなど、いろいろと困難な時代ではありますが、常にアクティブであれ!とお伝えしたいです。
■インタビューを終えて
終始非常に気さくに、にこやかにインタビューに応じてくれたスチューデントさん。ドイツ人の男性の中には気難しく愛想があまりない方もいるのですが、スチューデントさんはその真逆で、常に笑顔を絶やさず周囲への気づかいも欠かさない、まさに紳士と呼べる方です。
個人的に、なぜアルファ ロメオに乗っているのだろう?と思っていたのですが、話を伺ううちに、やはり「美に対する感覚」が非常に鋭い方なのだなと思いました。また、EV化やクラシックカーの未来についても、フラットに、そして冷静に捉えているのが印象的でした。スチューデントさん、お忙しい中貴重な時間を割いていただき、本当にありがとうございました!
このインタビューのあと、天気がさらに悪くなってきてしまったので、スチューデントさんのメルセデス・ベンツ・Cクラスに乗り換え、件のクラシックカークラブに案内してもらいました。こちらの紹介はまた次回をお楽しみに!
●ミヒャエル・スチューデントさんのオフィシャルウェブサイト
http://www.atelier-student.de/
[ライター・カメラ/守屋健]
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みんなのコメント
91〜94年式のスパイダーヴェローチェが欲しくて試乗した事があるが、夢と現実、スタイルと性能は必ずしも一致しないことを当時実感。まあ、試乗車がATでインジェクション仕様で車重がかなり重くなっていたというのもあるが、アクセルを踏んでも踏んでもどよーんと吹け上がり、ダッシュボードは目地段差を越える時さえ平行移動、リアのリジッドアクセルは段差を越えるとケツが右へ左へとユッサユッサ・・・
まあ、それをスタイルと雰囲気がカバーという感じだったなあ。(日本、アメリカ仕様はひどかった)
でもこのオーナーのやつはキャブ仕様になっているし、古き佳きアルファが残っているんだろうなあ。