シリーズ史上初の4WD&後輪操舵を備えた新世代SL
メルセデスAMGによる自社開発モデルとなったラグジュアリーオープンの7代目「SLクラス」に、V8ツインターボエンジンを搭載した「SL63 4MATIC+」が追加設定されました。SLとして初の4WDとなる新型モデル、最大の魅力はトータルパッケージングの秀逸さにあります。
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走りを意識しつつも実用性に配慮した欲張りなオープンカー
メルセデスのアイコニックなスポーツモデルであるSLはV8モデルじゃなきゃつまらない、などと言うつもりなど毛頭ない。不朽の名作と言うべき「300SL」は6気筒だったし、その後のSL史においても販売台数的なメインアクトはあくまでも6シリンダーだった(直6からV6への変遷こそあったが)。V12はもちろんV8だって決して本筋ではなかった。
現行型のSL、つまり7代目のR232型は当初、「SL43」として登場し、そこには4気筒エンジンが積まれていた。このSLからメルセデス・ベンツではなくメルセデスAMGのブランド名がつき、その直4ターボエンジンもAMGの誇る4発世界最高の名機ではあったし、パフォーマンスそのものは全く文句のないレベルに達していた。今どきの高性能4気筒エンジンはというと、ちょっと前のマルチシリンダー顔負けのスペックなのだ。
とはいえ……。カジュアルなエンジンフィールと、軽い鼻先のもたらす機敏な印象といった、ライトウェイトスポーツカー的な印象にSLらしさを見出すことを筆者はできないでいた。とってもいいクルマなのに、SLとして「そそられない」。個人的な感想だ。
早く8気筒で試させてくれ! ようやくその日が訪れる。SLとして初めての四駆、SL63 4マチック+である。
そもそもR232はソフトトップへ回帰し、+2とするなど、ここ数世代のSLとはコンセプトをガラリと変えてきた。AMG専用モデルとすることで高性能なGTスポーツカーイメージも強めた。特徴的なポイントを羅列すると目指す方向性がよくわからない、というか支離滅裂な感じもするのだけれど、クルーザーよりもスポーツを意識したスタイリングをみれば、より走りを意識しつつも実用性に配慮した欲張りなオープンカーであることがわかるだろう。
リアルにバーチャルを体験しているようなパフォーマンスフィール
600psに迫るハイスペックなM177 V8ツインターボエンジンと9MCTの織りなすパフォーマンスは一体どんなものだったか。ひと言でいうとそれは、「世界一級のオープンスポーツであり、グランドツーリングカーであった」、だ。お値段3000万円級の高級車としてじつにメルセデスらしい完成度に達していると思う。
最大の魅力はトータルパッケージの秀逸さである。車体とシャシー、パワートレインを電子ネットワークが隙なく埋め尽くして出来上がったクルマとでも言おうか。ある意味、ドライバーという唯一の不確定要素を包み込むためにできた、自動車サイボーグ(そもそも機械であるクルマをそう呼ぶのもどうかと思うけれど!)である。
0-100km/h加速3.6秒は伊達じゃない。オープンの状態で体勢を整え、右足を潔く踏み込めば、その体感加速といえば数字以上のもの。迫力のV8サウンドと相まってエンジンの力に、マルチシリンダーの恩恵に存分、浸ることができる。
それでいて加速中の姿勢が凄まじく安定している。これがメルセデスらしさだと思う。スリリングではない、というと面白みに欠けると思われるかもしれない。たしかにそういう評価もあり得る。パーフェクトさにはつねに退屈さが備わるもの。それはそうなのだけれども、これほどの加速を安心して味わえるとなれば、リアルにバーチャルを体験しているようなもので、それはそれで新たなパフォーマンスフィールだと言っていい。
これまたSLとしては初めての採用となった後輪操舵の細やかな制御が効いているのだと思う。加速だけじゃない。コーナリング時の安定したアジャイル感であったり、クルージング時の力の抜けた直進性であったりは、ボディとシャシーの出来の良さに加えて、後輪操舵に代表される足まわりの制御が功を奏している。
SL43では懸案事項として取り上げた9速MCTだったが、この63では不快に思うことがさほどなかった。高出力な8気筒との組み合わせの方が手慣れている。
欲を言えば、インテリアの雰囲気にもう少し3000万円感が欲しい。最新のメルセデストレンドであることはわかるのだけれど、それがラグジュアリィに見えるかと問われると、ややクビをかしげざるを得ない。逆にいうと現代のメルセデスAMGではAクラスに至るまで同じ雰囲気でまとめられているがゆえの「副反応」かもしれないが。
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みんなのコメント
スーパーカーが買える価格でスーパーライトと言うモデルネームのもっさりSL。
Cクラスの内装なのに。
成金さんいらっしゃーいって感じでしょうか。