MotoGP 2023年シーズン後半戦の幕開けとなった第9戦イギリスGPのレースウイークでも、ヤマハは、ファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)は苦戦を強いられていた。クアルタラロのイギリスGPの苦戦と、日曜日の決勝レースに投入された新しい空力デバイスについて触れていく。
雨の中、フルウエットコンディションで行われた土曜日の予選Q1で、クアルタラロは12番手に終わった。グリッドとしては22番手。つまり、イギリスGPのスプリントレースと決勝レースを最後尾からスタートすることが決まったのだ。もちろん、クアルタラロにとって最高峰クラスでのワーストグリッドである。
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その後15時から行われた10周のスプリントレースも、雨は上がったもののウエットコンディションでのレースとなった。クアルタラロは最後尾からのスタートだったとはいえ、そこからひとつだけ順位を上げて21位でゴールした。
最後尾に沈んだ予選についてはチームとのコミュニケーションミスだったといい、「マシンを少し変更するためにピットインしたら、メカニックがいなかった。予選は手違いがあったんだ」ということだった。このため、クアルタラロは2回目のコースインでタイムを更新できなかったのだ。
では、スプリントレースは? スプリントレースでは、クアルタラロは優勝したアレックス・マルケス(グレシーニ・レーシングMotoGP)から約30秒差の21位だった。レース後、クアルタラロは「わからない。何かが欠けているのはわかっている」と打ち明けた。
「(ウエットコンディションのレースだった)アルゼンチンでは、(1周目の接触により大きく順位を落としたところから)7番手に追い上げた。だから、雨の中での走り方を知っている。でも、たった10周で30秒も遅れてゴールするなんて……。理解できないよ。レース中に本当にいろいろなことを変えようとしたけど、結局は同じだった」
「基本的に僕たちはリヤグリップがかなり欠けている。ストレートではスピニングがある。でも、それと同時に、コーナーに入るときにバイクを傾けられない。グリップがないからだ。そしてコーナリングスピードも上げられない。問題がたくさんあるんだ」
クアルタラロは、日曜日のレースに新しい空力デバイスを備えたマシンで挑んだ。フロントカウル両サイドのウイングの形状が変わり、サイドポッドも少し形を変えた。さらに下部にはダクトが追加されている。クアルタラロによれば、これだけではなく、すでにテストを行ったスイングアーム、今までとは異なるリヤのセッティングにしたという。
「基本的にテストしたことがないバイクだ。それで行ってみようと言ったんだ。このサーキットは切り返しが多いから、特にハンドリングでフェアリングがどう影響するのかを確認するためにね。(サーキットのレイアウトとして)十分な加速がないのでわからないけど、オーストリアではよさそうだ。22番手から7番手に浮上。素晴らしかったと思うよ」
クアルタラロは18周目にルカ・マリーニ(ムーニーVR46レーシング・チーム)との接触によってフロントカウルを失い、ピットインしてマシンを乗り換えて15位でゴールした。22番グリッドスタートから一時は7番手を走ったのだから、本人が言うように上々のレースだっただろう。ただ、だからといって今回仕様へ完全に移行するわけではないという。
「なぜならあまりにも変更が多すぎるし、あまりよさを感じなかったから。レースではオーバーテイクできたけど、それは、最後尾からかなりリスクを冒してスタートをしたからなんだ。フェアリングは維持するだろう。気になるところがあるからね。ハンドリングはそれほど悪くない。ダウンフォースがよくなれば、加速についてももう少しよくなるかもしれない。レッドブルリンクでは、スタンダードバイクに新しいフェアリングで走るだろうと思う」
「(現時点での改善点の)ナンバーワンは、エンジンだ」とクアルタラロは言う。2023年にトップスピードを改善したヤマハだが、しかしライバルたちに比べればまだ足りない。クアルタラロは、エンジンの改善が今、最も必要だと考えている。そもそもドゥカティのような大きな空力デバイスは、デスモセディチGPのようなエンジンパワーがあってこそ必要なダウンフォースを発生させるものだからだ。
「『スピードを見るとそんなに離れていないよ』と言う人もいる。でも今日、彼らはそういう風に(エンジンパワーで)僕をオーバーテイクしていった。差は10km/hくらいかもしれないけど、彼らが使っているエアロは大きく、僕たちが彼らと同じようなエアロを使おうと思ったら、(大きなダウンフォースによって)5km/hは遅くなる。そうなると15km/hの差になるよね。つまりエンジンが遅いんだ。それをどうにかしなくちゃいけない」
ご存知のとおり、シーズン中のエンジン開発は禁止されている。クアルタラロとヤマハが苦戦を脱するのはそう簡単ではなさそうだ。
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