ガチで走りも良くなっているワークスコンプリートカー3選
いわゆるメーカーが造るワークスコンプリートカーと聞くと、スポーツカーを想像しがちだ。しかし、じつはセダンや人気コンパクトカー、そしてミニバンでも、そのワークスチューンならではの走りっぷりを味わうことができるのだ。
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かつては、トヨタ・マークXに用意された、3.5L V6+6速MTをはじめ、専用ボディやサスにブレーキが奢られた、セダンのカタチをしたFRスポーツカーであるマークX GRMNがあった。さらに、ミニバンのトヨタ・ヴォクシーにもZS GR SPORTが存在。セダンでも、あるいはファミリーミニバンでも、ワークスコンプリートカーの特別な存在感、走りが味わえたのである。
ここでは、あえてスポーツカー系を除いた、現在手に入る普段使いもOKなワークスコンプリートカーを紹介したい。
日産ノートオーラNISMO
その筆頭は、日産ノートオーラNISMOである。ノート、ノートオーラは2021-2022日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞車であり、e-POWERのみの標準車の完成度も極めて高い。それをベースに、レースの世界でワークスチームとして活躍するNISMOが手掛けたワークスコンプリートカーが、オーラNISMOだ。
そのエクステリアのカッコ良さ、特別感、完成度はハンパではなく、エクステリアでは基準車のノートオーラに対してNISMOのフロントグリル、バンパー、サイドシルプロテクター、リヤスポイラー、リヤバンパーをはじめ、専用17インチタイヤ、ワイドリムの7Jホイール、フロント&リヤLEDフォグランプなどを装備。
前後オーバーハングも延長され、各所にレッドのアクセントカラーを施すとともに、前後バンパーのセンターにNISMOのエンブレムを配置している。ひと目でただのノートオーラとは違う存在感、迫力が際立つ仕上がりだ。ワークスならではのすごさは空力性能にも表れ、0.30のCd値はノートオーラ同様ながら、CL値(クルマを浮き上がらせる力)はノートオーラの0.11から0.03まで低減。結果、ゼロリフトボディによる操安性の向上、しっかりとした操縦性が期待できるというわけだ。
国産ワークスコンプリートカーの多くは、パワーユニットに手を入れないのが一般的で、オーラNISMOも同様。だが、ドライブモードを専用化。熟練テストドライバー×ドライブシュミレーターによって設定されたドライブモードのうち、エコモードは、な、なんといきなりノートオーラのスポーツモード!(それがもっとも穏やかなモードになる)そして、その上にNISMOモードを新設定しているのだ。
その上で、シャシーもNISMO専用のチューニングが施されていて、専用のタイヤ&ホイールはもちろん、ローダウンサス、モノチューブ式リヤショックアブソーバー、EPS(パワステ)、VDC/インテリジェントトレースコントロールなどにまで手が入っているのだ。
インテリアにしても、ブラックとレッドのレーシーな世界が演出され、専用のレッドセンターマーク入りアルカンタラ巻きステアリング、シート表皮(OPでレカロシートを用意)を設定。さらに、レッドのスターター&ドライブモードスイッチやシートベルトにレッド基調のメーター、そしてNISMOエンブレムなどが配されるレーシーな空間がこれでもかっ!! と演出されている。運転席に座った瞬間から、アドレナリンが沸き上がること間違いなしなのである。
その走りはスポーツテイスト満点。モーター駆動車ならではのトルク感とスムースさがあるのは当然として、エンジンを回したときのチューニングされた快音、前後バランスの良さ。そして接地性抜群な安定感の高さによる、痛快で気持ちのいいスポーツドライビングの世界を存分に堪能することができるのだ(意外に速く走れるのがエコモード)。
見た目はもちろん、走ってもノートオーラとは別物であり、NISMOファンの期待を裏切らない仕上がりと言っていいのだが、その価格はノートオーラG(FF)に対してわずか26万円高。これはもう超お買い得以外の何ものでもないと断言できる。
トヨタGRヤリス
次に紹介するのは、トヨタの定番コンパクトカー、ヤリスをベースにしたワークスコンプリートカー、GRヤリスだ。何しろ、ラリーのトップカテゴリーで活躍することを念頭にして開発されたという超本格派。そのラインアップは265万円の2WD RSから、4WDとなる396万円のRZ、そしてハイエンドモデルの456万円に達するRZ“ハイパフォーマンス”が揃う。
製造は専用ラインのGRファクトリーで行われ、ボディはほぼアルミとカーボン製。どうせなら手に入れたいRZ“ハイパフォーマンス”は272psのスペックを持ち、ミッションは6速i-MT。1.6L直3ターボエンジンは怒濤の加速力を示し、コーナリング性能は刺激的そのもの。アクティブトルクスプリット4WD、225/40R18サイズのミシュランパイロットスポーツ4S+BBS鍛造ホイールによる乗り心地はほぼレーシングカーだ。
実際サーキットで走らせた経験もあるが、公道では持て余すしかない超絶なパフォーマンスに圧倒されたのである。ただ、普段使いを重視するなら、RZの選択をお薦めする。
ホンダ・フィットe:HEVモデューロX
と、ヤリスが出てきたのなら、そのライバルのホンダ・フィットはどうなっているのか? もちろん、ワークスコンプリートカーがある。それが、ホンダアクセスが手掛けるフィットe:HEVモデューロXだ。
最初に言っておくと、ノートオーラNISMOやGRヤリスに比べれば、遥かに実用的、というか、比較的穏やかなチューニングの範囲に収めている。先代フィットにはRSというスポーティグレードがあったものの、現行フィットにはなく、その穴を埋めるためのスペシャルな1台と言っていい。
エクステリアでは専用のグリル、バンパー、テールゲートスポイラー、ガーニッシュ、エンブレムなどを装着。インテリアもブラック×ボルドーレッドでキマっていて、専用革巻きステアリング、セレクトレバー、専用コンビスポーツシートなどが奢られている。
モデューロはパワーユニットに手を入れないのが流儀だが、専用16インチホイール、サス(ダンパーのみ)、空力にこだわった、ホンダの風洞実験室から生まれたエアロパーツが、ワークスコンプリートのキモとなる。
フィットオーナーが乗り換えたとすれば、まず感じられるワークスコンプリートカーらしさは乗り心地。具体的には中低速域ではズバリ、硬い。しかしステアリングフィール、乗り味は明らかに重厚になる。そして本領を発揮するのはエアロパーツの効果が出てくる高速域。乗り心地にフラット感が出て、コンパクトカーとは思えない、クラスを超えたスポーティな走行性能を味わせてくれるのだ。価格は286万6600円と、フィットe:HEV LUXE(FF)の242万6600円の44万円高となる。
筆者なら、ワークスコンプリートカーらしくも洗練されたアピアランスやインテリアの特別感、そして普段使いからスポーツティな走りまでオールマイティーに使えるという点で、オーラNISMOを選ぶ。2021-2022日本カー・オブ・ザ・イヤーで選考委員としてノートシリーズに満点を配点したのも、ノートオーラの完成度に加え、オーラNISMOの存在感や魅力が大きくかかわっていたのである。
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