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契約済みのガスリー、アルファタウリ残留発表が持つ意味。夢を掴むための”勝負の18ヵ月間”

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契約済みのガスリー、アルファタウリ残留発表が持つ意味。夢を掴むための”勝負の18ヵ月間”

 アルファタウリは、6月24日に2023年もピエール・ガスリーがチームに残ることを発表した。ガスリーはすでに2023年までの契約を結んでいたため、今回の発表は契約の更新などを伴うものではなかった。

 カナダGPで、アルファタウリ代表のフランツ・トストは、ガスリーがどこにも行かないことを明確にし、2023年のチームにいるのは「100%確定」だと述べていた。ガスリーとの話し合いについて尋ねられると、トストは「彼は有効な契約を結んでいる。これ以上言うことはない」と言葉少なに答えた。

■ピエール・ガスリー、2023年もアルファタウリ残留が正式決定。去就注目も移籍はせず

 ガスリーが2023年まで契約していることは、新しい情報ではなかった。3月のmotorsport.comのインタビューで、ガスリーは『もう1年契約があることは、もう機密事項ではない』と語っていたのだ。

 しかしトストのコメントと今回のアルファタウリの発表は、それでも2023年に向けたドライバー市場において大きな影響を与えたと見られている。

 ガスリーの契約は常にレッドブルと結ばれてきたモノであり、アルファタウリとの契約ではないことに注意する必要がある。だからこそレッドブルは、2019年にパフォーマンスが芳しくなかったガスリーを、わずか12レースでレッドブルからトロロッソに降格させることができたのだ。それだけに、ガスリーはレッドブル再昇格への野心を強く持っている。

 来季に向けて、セルジオ・ペレス(レッドブル)の去就はドライバー市場の大きな要素のひとつだった。マックス・フェルスタッペンとコンビを組んだ1年目のパフォーマンスは、世界を熱狂させたとは言い難いものだった。もし彼が2022年も低迷していたなら、ガスリーが切望していたレッドブルへの復帰は確実なものになったことだろう。

 しかし、ペレスは今季ここまで目を見張るような活躍を見せている。その結果、契約延長の交渉はあっけなく決着した。モナコGP優勝の翌日、ペレスは2023年だけでなく、意外なことに2024年までレッドブルに在籍することが決定したのだ。

 このニュースは、レッドブルに「自分を使うか、それとも失うか」と迫る自然なタイミングを探っていたであろうガスリーにとって、打撃となったはずだ。レッドブルのアドバイザーであるヘルムート・マルコも、3月にこのシナリオがありそうだと認めていた。

 ガスリーはアゼルバイジャンで、自身の去就について「2023年以降、あらゆる選択肢を考えている」とコメントしていた。ドライバー市場での高い評価と自由度を手に入れたガスリーが、非常に注目される存在だったことは間違いないだろう。

 ガスリーにとって、来季は自身のキャリアのターニングポイントを作る機会となったのだ。だからこそアルファタウリにとって、シリーシーズンが過熱し始める前にガスリーがどこにも行かないことを明確にすることが重要だったのである。

 ガスリーはここ数年、F1で最も安定したパフォーマンスを発揮しているドライバーの一人だ。優勝経験もあり、自らがチームを率いる経験もある。経験豊富なドライバーを探しているチームにとって、彼はぜひとも欲しいドライバーとなっているのだ。

 トップチームであるレッドブルに昇格した2019年は、上手く結果を出せなかったが、それは2013年にマクラーレンに加わり、物足りない成績に終わったペレスも同じだ。ペレスはその後、レッドブルに加入するまでフォースインディアとレーシングポイントで7シーズンも戦った。ガスリーには、それとは異なるキャリアを描くチャンスがある。

 来季ガスリーが移籍する可能性があったチームのひとつが、ダニエル・リカルドの将来が不透明なマクラーレンであることは明白だ。ガスリーと同様、リカルドの契約は2023年末までとなっているが、マクラーレン・レーシングのCEOであるザク・ブラウンは、契約には早期離脱を可能にする「メカニズム」があると示唆。そのためリカルドが来年もマクラーレンにいるのかどうか、疑問視されている。

 ブラウンはカナダでリカルドとの関係は「決して良くなっていない」と語り、チームとしてドライバーにいかに良いマシンを提供することに集中すべきかを強調した。

 ブラウンはリカルドのパフォーマンスについて、「もっと良くなるはずだが、我々は一生懸命働いて、今後それができるようにするつもりだ」と語っている。

 マクラーレン以外の候補という意味で、かろうじて可能性があったのはアストンマーチンとハースだろう。それぞれセバスチャン・ベッテル、ミック・シューマッハーとの契約が今年で満了を迎える。ウイリアムズは、ニコラス・ラティフィの後任にアルピーヌ育成のオスカー・ピアストリをレンタルする可能性が高いと見られている。

 今回の発表は、ガスリーとアルファタウリ(かつレッドブル)との間の信頼を示すものであり、別のチームでドライブする可能性をシーズン中に打ち消すものだった。ガスリーはプレスリリースの中で、「今後18ヵ月間、チームと一緒に開発を進めていけることは、将来に向けて良い作業基盤となる」と述べている。

 しかし、今回の発表はそれ以上の意味を持つ。ガスリーがアルファタウリで過ごす残りの”18ヵ月間”は、定期的に上位で戦えるようなビッグチームのシートを獲得するための、最高のオーディションとなるのだ。

 2024年シーズンは、それまでに契約を解除されるドライバーの数を考えると、マーケットが大きく動く可能性のあるタイミングである。ガスリーにとってもチャンスが大きいのは、間違いなく2023年ではなく、2024年なのだ。

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