現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 50年ぶり! 米空軍の「戦略爆撃機」本州最北の軍用飛行場に配置へ「核兵器の運用ムリ」だから最適、その理由は?

ここから本文です

50年ぶり! 米空軍の「戦略爆撃機」本州最北の軍用飛行場に配置へ「核兵器の運用ムリ」だから最適、その理由は?

掲載 27
50年ぶり! 米空軍の「戦略爆撃機」本州最北の軍用飛行場に配置へ「核兵器の運用ムリ」だから最適、その理由は?

戦略爆撃機は、一時的な駐留ではなく「配備」

 2025年4月18日、青森県の三沢基地にアメリカ空軍のB-1B「ランサー」が着陸しました。戦略爆撃機が日本国内のアメリカ軍基地に「配備」されるのは、ベトナム戦争時にB-52「ストラトフォートレス」が沖縄県の嘉手納基地に駐留して以来、およそ半世紀ぶりのことです。

【画像】これが自衛隊のF-15戦闘機と一緒に飛ぶB-1「ランサー」です

 これまでもB-1Bが三沢基地を含む在日米軍基地を訪れた事例はありました。しかし、いずれも一時的な駐留に過ぎません。今回はローテーション配備、すなわち、一定期間にわたり三沢基地を拠点として運用する体制が正式に敷かれたというのが大きな違いで、そう捉えると歴史的な転換だと言えるでしょう。

 今回のB-1B配置は、冷戦の記憶を呼び起こすと同時に、米中間で展開される21世紀型の大国間競争において、日本が果たす戦略的役割の深化を如実に物語るものでもあります。ただ、この配置に対し一部からは懸念の声も上がっているようです。

 代表的なものでは、「戦略爆撃機」として知られた機体が日本に常駐するとなると、「日本が核攻撃の発進基地と見なされかねない」といった危惧です。こうした声が出るのも無理からぬものなのかもしれません。ですが、これにはひとつの誤解があります。

 実は、B-1B「ランサー」は核兵器を搭載できません。これは単なる技術的制限ではなく、明確な政治的判断の結果です。

 アメリカ・ロシア間において締結されている戦略兵器削減条約(STrategic Arms Reduction Treaty:START)に基づき、アメリカ空軍はB-1Bを「非核任務専用機」として再定義し、すべての機体に対して、物理的に核兵器(AGM-86 空中発射巡航ミサイル)を取り付けられないようにしています。これは、ロシアの査察立ち会いのもと行われており、核兵器の運用が事実上できない機体に成り下がっているのです。

 これを受け、B-1Bは核抑止の三本柱(トライアド)から外れ、もっぱら爆弾やミサイルといった通常兵器の運用母機として用いられてきました。すなわち、今日のB-1Bはもはや「戦略爆撃機」ではなく「超長距離戦術爆撃機」と言える存在です。

三沢基地に展開するアメリカ側の意図は?

 B-1Bの役割は明確です。大きなペイロードを活かせば、多数のJASSM巡航ミサイルやLRASM対艦ミサイルを搭載することができ、その他各種誘導爆弾を組み合わせて運用することが可能です。さらに限定的ながらステルス性を備え、可変翼による高速飛行能力を備えており、長大な航続距離ゆえにそれを活かした高い戦力投射能力を誇ります。

 では、このような機体が青森県の三沢基地に配備される意図はどこにあるでしょうか。アメリカ空軍では「爆撃任務部隊(Bomber Task Force:BTF)」と呼ばれる即応展開部隊を常に用意しており、これを自軍のみならず同盟国まで含んだ様々な基地に派遣しています。今回の三沢展開もその一環で、アメリカ国防総省では「脅威の抑止と地域の安定維持に対する自国なりの関与」だと主張しています。

 これらを鑑みると、北朝鮮や中国を見据えたものであると考えることができるでしょう。

 これまでグアムや米本土の基地から出撃していた戦力を日本に前進配置すれば、インド太平洋エリア全体で万が一、戦火があがった際の応答速度は格段に向上します。特に南シナ海や台湾海峡、北朝鮮といった潜在的な衝突点をにらんだ際、数時間の短縮は極めて戦略的な意味を持ちます。

 前述した通りB-1Bには核兵器が搭載できません。ゆえにその存在が持つ「メッセージ性」が、B-2やB-52といった他の爆撃機比べ、より「限定的だが通常戦争向き」であるとみなせるでしょう。つまり、核の影をちらつかせることなく、確実な反撃能力があることを示すことができます。

 なお、三沢基地におけるB-1Bの滞在期間は明らかにされていませんが、2025年4月現在、4機が展開しています。

関連タグ

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

空の戦いが一変!?「ステルス空中給油機」米軍の次世代プロジェクト 睨むのは中国との将来戦か
空の戦いが一変!?「ステルス空中給油機」米軍の次世代プロジェクト 睨むのは中国との将来戦か
乗りものニュース
中国オリジナル戦闘機が史上初の戦果!? ヒマラヤ至近で起きた空中戦 世界の兵器マーケットに影響 “大”な可能性
中国オリジナル戦闘機が史上初の戦果!? ヒマラヤ至近で起きた空中戦 世界の兵器マーケットに影響 “大”な可能性
乗りものニュース
ウ軍F-16戦闘機の活動を阻む「厄介者」とは? 再確認されたロシア防空兵器の圧倒的な優越性 “排除ムリ”なワケ
ウ軍F-16戦闘機の活動を阻む「厄介者」とは? 再確認されたロシア防空兵器の圧倒的な優越性 “排除ムリ”なワケ
乗りものニュース
もうコリゴリ!?「虎の子」機を喪失したロシア軍 代わりに高性能戦闘機を前線へ「でも明らか力不足」その理由は
もうコリゴリ!?「虎の子」機を喪失したロシア軍 代わりに高性能戦闘機を前線へ「でも明らか力不足」その理由は
乗りものニュース
日本近海で「核爆弾を空母からドボン!」米軍やっちまった案件 60年経つも行方不明のまま 日米間の外交問題に
日本近海で「核爆弾を空母からドボン!」米軍やっちまった案件 60年経つも行方不明のまま 日米間の外交問題に
乗りものニュース
日の丸「空母」に載せます 自衛隊向けステルス艦載機「F-35B」初飛行に成功! 九州には飛行隊も用意済み
日の丸「空母」に載せます 自衛隊向けステルス艦載機「F-35B」初飛行に成功! 九州には飛行隊も用意済み
乗りものニュース
自衛隊も導入検討「どこからでもミサイル落とすレーダー」いよいよ米軍のテストを終え生産体制へ
自衛隊も導入検討「どこからでもミサイル落とすレーダー」いよいよ米軍のテストを終え生産体制へ
乗りものニュース
トランプ戦闘機F-47の「コンペで敗けたメーカー」が余裕しゃくしゃくなワケ F-35で“まだまだいける!?”
トランプ戦闘機F-47の「コンペで敗けたメーカー」が余裕しゃくしゃくなワケ F-35で“まだまだいける!?”
乗りものニュース
「ホントに使えるのか?」だった“元祖ヘリコプター”が大冒険しちゃった件 「得体の知れない乗り物」はこうして実用化した
「ホントに使えるのか?」だった“元祖ヘリコプター”が大冒険しちゃった件 「得体の知れない乗り物」はこうして実用化した
乗りものニュース
「やっぱ『グリペン』にする」北欧戦闘機なぜいま選ばれる? コスパだけじゃないその理由
「やっぱ『グリペン』にする」北欧戦闘機なぜいま選ばれる? コスパだけじゃないその理由
乗りものニュース
「世界初の新造空母」はなぜ日本で生まれたのか “空母の実用化”を下支えした「鳳翔」の半生
「世界初の新造空母」はなぜ日本で生まれたのか “空母の実用化”を下支えした「鳳翔」の半生
乗りものニュース
「ジャンボ機」を超える驚愕サイズの旅客機はもう生まれないのでしょうか?→理由は「需要が…」ではない!
「ジャンボ機」を超える驚愕サイズの旅客機はもう生まれないのでしょうか?→理由は「需要が…」ではない!
乗りものニュース
「潜水艦貸して…」 実は“超音速機ゼロ”の空軍以上に深刻「金欠の大国」の海軍 政権交代後の進展は? アルゼンチン
「潜水艦貸して…」 実は“超音速機ゼロ”の空軍以上に深刻「金欠の大国」の海軍 政権交代後の進展は? アルゼンチン
乗りものニュース
北朝鮮オリジナル“重武装艦”ミサイル発射実験を開始! 見慣れない「謎のミサイル」もテスト
北朝鮮オリジナル“重武装艦”ミサイル発射実験を開始! 見慣れない「謎のミサイル」もテスト
乗りものニュース
欧州の2大海軍が集結 空母2隻を含む20隻を超える艦艇がズラリ そのうち1隻は日本にもやってくる!?
欧州の2大海軍が集結 空母2隻を含む20隻を超える艦艇がズラリ そのうち1隻は日本にもやってくる!?
乗りものニュース
たった1年で調達終了! アメリカ待望の「新戦車」キャンセルの理由は? 陸軍長官「コレジャナイ」とも
たった1年で調達終了! アメリカ待望の「新戦車」キャンセルの理由は? 陸軍長官「コレジャナイ」とも
乗りものニュース
ロシアで北朝鮮製の「謎の多連装ロケット」初撃破される! 閃光を放ち炎上する様子が公開される
ロシアで北朝鮮製の「謎の多連装ロケット」初撃破される! 閃光を放ち炎上する様子が公開される
乗りものニュース
海自「最新ステルス艦」に世界のマスコミ注目か? 日本から持参の“伝統文化”に外国軍人も興味津々
海自「最新ステルス艦」に世界のマスコミ注目か? 日本から持参の“伝統文化”に外国軍人も興味津々
乗りものニュース

みんなのコメント

27件
  • 992
    書き忘れているもう一つの能力
    性能の低いレーダーをかいくぐり低空にて地形追随飛行が可能
    これによりキム一家を山中深く追い詰める仕事が出来る
  • Mike
    三沢と言えば近くの淋代海岸から1931年、初の無着陸太平洋横断を狙いアメリカ人飛行士が次々と挑戦しました。失敗が相次ぎましたが10月、クライド・パングボーンとヒュー・ハーン・ドーンの4組目「ミス・ビートル号」が41時間後、ワシントン州ウェナッチバレーに無事着陸しました。高高度飛行でルートは最短を狙いダッチハーバー~アラスカ沿岸から海岸沿いに下り州北端に達しました。日本人飛行家も1年後に挑戦しましたが、強風の中離陸し行方不明となりました。爆撃機の三沢配置は北朝鮮とロシアの動向を睨むものでしょう。南西諸島等日本の注意は南方に向いてますが、プーチンはアイヌをロシア先住民族として認定し、北海道侵攻を合法化しようとしており、油断できません。日本政府は南千島4島のみの返還を求めていますが、本来縄文人の子孫であるアイヌの住地、南樺太、千島列島はおろかカムチャツカ南部も日本の領土として主張すべきなのです。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村