呉~今治の最短ルートとなる「架橋構想」
本州と四国を隔てる瀬戸内海には、多くの島々が点在し、周辺エリアの人口は約3,500万人に達している。一方で、この海は本州・四国間だけでなく、島々の往来においても大きな障壁となっている。
こうした課題を解消するため、本州と四国を陸路で結ぶルートとして、「明石海峡大橋・大鳴門橋ルート」「瀬戸大橋ルート」「しまなみ海道」の3ルートが整備されてきた。
さらに、新たな本州・四国連絡ルートとして構想されているのが、広島県呉市から瀬戸内海の島々を経由し、大三島でしまなみ海道へ接続するルートだ。実現すれば、「呉~今治」を橋で結ぶ新たな広域ネットワークが形成される。
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大三島まで残り約5km! 未開通部「関前諸島架橋構想」
しまなみ海道は、広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ本州四国連絡道路で、向島・因島・生口島・大三島・伯方島・大島などを橋で結んでいる。芸予諸島は島々が密集しているため、海上を走るというより島伝いに移動する感覚が特徴だ。
同様に、呉市から今治市を結ぶ構想も、芸予諸島の島々を橋でつなぐルートとなる。
実は、その大半はすでに完成している。呉市から下蒲刈島、上蒲刈島、豊島、大崎下島、岡村島までを結ぶ一般道路「安芸灘とびしま海道」によって、本州から5つの有人島へクルマでアクセスできる。
大崎下島には、歴史ある港町として知られる御手洗の「重要伝統的建造物群保存地区」があり、岡村島へ渡ると愛媛県に入る。
現在、道路が途切れているのは、この岡村島から先だ。
岡村島と、しまなみ海道が通る大三島との間は直線距離で約5km。この区間には小大下島と大下島があり、4本の橋で結ぶ「関前諸島架橋構想」が長年にわたり地元から要望されている。
この構想が実現すれば、呉方面と四国を結ぶ新たな最短ルートとなることが期待される。現在は、山陽自動車道や中国自動車道を経由して大きく迂回するか、JR呉線沿いの国道185号で三原方面へ向かい、しまなみ海道へ入る必要があるため、大幅な距離短縮につながる。
観光面での効果も大きい。現在、呉方面から岡村島までは行き止まりのルートとなるため往復移動が必要だが、今治方面へそのまま抜けられるようになれば、瀬戸内の周遊性が大きく向上するとみられている。
計画上も一定の位置付けがなされており、広島県の「広島県道路整備計画2021」と、愛媛県の「愛媛県広域道路網マスタープラン」では、ともに検討区間として盛り込まれている。特に愛媛県では、長期構想段階よりも一段階具体性の高い「将来計画」として位置付けられている点が特徴だ。
また広島県では、大崎下島から北側の「大崎上島」を経由し、竹原市へ至る別ルートも検討されており、複数の構想が並行して検討されている。
実現に向けた「複雑な事情」。現在の状況は?
では、「関前諸島架橋構想」は実現に向けて、どの程度進んでいるのだろうか。
現時点では、大きな進展は見られない。国が2021年に策定した「新広域道路交通計画」には位置付けられておらず、近年の国会でも具体的な議論は見当たらないなど、事業化に向けた動きはほとんどないのが実情だ。
一方、地元では実現に向けた要望活動が続けられている。呉市、竹原市、東広島市、大崎上島町、今治市の5自治体は「広島県中部島地域架橋促進期成同盟会」を組織し、毎年7月ごろに国や両県へ要望書を提出している。
ただし、広島県と愛媛県では、この構想に対する温度差もうかがえる。その一端が、2023年9月の広島県議会での質疑応答から読み取れる。
まず前提として、架橋が想定される岡村島~大三島間はすべて愛媛県内に位置する。そのため、国との調整や事業化の主体は愛媛県であり、愛媛県が前向きに動かなければ計画は進まない。
広島県議会では2023年9月、県議から「愛媛県知事を説得してでも実現を目指すべきではないか」との趣旨の質問が出された。これに対し広島県は「非常に大規模な事業となるため、社会経済情勢を勘案すると早期の事業化は難しく、将来の構想と認識している」との愛媛県側の立場を説明。そのうえで、「この架橋構想の管轄である愛媛県の意思を尊重し、現時点におきましては、将来的な構想と受け止めているところでございます」と答弁している。
この背景には、愛媛県と大分県を結ぶ「豊予海峡ルート」構想の存在もある。こちらは2023年に国の「第三次国土形成計画」における「太平洋新国土軸構想」に盛り込まれ、長期的な検討対象となっている。愛媛県では、この構想の実現に向けた機運醸成にも力を入れている。
そのため、「関前諸島架橋構想」が本格的に動き出すには、国や県の政策転換や社会経済情勢の変化など、大きな環境の変化が必要になる可能性が高い。実現への道のりは依然として長いが、今後の動向が注目される。
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