奇妙な対決
現実は厳しいかも知れないが、その年齢に抗うかのように、ジャガーFタイプが新たなルックスとオプションを得て帰ってきた。
【画像】911、さまざまなカラーをみる【ディテール】 全66枚
多少のパワーアップと新たなエンジンラインナップの導入、さらには新型サスペンションと新デジタルインストゥルメントの採用なども行われているが、予想外だったのは、デビュー後8年が経過したFタイプを現代のスポーツカーに相応しいレベルに引き上げるための改良も施されていたことだった。
だからと言って、この「新型」FタイプのトップモデルであるRを、わずか1年前にデビューしたばかりの992型ポルシェ911と真っ向勝負させるのは公平と言えるだろうか?
新型911はすでにグループテストで勝利するとともに、英国ベストドライバーズカー選手権でも高く評価されており、いかに勇敢なFタイプRだとは言え、911を打ち負かすチャンスなどあるのだろうか?
つまり、Fタイプを911と比較するなど奇妙でしかないということだ。
通常、新しければ新しいほどあらゆる面で有利であり、その5.0L V8スーパーチャージャーが発するピークパワー以外、スペック上、FタイプRがより軽量で速く、なんと言ってもより新しいポルシェに勝るところなど何ひとつない。
ミスプリント?
だが、交互に2台を思い切り走らせてみれば、この「新型」ジャガーFタイプR P575 AWDがポルシェ911カレラ4Sと互角のパフォーマンスを見せるとともに、いくつかの点ではポルシェを上回っていることに気が付くだろう。
確かに多くの点では明らかに911がFタイプを上回っているが、それもさほど大きな差ではない。
設計の古さを新たなスタイリングとインテリアで上手く誤魔化そうとしているジャガーだが、そのエンジンサウンドは素晴らしく、われわれのような人間にとって、この点ではFタイプのほうが好ましいモデルだろう。
FタイプRのエンジンサウンドまさに「咆哮」であり、まだ耳にはその響きが残っている。
ウェールズにあるフォードのブリジェンド工場で創り出されたV8スーパーチャージャーエンジンを積むこのクルマは、ほぼすべての911のロードモデルよりも盛大なサウンドを発しており、それは数百m離れていても耳に届くほどのものだった。
プレス向け資料によると、FタイプRには「静音モード」が設定されているというが、中回転域から全開加速を試したときの、まるで殺気立った金管楽器のようなサウンドを耳にしたことがあれば、これはミスプリントだと思うに違いない。
911の攻勢 Fタイプの反撃
だが、実際にはこのモードのお陰で週末の早朝でも隣近所に迷惑をかけることなくエンジンをスタートすることが出来るのであり、その結果、このジャガーはライバルであるアストン マーティンよりもともに暮らしやすいモデルだと言えるだろう。
この「静音モード」は事実上FタイプRの標準セッティングとなっており、もしより激しいサウンドがお望みであれば、エンジンスタート前に「ダイナミックモード」を選択するか、アクティブエグゾーストシステムのセッティングを変更しておけば問題無い(だがその場合、引越を余儀なくされるだろう)。
見慣れたキャビンにはボタンひとつ追加されていないが、新しく採用された見事なマットブラックのドアハンドルや、新デジタルインストゥルメントとインフォテインメントシステムが、単なる素材の見直し以上の効果を発揮している。
日常をともに過ごすモデルとしてこの2台を比較した場合、選ぶべきはポルシェであることに間違いはないが、それでも911の攻勢に対してFタイプも反撃を見せる。
ジャガーのキャビンが狭いことは確かだが、背当ての柔らかなFタイプRのシートは911よりも高い快適性を見せるとともに、調整範囲やサポート能力でもまったく引けをとらない。
そして乗降性に関してもわずかだが911を上回っている。
ドイツの緻密さ 英国の斬新
それでも、911の方がキャビンスペースは広く、リアには手荷物を置くことも出来る後席が備わるとともに、良好な視界とドライビングポジションを確保しており、はるかに洗練された使い勝手の良いディスプレーとインフォテインメントシステムに加え、圧倒的に高い品質感を感じさせる。
なによりもクリーンなデザインで見事なフィールを感じさせるスイッチ類は他を圧倒している。
だが、ジャガーの見事なデザインで暖かく包み込むようなキャビンは、より独創的で豊かな高級感を感じさせる空間であり、確かにFタイプRに後席はないが、その使い勝手に優れた広いトランクスペースは911には望めないものだ。
この2台のどちらかで単なる気ままなドライブ旅行に出るとしたら、必ずしも選ぶべきは911の方だとは言い切れないだろう。
それでも911はまさにドイツメーカー製らしい緻密さとこだわりを感じさせ、行先設定の簡単なナビゲーションシステムは信頼できるルートを示し、インストゥルメントのモード設定も分かり易い。
対称的にジャガーで音声認識をオンにしようと思って押したナビゲーションシステムのボタンは、単なるラジオのミュートボタンであり、まさに英国が誇るテクノロジーの斬新さの一例だ。
だが、乗り心地でより優れた洗練性と快適性を感じさせたのはFタイプRの方であり、グランドツアラーとしてはポルシェをはるかに凌ぐモデルだと言えるかも知れない。
スポーツカーに求めるもの
この911カレラ4SはFタイプRほどの落ち着きは感じさせてくれず(明らかにオプションの20/21インチの異形RSスパイダー・デザインのアルミホイールと、より車高を下げたPASMスポーツサスペンションの影響だ)、911のスタンダードモデルに共通するしなやかさにも欠けていた。
毎日運転するモデルに求める快適性を思えば、このポルシェの路面状況のフィードバック能力はやや過剰と言えるだろう。
一方のジャガーは、荒れた路面ではしなやかさが足りないものの、ほとんどの場面で911よりも高い静粛性を感じさせた。
リアエンジンの911では、当然ながらFタイプRよりもやや高速域での安定感に欠け、路面の傾きや横風の影響を受けやすいが、そのいずれもがこのクルマの目的を表していると言えるだろう。
今回のテストで明らかにしたいのは、どちらが優れたグランドツアラーかということではなく、スポーツカーを購入するひとびとの多くは、洗練性やキャビンの高級感を求めているわけではないのだ。
これまでなんとかこの独特の魅力を備えた愛すべきFタイプRを高く評価する理由を探し出してきたが、ご想像のとおり、ドライバーアピールの面でこのクルマはスタンダードな911にも及ばない。
この事実はショックではなくても恥ずべきものだが、それもこうした比較を行うことで初めて理解することが出来るのだ。
FタイプRに911と同じレベルのダイナミクス性能や、すべての速度域でドライバーに強い印象を与えるようなパフォーマンスを求めるのはやや酷と言えるだろう。
後編に続く。
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