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復活がココから始まる ランチア・イプシロンへ試乗 走りの印象はe-208似 マイルドHV版も

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復活がココから始まる ランチア・イプシロンへ試乗 走りの印象はe-208似 マイルドHV版も

風前の灯だったランチア イプシロンで復活へ

アウレリアにベータ、ストラトス、デルタ。数多くの名車を排出してきたランチアは、まさに風前の灯だった。2017年以降、ディーラーに並んでいたモデルは1車種のみ。限定された市場で、フィアット500がベースのイプシロンが売られていただけだった。

【画像】復活がココから始まる イプシロン・エレットリカ 100年前のランチア 兄弟のe-208も 全140枚

かつてのフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)を率い、2018年にこの世を去ったセルジオ・マルキオンネ氏も、恐らく悔やんでいたに違いない。それでも、最新技術への関心が高くない、イタリア人による忠誠心は小さくなかった。

ランチアは、ステランティス・グループによって復活を遂げる。復活するのに充分な開発資金を捻出した、現会長のカルロス・タバレス氏の功績は大きい。4代目イプシロンが、遂に公道を走る時がやって来た。

創業者のヴィンチェンツォ・ランチア氏が、自らの名字を冠した自動車メーカーをトリノに立ち上げたのは、1906年。現在は、フィアットとランチアのクラシックカー・コレクション、FCAヘリテージ・ハブが、ミラフィオーリ工場に併設されている。

今回はその創業の地で、新生イプシロンを試乗させていただけるという。ランチアというブランドの価値も、改めて確かめられるだろう。

走りの印象はe-208やコルサ・エレクトリック似

新しいイプシロンは、エンジン版のイブリダと、モーター版のエレットリカを選べる。後者はランチア初のバッテリーEVで、試乗車もそれだった。

前者には、100psを発揮するマイルド・ハイブリッドの1.2Lガソリンターボエンジンが
載る。他方、エレットリカには、156psの駆動用モーターと51kWhのバッテリーが積まれる。これらの数字は、ステランティス・グループのクルマでは見慣れたものだ。

プラットフォームも、同グループのe-CMP。多くの小型車の、基礎骨格をなしている。

市街地へ出てみると、印象はプジョーe-208やオペル・コルサ・エレクトリックと殆ど同じ。ブランドらしさは薄いかもしれないが、悪いこととはいえない。欧州市場では好調に売れているモデルで、乗り心地や操縦性は、さほど重視されるカテゴリーではない。

高速道路での走りは、至って滑らか。力強く洗練度が高く、快適性は優秀。インターチェンジのカーブも鋭く旋回していく。とはいえ、ランチアといえばラリーのイメージが強いはず。そんなファンへ向けて、イプシロン HFも登場予定にある。

均質化が進む現在のクルマで、主な購入動機となるのはコストとデザインだろう。内容は近くても、ジープ・アベンジャーを選ぶ人がいれば、アルファ・ロメオ・ジュニアを契約する人もいる。

ランチアは、古くからデザインを重視してきた。技術的な相関性が深まる中で、スタイリングやインテリアへ拘るという戦略は、理に適ったものといえる。

ストラトスを彷彿とさせるテールライト

「多くの関係者から、ランチアで働いて欲しいと連絡をいただきました。彼らは情熱的で、復活に関して話が進むと、目を輝かせていましたね」。現在クリエイティブ部門を率いる、ジャン・ピエール・プルエ氏がイタリアの雑誌による取材で答えている。

彼は、初代ルノー・トゥインゴやシトロエンC6、DS 3などを手掛けた鬼才。ランチアの復活では、「意味性」「象徴性」「一貫性」「折衷性」という、4つのデザインの柱が掲げられた。

新しいイプシロンを眺めてみて、「意味性」は少し掴みにくい。それでも「象徴性」に関しては、ストラトスを彷彿とさせる丸いテールライトが該当しそうだ。

「一貫性」と「折衷性」は、相反する関係性に思える。少なくとも、スタイリングのまとまりは高く、フロントグリルは特徴的だ。

インテリアにも、観察したくなるディティールは多い。細かな加工が施されたエアコンの送風口にウッドトリム、アールデコ調なダッシュボードのグラフィック、センターコンソールの丸いテーブルなどは、いずれも目新しい。

丸いカタチはドアの内張りにも展開され、タッチモニターの上部に載る「サラハブ」にも与えられている。これは、サウンド・エア・ライト・オーグメンテイション(改善)の略で、車内での体験を統合するアシスタント・インターフェイスらしい。

シートは、ストライプ状のグラフィックが施されたベルベット張り。肌触りも良く、それぞれじっくり確かめたくなる。

航続距離は402km 復活させる価値は大きい

イプシロン・エレットリカの航続距離は、カタログ値で402km。目的地にした郊外のホテルまでの260kmは余裕でこなせると考え、トリノを出発した。

しかし高速道路の制限速度、130km/h前後で進むと、予想距離はみるみる短縮。問題なく到着できたが、相応の充電が必要になった。

ホテルの周辺には、沢山の充電器が敷設されている。イタリアの石油大手、エニ社が展開する充電サービスは、簡単なアプリ登録で利用可能。おしゃれなデザインの、CCSハイパーチャージャーを利用することに。

イプシロンの急速充電は、最大100kW。朝食を終えてハイパーチャージャーへ繋ぐと、89kWの速さで駆動用バッテリーへ電気が送られていく。満充電まで、1時間もかからないだろう。

ところが、突如停止。ケーブルを繋ぎ直しても、充電は再開されない。

続きざまに、イプシロンから大きな警告音と、「電動トラクション・システムのエラー:ユーザーマニュアルを確認してください」という文字がモニターへ表示された。その後の技術者の話では、目立った不具合は確認できなかったらしい。

FCAヘリテージ・ハブで働くスタッフの1人は、イプシロンへ興味を示すイタリア人は多くないと口にしていた。デザインやハッチバックボディに、納得していないという意見も耳にするそうだ。

ランチアの前には、まだ困難が存在するようではある。とはいえ歴史を考えると、復活へ向けて情熱的に努力する価値が大きいことは、間違いないはずだ。

番外編:一度は訪ねたいFCAヘリテージ・ハブ

トリノのFCAヘリテージ・ハブを訪れて、筆者は改めて強く感銘を受けた。この壮大なコレクションに匹敵するモデルを展示できるメーカーは、他にあるだろうか。

斬新なモノコック構造を他に先駆けて導入した、1920年代のスタイリッシュなラムダ。スポーティで美しい、アウレリア B20 スパイダー。未来的なウェッジシェイプを取り入れたベータ・モンテカルロに、ストラトス。シャープなデルタは、今でもカッコいい。

カロッツエリアによる見事なボディをまとった例もあれば、F1や世界ラリー選手権で優勝したマシンまで、カテゴリーの幅にも驚かされる。これほど栄華を極めたブランドが、絶滅の危機へ追い込まれたことが、不思議でならない。

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