新世代で大変化 トリプルモーターで総合761ps
世代交代で、ここまで変化するモデルも珍しい。先代のマセラティ・グラントゥーリズモには、4.2Lか4.7Lの自然吸気V型8気筒エンジンが載り、現代の量産車では屈指の轟音を放つことができた。
【画像】新世代で大変化 マセラティ・グラントゥーリズモ 電動GT グレカーレ・フォルゴーレも 全153枚
しかし、新世代では環境規制に合わせて3.0LのV6エンジンへ交代。新開発されたプラットフォームは電動パワートレインにも対応し、グラントゥーリズモ・フォルゴーレはほぼ無音で加速してみせる。
後述の通り、マセラティのバッテリーEVに対するアプローチは、他ブランドのそれとは異なる。だがロングノーズのプロポーションは、先代へ通じる雰囲気を放ち、見慣れたものでもある。
パワートレインを問わず、製造されるのはマセラティのイタリア・モデナ工場。フォルゴーレに搭載される駆動用モーターは3基で、システム総合761psに達する最高出力を受け止めるうえでも、四輪駆動は妥当な選択といえるだろう。
1万7600rpmまで回る、モーター1基あたりの出力は407ps。リアに2基、フロントに1基搭載され、単純計算では1221psとなるが、イタリアのミラフィオーリ・バッテリー・ハブ工場で作られる駆動用バッテリーの性能上、460psほど制限されている。
リア側のタイヤは、左右それぞれ1基のモーターが担当。リミテッドスリップ・デフは備わらない。
車重は実測で2358kg シャシーはV6版とほぼ同じ
83kWhの駆動用バッテリーは、800Vの電圧を提供。インバーターには、フォーミュラE由来のシリコン・カーバイド基盤が採用される。より軽量で、高い電力の処理を可能としている。急速充電は、最大270kWに対応する。
一般的に、駆動用バッテリーはフロア部分に敷き詰められるのが通例だが、フォルゴーレは違う。エンジンやトランスミッション、プロペラシャフトなどが省かれた空間を埋めるように、+のカタチで詰め込まれる。
フロアへ敷くより重心は高くなるが、シャシー中央へ集中させることで、ロール軸へ重心点を近づけられるとマセラティは主張する。その重さは、600kgもある。車重はカタログ値で2260kg。V6エンジン版のグラントゥーリズモ・トロフェオより465kg重い。
AUTOCARで実際に測ったところ2358kgで、前後の重量配分は、ほぼ50:50にある。ちなみに、全長の近いポルシェ・タイカン・ターボSは、2295kgを計測している。
サスペンションは、前がダブルウィッシュボーン式、後ろがマルチリンク式という構成。これは、V6エンジン版と変わらない。電子制御のダンパーが組まれることも。基本的に、シャシーの違いは荷室フロアやセンタートンネルに補強材が入ることくらいだ。
華やかなインテリアに低い着座位置
美しいスタイリングと同様に、インテリアもグラントゥーリズモ・トロフェオと違わない。全体的に、華やかさを感じる仕上がりにある。試乗車はツートーンでコーディネートされ、特別感も高かった。
フロア部分に駆動用バッテリーがないぶん、着座位置は低い。ホイールベースが長いため、後席は実用に耐える。10代前半の子どもなら、長距離ドライブにも対応するだろう。荷室容量は、270Lと限定的だが。
ステアリングホイールの裏には、回生ブレーキの強さを選べるアルミニウム製パドルが備わる。最大400kWで発電でき、減速力は0.65Gに達するという。
ダッシュボード中央には、12.3インチのインフォテインメント用タッチモニター。ドライバーの正面には、12.2インチのメーター用モニターが据えられる。
インフォテインメント・システムの反応は、若干遅れ気味。メニュー構造は、覚えるまでに少し時間が必要かもしれない。アップル・カープレイとアンドロイド・オートには、シームレスに対応していた。
3基の駆動用モーターが発揮するパワーとトルクは、マセラティ独自のビークル・ドメイン・コントロール・モジュールと呼ばれるシステムによって制御される。また、マックスレンジ、GT、スポーツ、コルサという、ドライブモードでも解放量は変化する。
761psと137.4kg-mのすべてを利用できるのは、スポーツとコルサの2モード時のみ。デフォルトのGTモード時は、80%に制限される。
息が詰まるほど速い0-100km/h加速2.9秒
ご想像のとおり、コルサ・モードのフォルゴーレは息が詰まるほど速い。テストコースは路面が湿っていたが、四輪駆動を活かしスターティングを見事に決めてみせた。スタビリティとトラクションのコントロールは、かなり有能といえる。
優れないコンディションでも、0-100km/h加速は2.9秒。0-161km/h加速は6.4秒で、14.6秒後に241km/hへ達した。比較すると、グラントゥーリズモ・トロフェオはそれぞれ3.6秒、8.0秒、18.7秒となる。
速いだけでなく、普段使いとの親和性も高い。コルサ・モードでも、パワー制御は洗練されている。加速力は確かに鋭いが、予想した通りの速度上昇を引き出せる。
濡れた路面で、敢えてアクセルペダルを蹴飛ばすと、リアタイヤは悶えるものの、その挙動は把握しやすい。フロントアクスルが、丁度いいタイミングで前方へボディを引っ張り、滑らかに姿勢を整えてくれる。
僅かにペダルの感触は鈍いものの、ブレーキも、2.4tの車重を考えれば充分に強力。回生ブレーキと摩擦ブレーキの切り替わりも、ほぼシームレスといえる。回生ブレーキの強さをパドルで選べることが、運転体験の魅力度を高めている。
乗り心地は、長いうねりがある路面では良好だが、細かな凹凸が続く場面では揺れを抑えきれない様子。110km/hでの走行時の、車内のノイズ量は71dBA。タイカン・ターボSは、66dBAだった。
航続距離は、現実的には400km程度。グランドツアラーとしては、やや物足りない。
見事な操縦性のまとまり 往年のGT的流暢さ
操縦性は、見事なまとまりにある。グラントゥーリズモ・フォルゴーレの反応の速さや精度は、先代とは別次元といっていい。
突き詰めると、理想的なドライバーズカーと呼べるほどの、シャープさまでは備わらない。今はなき、メルセデス・ベンツSクラスへ準じる上質さでもない。どちらか一方へ、よりフォーカスしても良かったように筆者は思う。
とはいえ、間違いなくダイナミックなバッテリーEVだと表現できる。一定のボディロールを伴い、往年のグランドツアラー的なしなやかさと流暢さがある。タイカンにはない、好ましい緩さとでもいえようか。
優れた運転姿勢と操縦性、トルクベクタリング機能が高度に融合し、運転体験の充足度は極めて高い。軽くない車重と、シャシーのアンダーステア傾向が、多少足を引っ張るとはいえ。ただし後者は、アクセルペダルの加減で調整はできる。
グラントゥーリズモ・フォルゴーレの英国でのお値段は、クーペで17万8330ポンド(約3477万円)から。カブリオレは、6000ポンド(約117万円)の追加になる。
エンジンと電気モーター、2種のパワートレインに対応する複雑なプラットフォームを採用した、新世代のグラントゥーリズモ。同じ特徴を持つ多くの傾向とは異なり、どっちつかずの結果へ至らなかったことを高く評価したい。
音響的な喜びは消えてしまったものの、仕上がりには強い好感を抱ける。航続距離が伸び、特長が一層磨かれれば、完璧なマセラティが完成するに違いない。
◯:圧倒的な直線加速 落ち着きのある優れた操縦性 ゴージャスなインテリア
△:失った音響的な喜び タイカン・ターボSより高い価格
マセラティ・グラントゥーリズモ・フォルゴーレ(英国仕様)のスペック
英国価格:17万8330ポンド(約3477万円)
全長:4959mm
全幅:1957mm
全高:1353mm
最高速度:325km/h
0-100km/h加速:2.7秒
航続距離:450km
電費:4.3-4.5km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2260kg
パワートレイン:トリプル永久磁石同期モーター(前1基+後2基)
駆動用バッテリー:83.0kWh
急速充電能力:270kW
最高出力:761ps(システム総合)
最大トルク:137.4kg-m(システム総合)
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
「クマ対策装備」に身を固めた自衛隊員が出動!ドローンも投入し秋田で駆除支援 でも銃は携行しないワケ
道の駅ブチギレ「電気ぜんぶ消します!」“異例の対策”実施! 「走り屋集会所化」で苦情殺到! 注意喚起も「迷惑行為」改善されず… 「完全ブラックアウト作戦」14日開始 岡山
イマドキの若者からしたら「冗談でしょ?」 昭和のクルマに大マジで採用されていた装備4選
【20位転落の現実】ホンダ「フィット」はなぜここまで埋もれた? 中身も完成度も高いのに“存在感が薄い”理由を考える
【加速や燃費がイマイチでも…】ガソリンエンジン一択でマニアも自虐気味! 「ランドクルーザー“FJ”」をみんなはどう感じた?
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント