この記事をまとめると
■全日本ラリー第5戦「ARKラリー・カムイ」は悪天候で多くのマシンがダメージを受けた
ジャッキにレンチにスペアタイヤは軽量化を犠牲にしても必要な命綱! レースと違う「ラリー車」に積んでる装備をチェックしてみた
■ラリーではドライバー自身が車載工具だけで応急修理を行う場面も多い
■現役トップドライバーたちは即席修理で危機を乗り越えてきたと語る
応急修理も勝つために重要なスキル
2026年の全日本ラリー選手権は早くも折り返しを迎え、7月10~12日、北海道ニセコ町を舞台に第5戦「ARKラリー・カムイ」が開催。レグ1、レグ2ともに雨に祟られ、ウエット路面のなか激しいタイム争いが展開されていた。
それにしても、シーズン初のグラベル戦となった同ラリーでは、ウエットコンディションということもあって脱落者が続出するサバイバルラリーが展開された。無事に走破した選手たちも深く掘れた轍の影響からか、激しいダメージを負うマシンも多かった。
当然、レグ1、レグ2ともにサービスパークでは、各チームのメカニックたちがルーティンのメンテナンスに加えて、マシンのリペア作業を実施。さらにラリー競技では時としてドライバー、コ・ドライバーもメカニックとしてリペア作業を行うことも珍しくはない。とくにSSでマシンを破損した場合、ドライバー、コ・ドライバーの2名だけで対応しなければならず、パンクした際のタイヤ交換はもちろんのこと、すべてのトラブルに対して、SSあるいはロードセクションで応急処置を行わなければならないのである。
しかも、使用できるアイテムは車載に載せている工具とパーツのみ。そのため、競技車両は必要に応じてブレーキパッドやブレーキフルード、エア抜き用の工具、さらに足まわりのアーム類などを搭載しているが、工具やパーツが足りない場合は、道端に落ちている石や川の水、さらに工具やタイラップなど手もとにあるアイテムで代用するなど創意工夫をしながら、自走できるように対処しているのである。
実際、全日本ラリー選手権に参戦している国内トップドライバーたちも数多くの“修羅場”を経験している。というわけで、今回はARKラリー・カムイに参戦した3名のドライバーに自身最大の“マシン修復エピソード”を語ってもらった。
「GRヤリスに乗る前はずっとランサーでラリーをやっていたんだけど、ランサーは頑丈だったからね。でも、タイロッドアームが折れたときにプラグレンチを繋ぎ合わせて、それでサービスへ戻ったことはあるかな」と語るのは、4号車「ADVANKTMSGRヤリスRally2」でJN-1クラスに参戦する奴田原文雄選手だ。
さらに奴田原選手によれば、「あとはネジが取れて、ハンドルが取れたときは安タン(燃料タンク)のネジを抜いて代用したこともあったし、WRXでIRCのアゾレスに参戦したときはシフトレバーが折れたから、ドライバーかなんかの工具を突っ込んで無理やりシフトを動かしたこともあった。ラリーはいろんなことがあるから自分たちで対応しなくちゃいけない。メカニックに電話して、どうすればいいのか、アドバイスをもらいながら、その都度、対応してきたかな」とのことで、ラリー競技に参戦するドライバーにはメカニックとしての技術も必要となっている。
速さだけでなくメカニカルな知識も求められる
一方、7号車「MATEX-AQTECGRヤリスラリー2」でJN-1クラスに挑む若手ドライバーの大竹直生選手も、過去にハードな応急処置を行った経験をもっているようで、「2021年のラリー・カムイにトヨタ86で参戦していたんですけど、日曜日の午前中の最後のSSでミッショントラブルが発生。昼の20分間のサービスでミッション交換をすることになったので、サービスに入る前に自分でバラせるところはバラしたり、ボルトを緩めたりしていました」と語る。
この対応が功を奏し、「なんとかギリギリでミッション交換ができて、ペナルティを受けることなく、午後のループに向かうことができました。もちろん、ボルトが仮締めの状態だったので、ロードセクションで自分で増し締めしたんですけど、この結果、優勝することができました。あのときが一番、シビレましたね」と大竹選手は懐古する。
ちなみに大竹選手は、「メカニックがミッション交換をやっているのを見ていたので手順は知っていましたし、もしものときに備えて、シミュレーションもしていました。GRヤリスRally2に関しては、今年から乗り始めたばかりで、まだメカニカルな知識が少ないので、自分で応急処置ができるように勉強しておきたいと思います」とのことで、やはり、ラリー競技ではメカニカルな知識が求められているのである。
そして、15号車「Gセキネン・DL・カヤバWM GRヤリス」でJN-3クラスに参戦した関根正人選手も過去にさまざまな応急処置を行ってきたドライバーのひとり。なかでも印象的なエピソードが2018年のラリー北海道で、リヤのゴムブッシュがちぎれ、アームが外れたときのことだろう。
「当時、スズキ・スイフトに乗っていたんですけど、レグ2の音更のフィニッシュ近くで、リヤからバギッと音がして。フィニッシュ後にジャッキでタイヤを上げてみたら、ホーシングの前側のブッシュがちぎれていて、アームが折れていました」と語るように、思わぬハプニングが発生していた。
それでも関根選手は応急処置を実施しており、「スペアタイヤを固定していたラッシングベルトで縛って、タイヤが外れないように釣っている状態にしました。ラッシングが2回切れたけれど、なんとか辿り着いてサービスへ戻ることができた。そのときに獲得したポイントが活きて、チャンピオンになることができました」とのことだ。
そのほか「レッキ中なんですけど、本番車でSSを走っているときにブレーキのパイプが切れたことがあって、クルマに積んであるボルトで捩じ込んで対処したこともありました。お金がないので、自分でDIYをやってきたんですけど、その経験が生きていると思います」とのことで、関根選手も経験を積み重ねてきたことで、メカニカルな知識が豊富となっている。
このように公道を舞台とするラリー競技ではドライバーであってもメカニカルな知識と技術が必要で、競技中のロードセクションでは度々、ドライバーがマシンの修復を行っているのである。
なお、ARKラリー・カムイでは2号車「Castrol TEIN DLファビア」を駆る鎌田卓麻選手がJN-1クラスで今季初優勝を獲得。11号車「AISIN GR Yaris DAT」の大倉聡選手がJN-3クラス、27号車「埼玉スバルDLカヤバ・シャフトスイフトS」の上原淳選手がJN-4クラスで勝利を飾っており、38号車「DL☆Gセキネン鹿ソニックラブカヤリス」の松倉拓郎選手がJN-5クラス、45号車「TCS YARIS HEV」の清水和夫選手がJN-Xで、それぞれクラス優勝を獲得している。
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みんなのコメント
オンロードのマシン90%に対してオフロードの方は50%はドライバーのスキル。
だからドライバーの争奪戦が重要なんだよ。