新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大防止のため、現実世界でのレース開催を見送り、eスポーツシリーズを展開している北米のNASCARカップシリーズ。そのeスポーツ大会第3戦でダレル・ウォレスJr.(シボレー・カマロZL1)がレースを“途中放棄”したことで、スポンサーが契約解除を宣告する一幕があった。
NASCARが展開しているeスポーツ『eNASCAR iRacing Pro Invitational Series(eNASCARプロ・インビテーショナル・シリーズ』は、アメリカのFOXスポーツも協力して展開されているもので、その模様はインターネットだけでなくテレビでも中継されている。第3戦には現役ドライバーが32名参加したこともあり、のべ90万人以上が視聴。FOXスポーツが放送してきたeスポーツのなかで歴代最高の視聴者数を記録した。
実際のレースがダメなら……。新型コロナウイルスの影響で世界各地で『バーチャルレース』開催を表明
このレースに使われているマシンには現実世界のマシン同様にスポンサーロゴも掲出されており、実際のレースと同じく、各ドライバーもそのブランドを背負ってレースを戦っている。
騒動が起きたのは4月6日に行われたeNASCAR第3戦ブリストル。ウォレスJr.は16番手から決勝をスタートしたものの、スタート直後のアクシデントに巻き込まれ、26番手まで後退してしまう。
レースはイエローコーションが導入された後、7周目に再開される。ウォレスJr.は11周目には22番手まで順位を上げてきたが、前を走るクリント・ボウヤー(フォード・マスタング)をターン3進入でアウト側から抜こうとしたところ、ボウヤーの右リヤに追突してしまった。"C'MON, @BubbaWallace!"- @ClintBowyer pic.twitter.com/Zqne4HIPa5— FOX: NASCAR (@NASCARONFOX) April 5, 2020
追突されたボウヤーはなんとか体勢を立て直したように見えたが、ターン4立ち上がりでアウト側に並んでいたウォレスJr.に接触。これでボウヤーのマシンはスピン、ウォレスJr.のマシンはサイドウォールに衝突した影響でダメージを負い、自動的にピットに戻され修復を待つ状況になった。
すると直後、ピットに戻されたウォレスJr.は「Peace Out!(バイバイ!)」と叫ぶとゲームを終了。マシン修復を待たずにレースを途中棄権してしまった。
この行動にウォレスJr.と所属するリチャード・ペティ・モータースポーツをサポートする医薬品メーカー『Blue Emu(ブルー・エミュ)』が激怒。ウォレスJr.はレース終了後に冗談を交えながら、レース途中棄権に関する投稿をTwitterに行ったが、「あなたのスタンスはわかった。バイバイ、ババ(ウォレスJr.の愛称)。私たちはドライバーを支援するのであって、途中で投げ出すような人を支援するつもりはない」と返信し、スポンサー離脱の意向を示した。
ウォレスJr.はすぐに「あれは“キレ落ち”だった」とゲーマーならではのスラングも交えて釈明したものの、ブルー・エミュはドナルド・トランプ大統領が「お前はクビだ!」と言い放つ画像で返信を残しただけだった。
ブルー・エミュは2015年からリチャード・ペティ・モータースポーツを支援し、現在はNASCARのオフィシャルパートナーも務めている企業。同社のベン・ブレッシング副社長は海外サイト『The Action Network』の取材にリチャード・ペティ・モータースポーツから「第3戦ブリストル・モーター・スピードウェイの分の請求は行わない」と連絡が来たこと、ウォレスJr.との契約を正式に解除したとコメントしている。
なお、同社はNASCARのオフィシャルパートナーは継続するほか、下位シリーズのエクスフィニティを戦うランドン・カッシル(シボレー・カマロ)のサポートは継続するとしている。
自らの行いでタイトルスポンサーを失ったウォレスJr.だが、翌7日に行われたeNASCARにはアメリカ空軍カラーのマシンで出場し、4位完走を果たしている。
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