レガシィがツーリングワゴンというジャンルを確立!
1989年、16年ぶりに復活した日産スカイラインGT-R(R32)、マツダ・ユーノス ロードスター、そしてトヨタ・セルシオに並んで、もう一台、歴史に残るクルマが生まれた。それがスバルの初代レガシィ。このレガシィが登場するまで、スバルの乗用車を購入する人はかなり少数派だったが、レガシィは爆発的なヒットとなる。
280馬力規制があるからメーカーもファンも白熱! 1990年代の熱すぎるスポーツカー6台
ヒットの要因は、スポーティなツーリングワゴンというジャンルを確立したこと。この初代レガシィが登場するまで、国内では乗用車の車体後方を荷室化したクルマは、商用車、今でいえばトヨタのプロボックスや日産のNV150 ADなどのライトバンだと思っていた人の方が多かったが、レガシィ・ツーリングワゴンが登場してから、ワゴン=スポーティでオシャレというイメージに潮目が変わり、一大ブームが訪れる。
このレガシィの勝因は、セダンの居住性とワゴンならではのスペースユーティリティを併せ持たせたうえで、新開発のEJ20ターボエンジンを搭載し、スポーツカー並みの動力性能を与え、スバル得意の4WDをプラスし、MT車を用意しつつ、万人に受け入れやすいATを組み合わせたこと。
ラーメンでいえば、トッピングの“全部乗せ”仕様にしたことが、大きかった。もちろん、商業車とは明らかに違う洗練されたステーションワゴンのデザイン力も重要だったが、パワフル(200馬力)な4WDターボで、当時ブームだったスキー場まで、高速道路をブッ飛ばしていけるという商品力は強烈だった。このレガシィでワゴンブームに火がついて、各社がレガシィを追いかけだす。
まず三菱。RV路線に力を入れていく三菱は、1991年に初代RVRを投入。もともとはNA2リッターと1.8リッターガソリンエンジンだけだったが、マイナーチェンジ時にランエボの2リッターインタークーラーターボの4G63を搭載した、「X3」と「スーパースポーツギア」を追加!
三菱ではもう一台、1996年に8代目ギャランがベースのレグナムも登場。もっともスポーティな「VR-4」は、2.5リッターV6 DOHC ツインターボ 280馬力の6A13エンジンを搭載。もちろん4WDで、ランエボでおなじみのAYCや、アクティブ・スタビリティ・コントロールシステム&トラクションコントロールシステムも用意。
最強・最速ワゴンとして名乗りを上げた一台。“全部乗せ”感も半端ではなかった。ちなみにオプションのサイドエアバッグは日本初。超希薄燃焼を世界で初めて実現させたガソリン直噴GDIエンジン(4G93)も、このレグナム(ギャラン)に初採用された。
スポーツモデルと同じエンジンを積むクルマも!
続いて日産。日産のハイパワーワゴンといえば、ステージア。初代ステージア=WC34は、1996年のデビュー。ローレル/スカイラインのシャーシを流用し、エンジンも直6のRB25DET=280馬力を搭載。日産らしいイカツいスタイリングとスカイライン直系のLクラスステーションワゴンとして、走りの良さには定評があった。
1996年には、オーテックからGT-Rの心臓部=RB26DETTをはじめ、ドライブトレーン、リアサスペンションを流用した特別仕様車「260RS」が登場。最強のステーションワゴンという意味では、極めつけの一台となった。
トヨタでスポーティなワゴンというと、カルディナになる。ベースは10代目『コロナ』(T190型)で、1992年に登場。商用モデルのカルディナバンがあったり、初期モデルには2リッター/1.8リッターのNAエンジンしかなかったので、あまりスポーティなイメージはなかったが、1995年に2リッターDOHCの3S-GEを積んだ「TZ-G」が追加になる。
1997年のモデルチェンジで、2代目になり、セリカGT-FOURから流用した260馬力のターボエンジン「3S-GTE」と4WDを組み合わせた「GT-T」を登場させ、スポーツワゴンの仲間入り。パドルシフトのAT=スポーツステアマチックも「GT-T」に用意されていた。
ちなみに王者レガシィは、1993年にモデルチェンジして2代目に移行。2代目ではシーケンシャルツインターボを投入し、1996年のビッグ・マイナーチェンジで、2リッター量産車初の280馬力を達成。他社のハイパワーワゴンを突き放す。
こうして各社ともワゴンをよりハイパワー路線に進んでいったのが1990年代。しかし、実際はレガシィなら、NAの2.2リッター、あるいはホンダの“U.S.アコード・ワゴン”(初代 CB9)のF22Aエンジン(2.2リッターNA)などでも、パワーも十分で使いやすく、実用性が高かった……。
そしてこれらのハイパーワゴンブームから、より万能性、より広い室内と荷室を求めるユーザーが増え、SUVブーム、ミニバンブームに移り変わっていくのだが、クルマの基本はやっぱりセダンで、そのセダンベースのワゴンというのは、いま考えてもなかなかいい落としどころではないだろうか。
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みんなのコメント
そういう潜在需要が日本では小さすぎると思う。