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アメリカの本気を感じる1台──シボレー コルベット試乗記

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アメリカの本気を感じる1台──シボレー コルベット試乗記

“アメ車”と聞くと、どんなにスポーティなクルマでも、なんとなくどこかユルそう……といったイメージを持つ人は多いだろう。確かに昔はそうだったかもしれない。

しかし最近は、ドイツ車に対抗したクルマ創りを目指したせいか、かつてのアメ車特有のユルさはなくなってきている。キャデラックがニュルブルクリンクで走行テストをするような時代だ。今回試乗したコルベットも、メイド・イン・USAでありながらユルさは皆無だった。とはいえ、ふと思い返すとコルベットに限って言えば昔からユルさはなかった。

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現行モデルは2014年より販売される通称「C7」と呼ぶモデルだ。筆者は1983年に登場した「C4」以降のコルベットはすべて試乗したが、どの代もユルさはなく、正真正銘のスポーツカーだった。

初代からフロントエンジン、FR(後輪駆動)、2ドア、2シータースポーツ、V型8気筒のビッグエンジン搭載を貫いている。今でも続く典型的なロングノーズ、ショートデッキのスタイリングの基礎を築いたのは1963年登場の2代目からだ。

正真正銘のスポーツカーらしさを感じる部分は随所にある。たとえば、長いノーズの可能な限り前方に寄せたフロントアクスルのレイアウトにより、フロントエンジンながらミッドシップマウントになっている点だ。

ボンネットを開ければフロントタイヤの後ろにエンジンがマウントされているのが一目でわかる。これなら重いV型8気筒エンジンをフロントに搭載しても、前輪荷重を減らし、スポーツカーらしい軽快なハンドリングを実現出来るわけだ。この時点で、大量生産されるほかのアメ車とは一線を画す。

ダイレクトな乗り心地やハンドリングがコルベットらしくてイイ

今回試乗したコルベットは「グランスポーツ」というグレードだ。搭載するエンジンは6.2リッターV型8気筒OHVで、466ps/6000rpm、630Nm/4600rpmを発揮する。静止状態から60MPH(96km/h)に要する時間はわずか3.6秒と2輪駆動としては驚異的な速さだ。くわえて、コーナリングでの強烈な横Gにも安定したオイル供給ができるよう、レーシングマシンとおなじドライサンプ方式を採用しているのも特徴だ。

組み合わされる8速オートマチックトランスミッションはディファレンシャルギアの前にレイアウトしたトランスアクスルタイプだ。ペダルスペースに余裕が生まれるメリットもあるが、スポーツカーとしての重量バランスを確保するための方策でもある。後輪荷重を増すことでトラクションをより大きくできるからだ。なお、タイヤは前後異径サイズのミシュラン社製の「パイロット・スーパースポーツ」だ。

今回は一般道、高速道路、ワインディングロードを走ったが、すこぶる快適になったドイツ製スポーツカーより、断然“ワクワク感”が大きかったのが印象的だった。しかも、あらゆる場面でそれを感じるから終始運転していて楽しい。

大排気量のエンジン音による影響もあるが、乗り心地、ハンドリングがとにかくダイレクトだからだ。たとえば、自然吸気エンジンはアクセルペダルに対するレスポンスがすばらしく良い。過給器付きのハイパフォーマンスカーとはあきらかに異なるフィーリングであり、自然吸気ならではとも言うべき鋭さだ。徹底したスポーツカーを目指したからこそ実現したフィーリングである。

ダイレクトな乗り心地も、決して不快ではない。減衰力を自動調整する「マグネットライドコントロール」によって、不快な強い衝撃はきちんと抑えているからだ。ダイレクトと言っても、快適性もある程度考えられているのはさすがアメ車だ。

くわえてシートの出来もいい。深いバケットシートではないものの、身体をうまく支えてくれるから、横Gがかかるコーナリングでも身体が安定している。真っ赤なシートカラーもスポーティで、走りのよさとマッチする。真っ赤といっても深みのある赤だからおとなっぽくていい。

エクステリアも、おとなっぽさが魅力だ。フロントのチンスポイラーや、垂直に持ち上がったリアスポイラーがタダモノではないことをアピールするが、コルベットの獰猛なイメージにマッチしており、かつデザインもよく考えられているのでこどもっぽさはない。

今回試乗した「グランスポーツ」の価格は1226万8800円だ。ちょうどポルシェ 911カレラ(1307万円)などと競合する価格である。ヨーロッパ製スポーツカーに引けを取らない完成度だから、かつてのイメージからアメ車を敬遠する“食わず嫌い”の読者はいちど試してみるとよい。

ちなみに、さらなるパフォーマンスを望むなら、スーパーチャージャー付きの「Z06」を選べばいい。最高出力659ps/6400rpm、最大トルク881Nm/3600rpを発揮するエンジンによって、静止状態から60MPH(96km/h)に要する時間はなんと2.95秒! 0→400mもわずか10.95秒と、2輪駆動の最高レベルとも言うべき性能を誇る。こうしたモデルも用意するあたり、やはりコルベットは本格的なスポーツカーであるのだ。

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