どんな希代の名車でも、すべての人が「満点」をつけるとは限らない。だからこそ、より多くの人の意見が聞きたくなる。ここでは2024年10月に登場した3列シートSUV、マツダ CX-80を3人の自動車評論家に評価していただいた。
※本稿は2024年11月のものです
文:松田秀士、斎藤聡、渡辺陽一郎/写真:マツダ、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2024年12月26日号
巨大ボディなのに実燃費17キロ超え!? マツダ[CX-80]って実際どんな感じ
【画像ギャラリー】3人の自動車評論家がそれぞれの視点からホンネで評価!! マツダ CX-80のここがGOODここがBAD(24枚)
■CX-60との違いに注目!! 3列シートのフラッグシップ
2024年10月に登場したマツダ CX-80。CX-8の後継となる3列シートのフラッグシップSUVだ
国内におけるマツダのラージ商品群のフラッグシップとなるCX-80は、8月22日に日本仕様が発売となった。
直6ディーゼルを搭載するFRのSUVという成り立ちは、基本的にはCX-60と共通。しかし2列シートでよりスポーティなCX-60に対して、CX-80は上質な乗り心地を追求し高級感を強めた3列シートモデルとして、キャラクターの棲みわけを図っている。
本誌では2024年11月26日号で国沢光宏氏が試乗。長距離のインプレッションを通じ、CX-60と比べて改善された乗り心地やパワートレーンのフィーリング、インテリアの質感の高さなどを高く評価した。
今回評価するのは松田秀士氏、斎藤聡氏、渡辺陽一郎氏の3人だ。
●マツダ CX-80
・全長×全幅×全高:4990×1890×1710mm
・ホイールベース:3120mm
・車両重量:2100kg
・パワーユニット:3.3L、直6ディーゼル+モーター
・最大出力:254ps/3750rpm
・最大トルク:56.1kgm/1500-2400rpm
・モーター:16.3ps/15.6kgm
・WLTCモード燃費:19.2km/L
・価格:632万5000円
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■松田秀士氏の評価「燃費王といえる経済性と考えられた扱いやすさ! すべてにおいて上品さが嬉しい」
とくに意識していたわけでもない普通の運転で17.0km/L以上と驚異の燃費をみせた
同セグメントには全幅が1.9mを超える輸入SUVがひしめくなか、1890mmというサイズは日本の道路にマッチしており、細い路地でも感覚をつかみやすい。視界も見切りがいいので運転しやすい。
XD-ハイブリッドは直6ディーゼルHVの加速力が頼もしく、そのうえこのクラスとしては驚異的な燃費を叩き出す。エコドライブをしていたわけでもないのに、徳島と神戸往復のロング試乗で燃費計は17.0km/L以上を指していた。
停止状態からの発進をヘルプするモーターもスペック以上に力強い。高速道路でのコースティング(駆動しない惰性走行)では、エンジンの停止も始動もメーターを確認しなければわからないほど自然だった。
そして、インテリアはゆとりがあるうえ高級感が素晴らしい。大型タッチパネルなど流行の装備はむやみに選ばず、マツダらしいインターフェイスの扱いやすさも両立している。
乗り心地は確かに未だ改良の余地がある。しかし、CX-60に比べてかなり改善されているし、インテリアの質感の高さはそのネガを帳消しにできるレベルだ。コーナリング性能とハンドリングのスポーティさも、このサイズの高級SUVでは信じられないほど高い。すべてにおいて上品さが嬉しい。
●POINT採点チェック
・ハンドリング:8点
・加速性能:9点
・静粛性:8.5点
・内外装の質感:9.5点
・乗り心地:7.5点
・コストパフォーマンス:8点
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■斎藤聡氏の評価「精度の高さをそのままに、シャープさを抑えた上質な仕立て」
遮音材がふんだんに使われロードノイズがしっかり抑えられている。インテリアのデザインも上品。アクセルのレスポンスも上々だ
XDハイブリッドを推す。まず感心したのが静かなこと。遮音材がふんだんに使われロードノイズがしっかり抑えられている。乗り心地のよさや室内のデザインの品のよさを含め、上級SUVを感じさせる居心地のいい室内空間を作り出している。
室内の静かさとともに感心したのが運転のしやすさ。ハンドルを切り出した時のクルマの動きの精度感が高く、またアクセルの微妙な操作によく応えてくれる。
ステアリングとシートとペダルの配置がいいことも少なからず関係しているのだろう。ボディサイズが全長約5m、ホイールベースが3m超もあるのに、不思議な一体感がある。
操縦性についてもう少し言及しておくと、シャープさや鋭さは抑え気味。サスペンションの動きをよくすることでマイルドな乗り味、操縦感覚がある。
こうした味付けは、ともすると曖昧さにつながりやすいのだが、CX-80は遊びが少なく、マイルドが曖昧さにならないのだ。これが精度感の高さにつながっているのだろう。
エンジンはディーゼルとはいえ、直6エンジンのフィーリングが好ましい。低圧縮比ディ-ゼルということもあり吹けあがりがスムーズで、適度な振動がエンジンの存在感を主張しているところもよい。
●POINT採点チェック
・ハンドリング:8.5点
・加速性能:8点
・静粛性:9点
・内外装の質感:9点
・乗り心地:8.5点
・コストパフォーマンス:8点
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■渡辺陽一郎氏の評価「CX-60とほぼ同じ見た目ではユーザーも満足できない」
CX-60との違いが外見で分かりにくいのはちょっと物足りない
CX-80の全長とホイールベースはCX-60よりも250mm長く、室内を広げて3列目のシートを加えた。このボディの違いに基づく価格上昇を算出すると約55万円だ。
そうなるとCX-80のフロントマスクやインパネの形状がCX-60とほぼ同じでは物足りない。CX-80の外観はもう少し質を高めて、爪のような装飾の違い以外でも表現すべきだ。CX-60とほぼ同じ顔立ちでは、ユーザーも満足できない。
ディーゼルのマイルドハイブリッドも割高で、駆動方式や装備の違いを補正すると、正味価格差が約45万円に達する。トヨタにはストロングハイブリッドとノーマルエンジンの価格差を35万円に抑えた車種が多く、マイルドハイブリッドが45万円では割高だ。
CX-60にも同じことが当てはまる。そしてディーゼルのマイルドハイブリッドとガソリンのPHEVは全車が4WDだから、中心的な価格帯も550万~700万円と高い。
選ぶべきは電動機能のないディーゼルの2WDになり、価格は実用装備を充実させて安価なXD・Sパッケージが約440万円、質感と装備の水準が上昇して推奨度の高いXD・Lパッケージは約480万円、2列目シートの中央にコンソールボックスが備わる上級のXDエクスクルーシブモードが約520万円だ。
選ぶべき3つのグレードが約40万円刻みで用意されている。
●POINT採点チェック
・ハンドリング:7.5点
・加速性能:9点
・静粛性:7点
・内外装の質感:8点
・乗り心地:7点
・コストパフォーマンス:4.5点
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