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ヤマハがフォーミュラEに挑む意義。最大は”開発プロセス”を極めること……しかし市販車両に”FEボタン”搭載の可能性もアリ??

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ヤマハがフォーミュラEに挑む意義。最大は”開発プロセス”を極めること……しかし市販車両に”FEボタン”搭載の可能性もアリ??

 フォーミュラEに今季から挑んでいるヤマハ発動機。マイアミE-Prixでは乱戦を戦い抜き、ルーカス・ディ・グラッシの手によって初の表彰台を獲得した。

 そんなヤマハは、フォーミュラEに挑むことによってどんなことを目指すのか? 話を訊いた。

■フォーミュラEのエネルギー源、”電気”とはそもそも何なのか? 身近なモノにもあるFEとの共通点

 ローラ-ヤマハ・アプトのマシンに搭載されている電動パワートレインは、静岡県磐田市にあるヤマハの研究施設で開発・製造されている。この施設にはたくさんのテストベンチが用意されており、そのうち2基がモーターのテスト専用に充てられている。

 テストベンチの室内は、内燃エンジン(ICE)用のテストベンチと似たような作りである。しかしモーターは排気ガスを出さないため、屋外にガスを排出するためのダクトはなく、部屋の片隅には黒い巨大な箱が備え付けられている。

■モーターを公開すると、特性が分かってしまう??

 この巨大な箱の中にはコンデンサが備え付けられており、フォーミュラEのパワートレインで扱う大容量の電気を、ここから供給するのだという。またインバータも備えられ、モーター側から電気が逆流した場合に制御できるのだ。

 部屋の中央にはまさにテストベンチが据え置かれ、金属製の板の手前にパワートレインを接続する形になる。

 この日は実際にフォーミュラE用のパワートレインが取り付けられているベンチが公開されることはなかった。これは「モーターの大きさや形状がわかってしまうと、そのモーターの特性が分かってしまうから」なのだそうだ。

 なおヤマハでは、レースシミュレーションなどは行なっておらず、現在は出来上がったパワートレインをローラのテストベンチに持ち込み、シミュレータを行なっているという。ただヤマハでは現在ビークル用のテストベンチの設置準備を進めており、それが完成すればより実車に即したテストも行なわれることになりそうだ。

 ちなみにヤマハでは現在、早くも次世代フォーミュラEマシンGen4(2026-2027シーズンから導入予定)用のパワートレイン開発に注力しているようで、テストベンチの稼働時間のうち7割がこのGEN4用に充てられているという。

なぜヤマハはFEに挑むのか?

 さてそんなヤマハは、なぜフォーミュラEに挑むのか? そしてどんなことに繋げようとしているのか?

「一番は電気自動車(EV)です。あとはICEと電気を組み合わせたハイブリッドに活かしていくことになると思います」

 フォーミュラE開発統括の原隆氏はそう説明する。

「そしてエネルギーマネジメントと開発プロセスを極めるというところになると思います」

 フォーミュラE用コンポーネントの開発は、非常に細かい部分の差の積み重ねである。0.01%や0.001%というパフォーマンス向上を積み上げていき、それでコース上での差を競うのだ。ただそのためにやるべきこと、考えるべきことは無数にあり、その手法をまとめることができれば、他の領域にも活かせるはずだと原氏は言う。

「色々なツールを開発し、そのツールが凄いレベルまで来ると、他の商材にも展開できると思います」

「以前は、手計算でやっていたこともありました。その後エクセルに数値を入れて、少しずつ変えていくとうこともあったんです。でもそれでは、回数にしろ時間にしろ、限界があります。最適化ツールを使ったり、AIを使ったりするというのが、最近のトレンドになっています」

 ただこれは、何もEVの開発だけに寄与するものではない。エンジンなど、他のモノの開発にも十分に活かせるはずだと、原氏は言う。もちろん、テストベンチも含めてだ。

「実車でのテストを減らすというのは、ICEにも通じると思います。シミュレーションモデルのレベルをどんどん上げていくのは、重要なポイントだと思います」

「そういうことはガソリンエンジンの世界でも起こりつつあると思います。そういうところを、社内にもちゃんと展開しようと思います」

FE由来の技術、市販車に直接転用の可能性は?

 とはいえ、フォーミュラEで培われた技術が直接活かされた商品の登場にも期待したいところだ。その可能性はないのかと尋ねると、原氏は次のように語った。

「なんとかそういうモノを出したいと思いますけどね。例えば、”フォーミュラEボタン”が搭載された車両とか」

 そう原氏は語った。

「制御のきめ細かさとか、そういうところで電費を稼ぐとかはやっています。そういうエッセンスを入れて、自然とユーザーさんに体験していただくという形は実現しやすいと思います」

「弊社で言えば、二輪のEVでそういうことができるんじゃないかなと思います。モトクロスの世界では、EVがかなり出来てきたりしています。制御の部分は、かなり近いんですよね」

 EVは、エンジン車に比べて、トラクションのコントロールなどをきめ細かくできるのだという。

「ICEって、トラクションコントロールやABSがすごく遅いんですよ。でもEVならばそれが瞬時に出来てしまう。感じないくらいです。スクータータイプの車両にその機能を載せようとすると、CPUやハードウェアの面で高いスペックが必要なので現実的じゃないかもしれませんけど、基本思想を共有すれば近いモノができるかもしれません。そういう部分は、ユーザーの皆さんに一番体験していただけるのではないかと思います」

 それはいつ頃実現可能なモノなのか? そう尋ねると、原氏はこう明かした。

「難しいですが、2030~2035年頃にはと思います。でも、ソフトウェアの世界は比較的すぐトライできますから、もしかしたら1~2年後くらいに、マイナーチェンジとして入れるということも不可能ではないかもしれません」

「ただそういうダイレクトに繋がる部分よりも、基盤となる部分を強化するという方が、イメージとしては近いかもしれませんね」

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