現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 見た目は「良い方のターミネーター」 仏ルノー工場でタイヤを運ぶ人型ロボット『カルビン』(後編) 中国企業との競争に不可欠な存在

ここから本文です

見た目は「良い方のターミネーター」 仏ルノー工場でタイヤを運ぶ人型ロボット『カルビン』(後編) 中国企業との競争に不可欠な存在

掲載 1
見た目は「良い方のターミネーター」 仏ルノー工場でタイヤを運ぶ人型ロボット『カルビン』(後編) 中国企業との競争に不可欠な存在

滑らかに動く必要はない

カルビンはまるで酔っぱらいの学生のようにふらふら歩き、震えながらタイヤを持ち上げる。

【画像】デザイン一新した主力の電動ハッチバック【ルノー・メガーヌEテックを詳しく見る】 全46枚

筆者は、その動きがあまり洗練されていないように見えると指摘した。すると、カルビンの監督者は嫌そうな顔をしながら、これはまったく正常な動作であり、設計通りのものだときっぱりと告げた。

ふらついた歩みと震えは、タイヤが非常に重く掴みにくいことが一因だが、どちらも意図された通りの動きなのだという。単にバランスと効率の両面で最適なのであり、わざわざ動作を滑らかにするためにエネルギーを浪費する必要はないのだ。

今回の訪問の本来の目的は、実は「人間対機械」の対決に参加することだったが、カルビンはあまりにも貴重な存在なので、無謀な真似をするリスクは冒せないということになった。それでも構わない。ライン上にタイヤを1セット積み上げるだけの単純なレースなら、あのガタガタした機械に圧勝できる自信がある。

コンスタンザ氏によれば、それはその通りだが、まったくの的外れだという。

「人間の質とパワーは依然として優れています。しかし、現実問題として、人間はこのような身体に負担がかかる作業を長く続けられないのです。ご想像の通り、これを1分間に4回、8時間続けるというのは実に過酷な作業です。フランスには現在、200万件の重労働があり、さらに40万件の求人があります。欧州全体では1500万件に上ります。解決への道のりは長いですが、それがわたし達の最優先課題です」

共感を覚えるほど人間味がある

もしカルビンと競争することになったら、筆者は『うさぎとかめ』のうさぎのように最初に速さを見せつけた後、(油断して昼寝するのではなく)身体の痛みに耐えきれず倒れてしまうだろう。

奇妙なことに、筆者はカルビンに対して同情を覚えている。なんでも擬人化するのは人間の本性だが、ここでは人間と機械の間に真の近しさを感じる。コンスタンザ氏は、カルビンの監督を赤ちゃんの世話に例えている。そして、メタな話で恐縮だが、筆者はこの記事を書いている間、「彼女」という代名詞を何度も修正した。なぜなら、カルビンは驚くほど有機的な存在に感じられるからだ。

もしカルビンが自由の身になったらどうなるのか、つい考えてしまう。彼女の脳は人工知能なのだから、理論上は自分がやりたいことについて自分で決断できるはずだ。彼女は田舎へと逃げ出すだろうか。そしてピノキオのように、本物の少年、いや、少女として生きようとするだろうか。……筆者は疲れて頭がおかしくなったのだろうか?

コンスタンザ氏はこう安心させてくれた。「これは今年最も馬鹿げた質問の1つですが、まさにその通りです。問題は、LLM(大規模言語モデルAI)のようなニューラルネットワークに頼ると、その成功確率は十分には高くないということです」

後継機はターミネーター似?

カルビンの人工知能は、今のところルノーとワンダークラフトが許容できるミスの数によって制限されている。コンスタンザ氏は、「わたし達が目指しているエラー発生率は、1000件のタスクにつき1~2件です。人間は1000件に1件のミスを犯します。この工場で働くなら、最大でも2000件に1件まで。それはLLMよりはるかに優れています」と説明する。

そこでコンスタンザ氏は、カルビンがまもなく退役し、より高性能なモデルに置き換えられるという知らせを伝えた。少し気の毒に思わざるを得ないが、そういうものだろう。

現在稼働中のカルビンは「40」というモデルで、ルノーの社内チームによってさらに高度なバージョンが開発されている。現行モデルを進化させたもので、腰回りが細く、足の形状も変わり、より重い荷物を運ぶのに最適化されるという。

コンスタンザ氏によれば、見た目は少し『ターミネーター』に似ているという。ただし、「殺戮を企てているバージョンではなく、良い方のターミネーターです」とのこと。

欧州の製造業が必要とする起爆剤

カルビンの後継機は、今後数か月のうちにフランスとスペインの各工場で導入される予定だ。今年末までに10台が稼働し、2027年末までに350台へ増強される見込みだ。

筆者が見た限りでは、近い将来、工場が完全にカルビンだけで運営される様子を想像するのは難しい。しかし、このロボットが迅速に導入され、改良を重ねていることを考えれば、欧州の製造業を守る上で極めて重要な役割を果たす可能性もある。

何しろ、このロボットは8月に1か月のバカンス休暇を取る必要もないし、病気になることもない。上司に反旗を翻してストライキを行うこともない。ロボットは、欧州とは異なる倫理観や財務的ルールに従う中国と産業力で対抗するために必要とされている起爆剤となるかもしれない。

雇用に関しては、ルノーはロボットによって職を失った従業員を再教育すると示唆している。だが、ロボットの有用性がますます高まる中で、それがどれほど現実的なのは時が経ってみないとわからない。

今のところ、製造業に劇的な変化が訪れようとしており、この弱々しく見える、よろよろと歩く機械がその最前線に立っている。

文:AUTOCAR JAPAN AUTOCAR JAPAN

関連タグ

【キャンペーン】8月の毎週金・土・日はガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

フォード、2万8350ドルの低価格ピックアップトラック『ファゾム』来年発売へ トヨタRAV4より広い室内
フォード、2万8350ドルの低価格ピックアップトラック『ファゾム』来年発売へ トヨタRAV4より広い室内
AUTOCAR JAPAN
「手頃な価格に感動を加える」 フィアット・トポリーノがバチカン市国で正式採用(後編) 小さいがゆえの利点と欠点
「手頃な価格に感動を加える」 フィアット・トポリーノがバチカン市国で正式採用(後編) 小さいがゆえの利点と欠点
AUTOCAR JAPAN
新たな自動車会社『EMT』打越CMO単独インタビュー(前編) このままじゃダメだという意識 ゼロスタートだからできること
新たな自動車会社『EMT』打越CMO単独インタビュー(前編) このままじゃダメだという意識 ゼロスタートだからできること
AUTOCAR JAPAN
こんな凄い自動車メーカーが歴史の荒波で埋もれてしまった! チェコの「タトラ」という悲運の天才メーカー
こんな凄い自動車メーカーが歴史の荒波で埋もれてしまった! チェコの「タトラ」という悲運の天才メーカー
WEB CARTOP
チェリーやオートバックスを前面に出さない理由とは 新たな自動車会社『EMT』打越CMO単独インタビュー(後編) 自動車メーカーでもインポーターでもない
チェリーやオートバックスを前面に出さない理由とは 新たな自動車会社『EMT』打越CMO単独インタビュー(後編) 自動車メーカーでもインポーターでもない
AUTOCAR JAPAN
所有して四半世紀以上、オーナー渡辺敏史が語るFD3S型マツダRX-7への愛(前編) 今や日本一有名な個体との邂逅
所有して四半世紀以上、オーナー渡辺敏史が語るFD3S型マツダRX-7への愛(前編) 今や日本一有名な個体との邂逅
AUTOCAR JAPAN
「中国を手放すのか?」 テスラに浮上した巨大転換! 世界生産の5割を支える拠点で始まった大変化とは
「中国を手放すのか?」 テスラに浮上した巨大転換! 世界生産の5割を支える拠点で始まった大変化とは
Merkmal
じつは「ボンゴ」の末裔? “電動ハイエース”の座を狙う韓国の新型EVバン 生産拠点からスゴかった!
じつは「ボンゴ」の末裔? “電動ハイエース”の座を狙う韓国の新型EVバン 生産拠点からスゴかった!
乗りものニュース
マクラーレンP1を凌駕するパワーウエイトレシオ ドンカーブート P24 RS(1) ロータス・セブンの面影なし V6ツインターボはフォードGT譲り
マクラーレンP1を凌駕するパワーウエイトレシオ ドンカーブート P24 RS(1) ロータス・セブンの面影なし V6ツインターボはフォードGT譲り
AUTOCAR JAPAN
レンジローバー、特注モデルの価格に「上限なし」 高収益のビスポーク事業に注力 高度なカスタマイズで1億円超えも?
レンジローバー、特注モデルの価格に「上限なし」 高収益のビスポーク事業に注力 高度なカスタマイズで1億円超えも?
AUTOCAR JAPAN
水素電気自動車『新型ヒョンデ・ネッソ』を通じて知った理想と現実 世界で最初に市販化し、取り組むのは一気通貫のビジネスプラットフォーム
水素電気自動車『新型ヒョンデ・ネッソ』を通じて知った理想と現実 世界で最初に市販化し、取り組むのは一気通貫のビジネスプラットフォーム
AUTOCAR JAPAN
ターボにするかスーパーチャージャーにするか ダイハツ・シャレード GTti & フォルクスワーゲン・ポロ G40(1) もっと熱かった頃の2台
ターボにするかスーパーチャージャーにするか ダイハツ・シャレード GTti & フォルクスワーゲン・ポロ G40(1) もっと熱かった頃の2台
AUTOCAR JAPAN
ベースは「7.5L V8でFF」のオールズモビル AQC ジェットウェイ707(1) ストレッチ・リムジンへ描いた明るい未来
ベースは「7.5L V8でFF」のオールズモビル AQC ジェットウェイ707(1) ストレッチ・リムジンへ描いた明るい未来
AUTOCAR JAPAN
【輸入車市場における活発な日本メーカーの動き】今後も大幅変動か 2026年上半期の輸入車市場ランキング メルセデス・ベンツは陥落
【輸入車市場における活発な日本メーカーの動き】今後も大幅変動か 2026年上半期の輸入車市場ランキング メルセデス・ベンツは陥落
AUTOCAR JAPAN
「ロータリーを諦めない」という託された想い オーナー渡辺敏史が語るFD3S型マツダRX-7への愛(後編) 伝わってくる不思議な情念
「ロータリーを諦めない」という託された想い オーナー渡辺敏史が語るFD3S型マツダRX-7への愛(後編) 伝わってくる不思議な情念
AUTOCAR JAPAN
「美しいデザインは今も色褪せない…」国産車で初の280馬力を達成。現在も高い人気を誇る37年前の日産のスポーツカー[Z32型 フェアレディZ]
「美しいデザインは今も色褪せない…」国産車で初の280馬力を達成。現在も高い人気を誇る37年前の日産のスポーツカー[Z32型 フェアレディZ]
月刊自家用車WEB
最小のクルマで、最小の国を走る フィアット・トポリーノがバチカン市国で正式採用(前編) マイクロモビリティが秘めた可能性
最小のクルマで、最小の国を走る フィアット・トポリーノがバチカン市国で正式採用(前編) マイクロモビリティが秘めた可能性
AUTOCAR JAPAN
自動車業界の人材育成へ 日産校の学生が技術を結集、フォーミュラEVに挑む
自動車業界の人材育成へ 日産校の学生が技術を結集、フォーミュラEVに挑む
くるまのニュース

みんなのコメント

1件
  • kvg********
    >滑らかに動く必要はない
    人型である必要もないと思う
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村