信号機の無い横断歩道で歩行者が居た場合は、渡る人を優先しなければいけません。これは、道路交通法でも定められているルールですが、依然として多くのドライバーが守っていないのが現状です。
海外の交通事情では、歩行者の優先が徹底されているといいますが、なぜ日本人は交通ルールを守れないのでしょうか。
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横断歩道のある道路を横断しようとしている歩行者がいるのに、クルマが歩行者の横断を優先せずに走行することは道路交通法第38条に違反する行為ですが、実際には8割以上のクルマが一時停止していません。
道路交通法第38条には「横断歩道を横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない」として、「横断歩道における歩行者優先」が定められています。
そんななか、全国でロードサービスなどをおこなうJAFは、2016年から全国の「信号機の無い横断歩道」における歩行者優先について実態調査を実施しています。
2019年の調査は、8月15日から8月29日にかけての平日、各都道府県2か所ずつ、信号機の無い横断歩道・全国合計94か所で通過する車両(9730台)を対象にした結果、歩行者が横断歩道を渡ろうとしている際に一時停止したクルマは、1660台(17.1%)でした。
この数字は、2016年調査の全国平均7.6%、2017年の8.5%、2018年の8.6%と比べてかなり改善したものの、依然として8割以上のクルマが停止していないことを示しています。
2016年の調査以来、常に高い一時停止率を出してきた長野県においては、今回の調査でも68.6%と、全国でもっとも法令遵守率が高い結果となりました。
ベスト3は長野県に次いで静岡県(52.8%)、兵庫県(43.2%)です。もっとも低かったのは三重県の3.4%となり、次いで青森県(4.4%)、京都府(5.0%)でした。
では、なぜ多くのドライバーは、信号機の無い歩行者のいる横断歩道で一時停止しないのでしょうか。警視庁の広報部はその理由について次のように説明しています。
「一時停止に関する取り締まりの際、違反者が横断歩道で止まらなかった理由(供述)として『急いでいた』『歩行者に気づかなかった』というものが挙げられていました」
また、JAFが2017年6月におこなったアンケート調査では、「自車が停止しても対向車が停止せず危ないから(44.9%)」、「後続車がきておらず、自車が通り過ぎれば歩行者は渡れると思うから(41.1%)」、「横断歩道に歩行者がいても渡るかどうか判らないから(38.4%)」といった回答が多かったとしています。
※ ※ ※
信号機が設置されていない横断歩道において、自車の走行車線側だけでなく対向車線側の歩行者にも注意を払い、歩行者がいる場合にはまず減速(徐行)してその動きを注視し、一時停止しましょう。
■止まらないクルマ、その警視庁の対応策とは
東京都では、2019年にワースト5の5.8%(2018年は2.1%)と良い結果ではなかったことを受けて、警視庁は「信号機のない横断歩道における歩行者優先等を徹底するための広報・啓発活動強化について」を2018年に通達しています。
具体的な活動内容について、警視庁広報部は以下のように説明します。
「通達を受けて警視庁では、『信号機のない横断歩道における歩行者優先等を徹底するための広報啓発強化期間』を定め、警察署ごとに管内の状況にあわせた広報啓発活動を実施しました。
サインカーを使用して歩行車優先のメッセージを映すともに、通行する車両に対して、歩行者保護のチラシを配布、歩行者に横断歩道を正しく渡るなどの交通ルールを遵守するよう呼びかけるチラシを配布しました。
ほかにも、年間を通じて、都内各所で実施している交通安全講習会において、歩行者保護を呼びかけ、ももいろクローバーZを交通安全広報大使に委嘱し、歩行者保護に焦点を当てたTOKYOルールの実践を掲げて、広報啓発活動をしております」
また、警視庁では取り締まりを強化しており、前出の警視庁広報部は、「横断歩行者妨害等違反の取り締まりを強化した結果、取り締まり件数が増加しました。2019年8月末現在の取り締まり件数は、2018年の取り締まり件数をすでに上まわっています」と話します。
道路交通法38条に違反をした場合には、「横断歩行者等妨害等」とみなされ反則金は普通車(9000円)、大型車(1万2000円)、二輪車(7000円)、点数は2点です。
※ ※ ※
なお、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、警視庁広報部は次のように話します。
「都心部や湾岸地域の開発にともなう、工事関係車両および、物流車両の通行量のさらなる増加が予想され、貨物車関与の交通事故の発生が懸念されることから、貨物車の交差点違反などの取り締まりを強化しております。
安全で快適な交通社会を実現するため、引き続き悪質性、危険性、及び迷惑性の高い交通違反に重点をおいた、交通事故抑止に資する指導、取り締まりを推進いたします」
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