日産自動車は10月8日の取締役会で、内田誠専務執行役員が社長兼CEO(最高経営責任者)に昇格する人事を決定したと発表した。同時にグループの三菱自動車のアシュワニ・グプタCOO(最高執行責任者)が日産のCOO、日産の関潤専務執行役員が副COOにそれぞれ就任する。3人とも遅くとも2020年1月1日付けの就任を目指す。経営不振に陥っている日産は、生産能力の削減や人員削減などのリストラを本格化する予定。独裁的な経営者だったカルロス・ゴーン元会長の退場後、3人による集団指導体制で逆風を乗り切る。
「取締役会は内田氏が今後、日産が事業を前進させるのにふさわしいリーダーだと判断した」(日産・木村康取締役会議長)。
日産のトップは誰の手に? 「ポスト西川」が簡単に決まらない複雑な事情
日産は西川廣人氏が株価連動型インセンティブ受領権(SAR)で報酬を不正に上乗せしていた問題などから9月16日付けで社長兼CEOを辞任し、指名委員会が中心となって10月末までの後任の選定を目指して議論してきた。西川氏がトップ辞任を受け入れた9月9日時点で後任の候補者は6人にまで絞り込んでおり、「自動車産業を分かっていることを意識して詳細をインタビューし」(豊田正和指名委員会委員長・社外取締役)、最終的に海外経験が豊富でアライアンスを重視する内田氏に決定した。内田氏は父親が大手航空会社に勤務していたことから小さいころから海外生活が長い。指名委員会では内田氏の社長兼CEO、グプタ氏のCOO、関氏の副COOを決定、取締役会に諮り「全員の総意で決めた」(木村議長)という。
独裁経営を成長をけん引してきたゴーン体制から、3人による集団指導体制に移行することについては「困難を乗り越えて世界をリードする時に多様性のあるリーダーシップが望ましい」(豊田社外取締役)と判断した。3人の共通点として国際人で、アライアンスとスピードを重視していることを挙げる。
内田氏は現在、中国の合弁会社である東風汽車の総裁、グプタ氏は三菱自のCOOを務めることから、今後、東風汽車、三菱自それぞれの企業の了承を得てから正式な手続きに入る。1月までに臨時株主総会を開いて、3人を取締役に選任する。西川氏辞任後、CEO代行を務めている山内康裕氏の処遇は今後、検討する。
日産は、ゴーン元会長時代に進めてきたインセンティブ(販売奨励金)を使った無理な拡大路線から方針を転換していることから米国や日本での販売が低迷、2019年4-6月期の連結営業利益が前年同期比99%減の16億円になるなど、業績が大幅に悪化。このため、2022年度までに世界でグループ全体の従業員の10%に当たる1万2500人を削減、生産ラインの停止や工場閉鎖などで生産能力も60万台分を削減するなど、構造改革を推進している。
業績が悪化してもカリスマ経営者による強いリーダーシップによって危機を乗り越えてきた日産。業績悪化に加え、大きな変革期を迎えている自動車業界を、集団指導体制で再び成長に転じることができるか。
《プロフィール》
内田誠氏
1991年に日商岩井を経て、2003年に日産自動車に入社。2014年プログラム・ダイレクター、2016年常務執行役員アライアンス購買担当、2018年専務執行役員・東風汽車の総裁、2019年5月に専務執行役員中国マネジメントコミッティ議長・東風汽車の総裁。
アシュワニ・グプタ氏
ホンダなどを経て2006年にルノー・インドに入社してルノー・日産自動車アライアンスの購買部門を担当。2009年にルノー・日産B.V.グローバル購買担当デピュティゼネラルマネージャー、2011年に日産・ダットサンプロジェクト担当グローバルプログラムダイレクター。2014年ルノー・ライトコマーシャルヴィークル部門バイスプレジデント、2018年にルノー・日産・三菱自アライアンス ライトコマーシャルヴィークルビジネスアライアンスシニアバイスプレジデントを経て2019年4月に三菱自動車COOに就任。
1970年9月生まれ、49歳。インド出身。
関潤氏
1986年日産に入社、パワートレイン生産技術本部などを経て、2012年に執行役員、2013年に東風汽車の副総裁、2014年に日産の常務執行役員・中国マネジメントコミッティ担当兼東風汽車の総裁、2014年に専務執行役員、2018年に専務執行役員、アライアンスSVP、生産技術担当、2019年5月専務執行役員、パフォーマンスリカバリー担当。
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