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傷も煙も、生き様になる。マッド・マイク親子が走る、日本ドリフトカルチャーの聖地

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傷も煙も、生き様になる。マッド・マイク親子が走る、日本ドリフトカルチャーの聖地

◆全開ロータリーサウンドが日本のドリフトシーンに戻ってきた!
地面すれすれの、低い車高のクルマが続々と集まってくる。擦れたフェンダー、タイヤの焼ける匂い、立ち上がる白煙。5月4日に奥伊吹で開催されたイベント「DoriDore 2026」(以下、ドリドレ)の1シーンだ。

そしてそこには、はるばるニュージーランドからやってきたドリフト界の有名選手、マッド・マイク(マイク・ウィデット)選手と、彼の息子リンク(リンカーン・ウィデット)選手の姿もあった。雨風が混じる不穏な天候だったものの、会場はドリフト走行会というよりは、巨大な文化祭のような空気感で賑わっていた。

【画像全74枚】

このイベントで真っ先に感じたのは、観客とドライバーの距離がとても近いこと。テントでマシンと共に待機する選手の元には、ひっきりなしにファンが訪れる。そして言葉を交わし、写真撮影をしたり、マシンを身近に見たりすることができる。それに、いざドリフトフィールドへ繰り出す際には、すぐそこにニンジン棒(オレンジの誘導灯)を振り回して応援する観客が、ずらりと並んでいる光景が新鮮だった。

マイク選手は「ドリドレいちばん!!!!!」と日本語で繰り返す。

彼にその理由を尋ねると、「このイベントは、誰もが自分自身とクルマのキャラクターを全面に出すことができる場だからさ。そして、順位争いをするためでもなく、皆が純粋にドリフトを楽しめるっていうところが本当に好きなんだ。ファンとの距離もめちゃくちゃ近いしね」と話してくれた。

速さだけではないドリフトの魅力。今回マイク選手の口から語られたのは、そんな彼の「生き様としての物語」だった。

◆世界的なドリフトスター”MAD MIKE”という存在
7歳頃にはすでに、自転車で飛んだり跳ねたりしていたという少年マイク。彼の原点となるモトクロス競技の片鱗が芽を出していたのだろう。モトクロス現役時代に、そのアグレッシブさが話題となり「MAD MIKE(狂気のマイク、のような意)」の異名で知られるようになった。

母子家庭で育ち、家族の中にモータースポーツ関係者は誰もいない環境だったが、彼はやがてストリートドリフトにも興味を持ち始めた。仲間とクルマを改造しては、公道でドリフトをする。何度も警察とトラブルになったと、彼は当時を振り返る。

「そんな時、日本のOption DVDで今井陽一、野村謙といった選手達のドリフトを観て。まさかこれがスポーツとして認められるなんて!と衝撃を受けたんだ。これなら自分にもできると思って嬉しくなったよ」

自分も日本でドリフトをしたい。そう思い立って、金目になる家財道具を一式売り払って、RX-7を購入した。警察に追われたこともある若者が、スポーツとしての日本のドリフト文化に救われた瞬間だった。そして2007年以降、母国と日本を含む世界の各地で精力的にドリフト競技に参加している。

マイク選手はさらに、自分には「恐怖への依存がある」と認めた。アクセルを踏み入れる瞬間、怖さが絶対的にある。

「怖くないわけじゃない。むしろ、ちゃんと怖いんだ。でも、その感覚が好きなんだよ」壁際数センチへとマシンを滑り込ませる時。視界の先にガードレールが迫る時。彼はいつも、恐怖とアドレナリンの境界線にいるという。

そう語る彼の姿は、ただ危険を楽しむ無鉄砲なドライバーというよりも、恐怖と共存している人間そのものだった。

◆JDMカルチャーを纏った唯一無二のRX-7、HKSコラボの『BATRUP』
マイク選手の周囲には、常にロータリーエンジンの気配がある。彼にとってマツダ『RX-7』は、単なる愛車ではない。少年時代、モトクロスバイクの2ストロークバイクのサウンドに夢中だった彼は、ロータリー特有の甲高いサウンドやオイルの匂いに、どこか同じ種類の高揚感を見出しているという。

「昔のニュージーランドでは、ロータリーは安かったんだ。うるさいし、嫌う人も多かった。でも僕は、人とは違うものが好きだった」

今回ドリドレとGUNSAI ATTACKへ持ち込まれ、TCP MAGICでビルドされたFD3S型RX-7は、彼が若き日に手に入れた最初の1台ではない。しかし、何台乗り継いでもなお、彼はRX-7という存在へ帰ってくる。そのRX-7を支えているのは、メイドインジャパンの逸材ばかりだ。

今回はHKSとのコラボで、パワートレイン系には多数のパーツを装着。「GT 7095_BB SPL」タービンをはじめ、「スペシャルセットアップキット FOR FD3S 13B」「Vマウントインタークーラー」や「スーパーファイヤー レーシングコイル プロ」、「ハイパワー マフラー」「レーシング SQV(BOV)」でセットアップされた。漆黒のボディの中には、2ローターの13Bベースながら最大約600馬力を発生する強烈なロータリーエンジンが搭載されており、13Bらしい美しいロータリーターボのサウンドを奏でる。

足元には、WORKの3ピースホイール「VS-KF#」を装着。フロント:18x10J-30/リア:18x10.5J-36という大胆なサイズに、ブリリアントシルバーブラックのカラーが華を添える。強烈なマイナスインセットが魅せるリムの深さが、足元から存在感を醸し出す。2000年代のJDMシーンを象徴したVS-KFのDNAを受け継ぐそのホイールは、日本のドリフトカルチャーにどっぷりハマったマイク選手のRX-7に、驚くほど自然に馴染んでいた。

また、TOYO TIRES(トーヨータイヤ)についてマイク選手は、「どんな速度域でも安心して踏んでいける」と全幅の信頼を寄せる。壁のすれすれを駆け抜け、次の景色が見えないまま飛び込んでいく彼の走行は、その安心感の上に成り立っている。

だが、そのRX-7は決して、お金をかけて綺麗に飾られたショーカーではない。フェンダーには無数の痕が刻まれ、外装には、歴代マシン(JAPBUL、ICEBUL、HUMBUL)から受け継がれた傷だらけのパネルも使われている。

「これは”ミサイル”みたいなクルマなんだ」そう言って誇らしげに笑うマイク選手のマシンには、速さだけではない価値観が宿っていた。恐怖を受け入れながら、さらなる限界へ踏み込んでいく。彼の生き方そのものが刻み込まれているようだった。

◆GUNSAI ATTACKに漂う、むき出しの緊張感
その翌週5月10日に、舞台は群馬サイクルスポーツセンター、通称「群サイ」での「GUNSAI ATTACK」へ移った。ドリドレが、観客とドライバーが入り混じる祝祭のような空気だとすれば、群サイアタックにはまた別の熱がある。山の斜面に沿って続くコース。ブラインドコーナーの先へ、ドライバーたちは白煙を上げながら吸い込まれていく。見ているこちらまで手に汗握るような、スリル満点のライブショーだ。

「群サイはクレイジーだよ。何が待ち受けているのか分からない、危険なコースだからね。でも、やっぱりその緊張感が好きなんだ」

「恐怖への依存」ーー以前、彼がそう表現した感覚が、この場所ではより生々しく伝わってきた。観客が息を呑むような激しいカーブの道でも、彼は迷いなくアクセルを踏み続ける。その姿には、勝敗なんてものを超越した、”自分自身の感覚を信じて解放している人間”の、命の迫力を感じた。

◆親から子へと受け継がれていく”Style”

一方、ドリドレ会場で印象的だったのは、もう1人のウィデットだった。マイク選手の息子、リンク選手はまだ10代とは思えないほど落ち着いた空気を纏っている。幼い頃からクルマに囲まれて育ち「歩く前から運転していた」と笑うリンク選手。現在はニュージーランドで父親のショップを手伝いながら、自らもドリフトドライバーとして経験を積み重ねている。

もちろん、”MAD MIKEの息子”として見られるプレッシャーもある。「周囲から期待されることは多いと感じることはある。でも、結局は自分が楽しむことが一番大事だと思う」そう語る姿に、どこか父親と共通する空気を感じた。だが、リンク選手がドリフトを一言で表現した言葉は、少し意外だった。

「Style」

彼は迷わずそう答えた。「クルマも走り方も、みんな違う。ドリフトって、自分自身を表現するものだと思うんです」彼が操るND型ロードスターにもその”Style"は色濃く表れていた。

搭載されているのは、約900馬力を生み出す6ローターエンジン。軽量なボディと極端に短いホイールベースの組み合わせは非常にピーキーで、本人も「簡単なクルマじゃない」と苦笑する。それでも彼は、その暴れ馬のようなマシンをどこか楽しそうに振り回していた。

ボディを彩るデジカモ柄は、リンク選手が生まれた年に父が乗っていたマシンへのオマージュだという。そこへトーヨータイヤの”Electric Blue"をイメージしたブルーフレームが組み合わされ、独特の存在感を放っていた。

「日本のドリフトスタイルが好きなんです。アグレッシブで、観客との距離が近くて、すごく迫力があるから」そう語るリンク選手の姿からは、"MAD MIKEの息子"と言う肩書き以上に、自分自身のスタイルを模索している、次世代の若きドライバーとしての熱量が伝わってきた。

◆情熱はお金よりも強い、ただ滑らせて走ることではないドリフトの深さ
タイヤスモークが晴れたあとも、耳の奥にはロータリーサウンドが響き続けていた。

ドリドレの祝祭感。群サイのむき出しの緊張感。全く違う空気を持つ2つのイベントだったが、そこには共通するものがあった。順位や速さといった規準を超えた、クルマの作り方、走らせ方、魅せ方、そして、その人自身の生き方の表現。ドリフトとは、本来そういうものなのかもしれない。

かつてOption DVDに新しい世界を見せられ、人生を変えられたニュージーランドの少年は、今や日本製のパーツと共に世界を走り、その息子もまた、ドリフトカルチャーへ身を投じている。TOYO TIRES、HKS、WORK WHEELS、BRIDE、Project μ、NGK――それらもまた、単なるパーツブランドではなく、情熱を持つ人を支え続けてきた、日本のドリフト文化そのものの一部なのだろう。

「Passion is more powerful than money.」

情熱は、お金よりも強い。自らの生き方でそれを証明し続けているマイク選手の言葉が、私の心にしっかりと痕を刻んだ。

文:レスポンス 上之園真以
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