スバルの人気SUV「クロストレック」で、看板ユニット「e-BOXER」の受注終了が発表された。主力グレード消失の裏には、好調な「S:HEV」への移行や厳格な燃費規制、そして走りのDNAを守るスバルの決断があった。今すぐ買うべきか、新展開を待つべきか?話題の真相に迫る。
文: 小林 淳
▶▶▶写真はこちら|スバル「クロストレック」現行e-BOXERモデル+WRX(画像8枚)
スバル・クロストレックに異変が発生中!
スバルのラインナップにおいて、コンパクトなボディと本格的な悪路走破性を兼ね備えたエントリーSUVとして、独自のポジションを確立しているクロストレック。現行型は2023年のデビュー以来、コンスタントに売れ続けているスバルの人気モデルのひとつだ。
そんなクロストレックが、この夏から大きな変化が生じることになる。スバルの公式ウェブサイトにおいて、これまでパワートレーンの主力であった2リッターエンジン+モーターのマイルドハイブリッド「e-BOXER」の展開を終了し、2026年9月14日以降は新規受注を受け付けない、と発表されたのだ。
長らくe-BOXERはクロストレックの看板ユニットとして販売に貢献してきた。これを失うことは主力グレードを失うカタチにもなるわけだが、この決定の裏には自動車業界全体を覆う規制問題と、スバルの次世代電動化戦略が色濃く影響している。
新工場立ち上げで加速するスバルの電動化
まず注目したいのは、より走行性能と環境性能を高めた2.5リッターエンジン+モーターのストロングハイブリッド「S:HEV」の普及が順調に進んでいることだ。
2025年にデビューした現行フォレスターから導入がスタートしたS:HEVだが、これがメーカーの予想を上回る好調ぶりを見せている。多くのスバルユーザーにとって、S:HEVがもたらす圧倒的な静粛性やパワフルな走りは魅力的なようで、フォレスターでは従来のターボ車と比較すると価格が30万円以上高くなるにもかかわらず、あえてS:HEV車を指名買いするユーザーが多い状況だ。
導入初期は供給が間に合わず、S:HEV車の納期が1年を超えるタイミングもあったのだが、S:HEVユニットの生産拠点である新工場(スバル北本工場)が本格立ち上げしたことで供給体制も整い、納期の遅延や供給不足は和らいでいる。
このユーザーからの支持と確固たる供給体制が確立したことで、スバルはS:HEVを次世代の主力パワーユニットとして推し進める決断を下すことができたのだろう。
さらに従来のe-BOXERが、他社を含めた最新ハイブリッドと比べると、性能面での物足りなさがあることも外せない。
e-BOXERは、エンジン走行を主軸に小出力モーターがアシストを行うマイルドハイブリッドを採用。スムーズな出足などには一定の貢献があるものの、電動化で強く求められる環境性能や燃費の改善は限定的であり、ハイブリッドを名乗りつつも実用燃費の面ではユーザーの期待に十分に応えきれていなかった。
そんな理由もあって、世界的に排ガス&燃費規制が厳格化するなか、スバルとしては電動化の軸足を本格的なストロングハイブリッドであるS:HEVへ一本化せざるを得ないと判断したのだろう。
メーカーを追い詰めるCAFE規制の影響も
また、自動車業界全体が直面する「CAFE(Corporate Average Fuel Efficiency:企業別平均燃費)規制」の存在も大きいだろう。
CAFE規制とは、出荷する車種単体ではなく、メーカーが年間で販売する全車種の平均燃費(または平均CO2排出量)で目標達成を義務付ける制度になる。
かつてのように燃費の悪いスポーツカーも、燃費の良い小型車をたくさん売って相殺すれば良い、という考えは通用せず、仮に目標値に達しなければ、海外市場を中心に多額の罰金が課されるリスクを負う。
そのため、現在の自動車メーカーにとっての最優先課題は、バッテリーEVやストロングハイブリッドのような燃費の貯金を稼げる高効率なモデルを数多く売り、メーカー全体の平均値を引き上げることにある。
この環境貯金に余裕を作ることで、初めてファンが熱望するような高出力な純ガソリンモデルや、スバルで言えば、将来展開されるであろう次期WRXのようなスポーツモデルを市場に送り出す「枠」が確保できる仕組みだ。
スバルは現在、クロストレックのみならずフォレスターやレヴォーグレイバックなど、主要のクロスオーバーSUVへS:HEVの投入を進めている。自社のアイデンティティである「走りのDNA」を生き残らせるためにも、量販車種であるクロストレックのS:HEV化は避けて通れなかったのだろう。
9月以降の新グレード展開はどうなるのか
ただ、全車をS:HEVへ一本化することには販売面で大きな課題も残る。今年9月以降の具体的なグレード展開は不透明だが、一定の台数を売りたいクロストレックにとっては、S:HEV車だけで良いのか?という問題が出てくる。正直、高すぎて手が届かないという声が出そうだ。
クロストレックは、その上級モデルになるフォレスターやレイバックとの差別化を図るうえで、扱いやすいサイズ感や、軽量で軽快なフットワーク、そして300万円前後から狙える安価で買いやすいエントリーモデルとしての役割も持たされている。もし仮に全車が2.5LのS:HEV車のみになってしまえば、スタート価格は大きく跳ね上がってしまう(S:HEVで最も安価なPremium S:HEVでも383万3500円から)。スバルのグローバル販売を支える重要車種である以上、これまでのe-BOXER車に近いグレードが必要だろう。
いずれにせよ今回のe-BOXERの廃止は、スバルが厳格な環境規制を生き抜き、走りの楽しさを守り続けるための攻めの再編と言える。
この夏以降にスバルのクロスオーバーSUVの導入を検討しているユーザーは、まさに今が悩みどころ。
現行e-BOXERの扱いやすい走りや価格帯に魅力を感じているのであれば、在庫や注文枠が残っている段階で早急にディーラーへ赴くべき。一方で、再編される新たなグレード展開を見極めたい、S:HEVを含めたラインナップの最適化(装備を控えめにした戦略グレードが発売される可能性は大いにありえる)に期待したいと考えているならば、9月以降の動きを待って判断するのが賢明だろう。
スバル クロストレック リミテッド 主要諸元
●全長×全幅×全高:4480×1800×1575mm
●ホイールベース:2670mm
●車両重量:1560kg<1580kg>
●エンジン:対4 DOHC+モーター
●総排気量:1995cc
●最高出力:107kW(145ps)/6000rpm
●最大トルク:188Nm(19.2kgm)/4000rpm
●モーター最高出力:10kW(13.6ps)
●モーター最大トルク:65Nm(6.6kgm)
●トランスミッション:リニアトロニックCVT
●駆動方式:縦置きFF<フロント縦置き4WD>
●燃料・タンク容量:レギュラー・48L
●WLTCモード燃費:16.4km/L<15.8km/L>
●タイヤサイズ:225/55R18(オールシーズン)
●車両価格(税込):323万4000円<344万8500円>
※< >内は4WD
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みんなのコメント
そうなると、e-Boxerと純エンジンの2本立てのインプレッサはどうなるんだろう?
クロストレックと同じになる? でも、純エンジン版の価格も捨てがたいし。