ドゥカティ唯一の空冷エンジン搭載モデル
久しぶりに試乗したドゥカティのスクランブラー「ICON(アイコン)」は、エンジンの良さが際立つバイクでした。現在ドゥカティの中で唯一の空冷Lツインエンジンを搭載するのが「スクランブラー」シリーズです。1980年代からひたすら熟成を続けてきたこの伝統のエンジンは、バイブレーションやサウンドがライダーを走る気にさせ、さらにそれがドゥカティらしさにつながっているのです。
【画像】カッコよすぎ!ドゥカティ「スクランブラー」シリーズを画像で見る(18枚)
今、エンジンの存在感を感じさせるバイクは少なくなっていますが、スクランブラーは別格。スロットルを開けた際のマシンとの対話がとても楽しいバイクです。筆者(小川勤)が久しぶりに乗った排気量803ccの空冷Lツインは、ドゥカティがまだまだ大切に育んでいることが伝わってきました。
スクランブラーは、2014年のWDW(ワールド・ドゥカティ・ウィーク)で53年ぶりにその車名を復活させ、同年インターモトで正式発表。2015年より発売を開始し、すでに10年に渡って進化しているモデルです。
一見、流行りのネオクラシックに映りますが、懐古的と言うよりはモダンさを大切にしたデザインで、ファンはそのスタイルを見て無限に広がる楽しみを想像し、自身のライフスタイルを自由に反映させることができるのです。
ポップにもシックにも、ライフスタイルを投影できる
そんなスクランブラーは2023年に第2世代(2G)に進化。エンジン単体で2.5kgの軽量化を果たし、ライディングモードは「スポーツ」と「ロード」を用意。シャシーも一新され、リアサスペンションはセンターマウント(先代までは左サイドにマウント)となりました。
現在のラインナップは、「アイコン」、「フル・スロットル」、「ナイト・シフト」、「10°アニバーサリオ・リゾマ・エディション」、「アイコン・ダーク」となっています。
個人的には最近登場した「10°アニバーサリオ・リゾマ・エディション」がとても気に入っており、ドゥカティらしい高級感とイタリアンならではのオリジナリティが素敵な仕上がりとなっています。
もちろん車種によって乗り味に違いはありますが、現在のラインナップを見ると前後ホイールサイズは全て共通のため、見た目の好みで選んで良いと思います。
今回試乗したのは、最もポップでベーシックな「アイコン」です。ちなみに「アイコン」はオプションでタンクカバーの着せ替えが可能で、なんと9色ものカラーから選べます。
スクランブラーの魅力は難しさを感じさせないところ。取り回しも軽く、Lツインエンジンが生み出すスリムな車体や軽快さは走り出してすぐにメリットとして感じられます。
スクランブラー以外のドゥカティはスポーツモデルが多く、それ故に市街地などでは難しさを感じることも多々あるのですが、スクランブラーはどこまでも従順です。
また、何にも似ていない、ドゥカティらしいLツインサウンドもその気にさせてくれます。
スポーツライディングの本質を味わえる、ドゥカティ・スクランブラー
今回、改めて思ったのは、ドゥカティの空冷Lツインの良さです。低速域のギクシャク感は薄れ、極低速も扱いやすさが向上。エンジンの回転が落ちがちな市街地やUターン、またヘアピンの立ち上がりなどでもスロットル操作に難しさがないのです。
扱いやすさを向上させつつ、スロットルを開けた際の気持ち良さや、乗って楽しい部分の作りこみをきちんと行なっているのがドゥカティで、今スクランブラーのバランスはとても良いところにあると思います。
音や鼓動もドゥカティの演出。それを全身で楽しむのがドゥカティなのだと改めて感じさせてくれます。スムーズで静寂なバイクとは対局にある1台かもしれませんね。
また、郊外に出て少しエンジンを元気よく走らせてみると、最高出力73ps/8250rpmのスペックを持つ空冷エンジンは、味わいや鼓動感だけを楽しむものではないこともよくわかります。
エンジンはどこまでもスムーズに回転を上げ、ライダーをスポーティな気分にしてくれます。ファッションバイクにとどまらないところはさすがドゥカティで、ベテランをきちんと満足させてくれるスポーツ性を持っています。
また運動性に関しても、猛烈に幅の狭いLツインが生み出す軽快性は格別。よく動くサスペンションと合わせてスポーツライディングの原点的な楽しみも味わわせてくれます。
イタリアンブランドが生み出す高いスポーツ性とファッション性、そして空冷Lツインエンジンとの共演を楽しませてくれるドゥカティの「スクランブラー」シリーズ。この着実かつ素晴らしい進化を、世代や性別、キャリアを問わず多くの人に体感していただきたいですね。
※ ※ ※
第2世代に進化したドゥカティ・スクランブラー「アイコン」の価格(消費税10%込み)は133万3000円です。
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