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ぶっちゃけ「いくら」で参戦できますか? 全日本ラリーの現役ドライバーに参戦費用を直撃した

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ぶっちゃけ「いくら」で参戦できますか? 全日本ラリーの現役ドライバーに参戦費用を直撃した

 この記事をまとめると

■全日本ラリー選手権第4戦が開催された

金食い虫のモータースポーツのなかではかなり手頃! 全日本ダートラに「かかるお金」をズバリ選手たちに聞いてみた

■参加者に全日本ラリー選手権における1年間のおおよその活動予算を聞いた

■競技開催期間が長くコ・ドライバーも必要な全日本ラリー選手権はコストがかかる

 国指定文化財の前を駆け抜けるラリーカーたち

 全日本ラリー選手権の第4戦「FIAインターナショナル・ラリー・加勢裕二杯モントレー2025」が6月6~8日、群馬県安中市を舞台に開催。好天に恵まれたレグ1、曇天となったレグ2ともに各クラスで激しいタイム争いが展開された。

 なかでも圧巻だったのはレグ1にSS2/SS3として設定された約9kmの「Old Usui Touge」で、その名のとおり、人気漫画「イニシャルD」の舞台にもなっている碓氷峠をスペシャルステージに設定。とくに国指定文化財に登録されている通称“めがね橋”は、同ラリーのシンボル的な存在で、観戦するためには、かなりの距離を歩くことになるが、走り屋の聖地で全開アタックを披露する最新ラリーカーは一見の価値があるだろう。国道を占有するために、オーガナイザーは多くの労力を費やしたと思われるが、この努力によって同ステージは全日本ラリーを代表する名物SSとなっているのである。

 さて、モントレーに参戦した選手たちは、国内最高峰シリーズに参戦するだけあって、レベルが高く、各ステージで素晴らしい走りを披露していたのだが、果たして彼ら全日本ドライバーは、どのくらいの予算で活動しているのだろうか?

 というわけで、今回はモントレーの会場で、数名のドライバーに全日本ラリー選手権における活動予算を直撃。以前、全日本ダートトライアル選手権で参戦コストをリサーチしたことがあるが、やはり全日本ラリー選手権は車検やレッキといったように、公式プログラムが金曜日からスタートするなど競技の開催期間が長いほか、参戦する選手もドライバー/コ・ドライバーと2名でエントリー。さらに近年は、レッキにレンタカーを使用するケースが多いほか、ラリー競技ではサービスメカニックも必須となることから、なかなかの参戦コストとなっている。

 まず、1500~2500ccまでの前輪駆動車と4輪駆動車を対象にしたJN-4クラスからチェックしていこう。同クラスでは、スズキ・スイフトが主力モデルで、スイフトを武器に同クラスに挑む筒井克彦選手(学習関連の企業に勤務)に話を聞いてみたところ、「まずクルマを用意するために、ベース車両と改造費が300万円ぐらいかかります」としたうえで、「僕の場合は有効対象の6戦に出ているんですけど、ハード面を除くとだいたい年間で480万円はかかっていると思います」とのこと。

 1大会における大まかな内訳としては、エントリーフィーが約20万円、大会期間中のサービス費用が15万円、タイヤ代が25万円、宿泊費や交通費が10万円、オイル交換などの事前のメンテナンス費用が10万円で、そのほかの諸経費を入れて1戦あたり約80万円で筒井選手は計算。

「ラリーはサービスでの作業が多いので、メカニックの人件費が必要になります。あとはタイヤの購入費用も大きいですが、両方とも削れませんからね。うまくマネジメントするしかないですね」とのことである。

 また、1500cc以下の前輪駆動車を対象にしたJN-5クラスは、トヨタ・ヤリスやマツダ・デミオ、ニッサン・マーチなどコンパクトカーが主流となっていが、それでも参戦コストはまずまずの金額。

 トヨタ・ヤリスでJN-5クラスに参戦する松倉拓郎選手(獣害対策の関連企業に勤務)によれば、ハード面の予算はベース車両に改造費が300万円。気になる年間の活動費用は460万円。

「僕の場合は6戦中2戦がグラベル戦になるんですけど、ターマックより20%ぐらい参戦コストがアップするので、たいたいこれくらいの金額で計算しています」とのこと。

 JN-4クラスの筒井選手と似たような金額となっている。

 クラスや車両が違っていても参戦コストはいずれも高め

 一方、意外とリーズナブルな金額で活動をしているのが、1500~2500ccの後輪駆動車を対象とするJN-3クラスにスバルBRZで参戦している加納武彦選手(IT関連企業に勤務)だ。

 ハード面に関しては「ベース車両にプラスして改造費が500万円かかりました」とのことだが、年間予算は360万円で活動。「サービスチームはプロのメカニックなんですけど、ほぼボランティアのような金額で安くやって頂いています。そういった意味では、人間関係を作って協力してもらえる体制を用意することが、長くラリー競技をやるコツかもしれませんね」と加納選手は語る。

 さらに、プライベーターながら2500cc以上のマシンを対象とするJN-2クラスにGRヤリスで挑む内藤学武選手(電気関係の企業に勤務)も、参戦コストを抑えるべく、独自の工夫を実施している。

 国際規定のRally2/R5や各国の統括団体(ASN)が公認するAP4車両、そしてJAF規定のJP4車両を対象とするJN-1クラスはプロフェッショナルなクラスであることから、プライベーターにとっては実質的にJN2クラスが最高峰クラスとなるが、内藤選手によれば「自分でホワイトボディにして作業を行ったので、ベース車両にプラスして改造費は300万円に抑えることができました。ちなみに昨年まで乗っていたJN-4クラスのスイフトも改造費は230万円。やはり4WDターボは部品代が高いですね」とのことだ。

 気になる年間の活動予算は400万円だが、「普段のメンテナンスも自分と父でやっていますが、FFのスイフトと比べて4WDのGRヤリスはデフのオイル代など、油脂類の負担が増していますし、タイヤ代も高くなりました。JN-4クラスで活動していたときは年間8戦分の予算が400万円だったので、JN-2クラスでもなんとか同じ予算内で活動したかったんですけどね。ちょっとオーバーしてしまいそうなので、スポンサー募集中です」とのことで、プライベーターとしてJN-2クラスを戦うのは大変のようだ。

 このように、ラリー競技、とくに全日本選手権に参戦するためには、まずまずの活動予算が必要になるが、それでもラリー競技は魅力満載で、「昔はレースにも参戦していたんですけど、クルマのパフォーマンスでリザルトが決まることが多いんですよね。でも、ラリー競技に関してはドライバーの技量が大きくリザルトを左右するので、ウデで勝負できるところが面白い」とJN-4クラスの筒井選手が語れば、JN-5クラスの松倉選手も「ドライバーのフィジカルやメンタルだけでなく、コ・ドライバーやサービススタッフとの連携も重要になりますからね。ラリーはほかのカテゴリー以上に総合力が必要になるので、そのぶん、優勝したときの喜びは大きいですね」と語る。

 さらに、JN-3クラスの加納選手によれば、「ラリーはSSでタイム争いをしていますが、ロードセクションも走りますよね。リエゾンの景色がいいところもあるので、ドライブ旅行的な感覚があります。その地域の文化や食事なども併せて楽しめるところもラリーだけの魅力だと思います」とのことだ。

 これに加えて、N-2クラスの内藤選手も「コ・ドライバーとふたりでタイムを削っていくところもおもしろいし、サービスではメカニックたちも勝負していますからね。チーム全員で戦っているところがラリー競技の魅力だと思います」と解説する。

 このように、ラリー競技に参戦するためにはかなりのコストが必要になるが、その一方でラリー競技だけの魅力も満載。それゆえに全日本ラリー選手権の選手たちは、一生懸命に競技へ打ち込んでおり、そのアグレッシブな走りがラリーファンを魅了しているのである。

 なお、モントレーではシュコダ・ファビアの5号車を駆る新井大輝選手/立久井大輝選手がJN-1クラスおよびインターナショナル部門を制覇したほか、GRヤリスの12号車を駆る山田啓介選手/藤井俊樹選手がJN-2クラスで勝利を獲得。

 以下、JN-3クラスではGR86の40号車を駆る渡部弘樹選手/横山慎太郎選手、JN-4クラスはスイフトの46号車を駆る藤原友貴選手/宮本大輝選手、JN-5クラスはヤリスの58号車を駆る松倉拓郎選手/山田真記子選手、JN-Xクラスではトヨタ・RAV4 PHEVの61号車を駆る天野智之選手/井上裕紀子選手がウイナーに輝いた。

文:WEB CARTOP 廣本 泉
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みんなのコメント

2件
  • yjk********
    人間に関しては実際は金出せばってもんでもないんだろうけど意外と安いんだな
  • エガちゃんねらー
    ワイが30年近く前の、まだ少しは景気の良い時
    全日本のトップが車両だけで1000万と聞いた
    しかもヤツら毎年マシンを更新してたとか
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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