■水素エンジンの5年目:新技術と挑戦の歩み 「モータースポーツ=走る実験室」での戦いとは
2021年にS耐富士24時間でデビューを果たした「水素エンジン」。
トヨタのマルチパスウェイの象徴と言ってもいい「未来への挑戦」はここからスタートしました。
初年度はガソリン車並みの出力、2年目(2022年)は出力をそのままに航続距離の向上をテーマでした。
アジャイルな開発によってある程度手の内化はできたものの、気体水素では1充填あたり約54km(=富士スピードウェイ約12周)が限界でした。
そこで気体水素に対して体積が約1/800の液体水素に挑戦したのが3年目(2023年)です。
初年度は液体水素ポンプの耐久性の問題(8時間)からレース途中で交換作業を行ないながらの走行でしたが、1充填あたり約90km(=富士スピードウェイ約20周)と航続距離は大きく向上しました。
4年目(2024年)は更なる航続距離構造のために楕円型タンクの採用により1充填あたり約135km(=富士スピードウェイ約30周)を実現したものの、レースでは水素とは異なる電気系のトラブルでピットストップの繰り返しにより、液体水素ポンプの耐久性向上(無交換)に関しては証明することができず。
しかし、その年の最終戦(富士)で耐久性の証明に加えて、万年ビリから脱して初めて他のマシンとレースを戦うレベルになりました。
5年目となる2025年はどうでしょうか。
見た目はマットブラックのボディカラーにTGRRステッカー、更に進化型のフロントバンパー装着などが行なわれていますが、やはり注目は中身でしょう。
筆者(山本シンヤ)は水素に関して以前と比べると若干トーンダウンしている感じが少々気になっていたのも事実です。
そこで2025年3月期決算(5月8日)の質疑応答で、佐藤恒治社長に水素エンジンの現在の立ち位置について聞くと、こう答えてくれました。
「水素エンジンは燃焼そのものの制御はある程度“手の内化”ができつつあります。
その結果、バイオFuelやe-Fuelを使った時のエンジン技術に対して、水素をやっているが故に得られるメリットが今見え始めている状況です。
つまり水素単品ではなくそこから端を発して『マルチパスウェイへの相互作用が見えるようになってきた』とご理解いただけると。
当然水素は今後も続けていきます。これは会長の豊田が自らハンドルを握って先頭に立って取り組んでいるテーマですので」。
つまり、開発陣は次のステップに向けてシッカリと駒を進めていると言うわけです。
その内容はより実用化に目を向けたトライが行なわれています。
1つ目は「エンジン燃料切り替え技術」です。
これまで水素エンジンは高出力&クリーンな排ガスにこだわって開発してきました。
ドライバーの1人である佐々木雅弘選手は「水素エンジン開発で最も意識したのは『出力』です。速く走るからこそトラブルや不具合がでます。極限状態で走るから解ることはたくさんありますので」と語っています。
そのために、これまではストイキ燃焼(=水素と酸素が過不足なく燃焼できる比率:ラムダ1と呼ばれる)の領域を使って開発が行なわれてきました。
ただ、量産の事を考えると燃費は決して無視できません。
実は2023年にオーストラリアで実証実験を行なったグローバルハイエースに搭載された水素エンジンはリーン燃焼(理論空燃比よりも少ない燃料で燃焼させる方式:ラムダ1=2.0以上)が行なわれていました。
要するに「そもそも吹く燃料が少ない→燃費が良くなる」と言う考え方です。
ガソリンエンジンのそれは燃焼が不安定/燃焼しないと言った課題がありましたが、水素はガソリンより着火性に優れるため影響はないと言います。
しかし、ストイキ燃焼と比べると出力は低下してしまい、グローバルハイエースのエンジンはV6-3.5Lツインターボにも関わらず120kW(163.2ps)と言う状況です。
2025年仕様の水素エンジンは高出力が必要な時にはストイキ燃焼、必要としない時にはリーン燃焼をドライバーの出力要求(=アクセル操作)に合わせて、自動的に切り替える技術を採用しています。
筆者はこの技術を聞いた時、正直言うと「巡航走行ができる一般道ならまだしも、全開率の高いサーキットで切り替えによる効果はあるのかしら?」と。
そんな疑問を水素エンジン開発のリーダーであるGR車両開発部の伊東直昭氏にぶつけると次のように答えてくれました。
「まさにその通りです。
ただ、今回は我々が確認したい所は、燃費向上よりも『ストイキ燃焼⇔リーン燃焼の切り替え時が上手くできるかどうか?』の部分ですね。
富士スピードウェイを1周する時にアクセルOFFやパーシャル領域がありますので、そこでの繋がりはどうか? その時に乗りやすいのか/乗り辛いのか?などをより過酷な条件下でチェックいただきます。
もちろん、速度規制となるFCY(フルコースイエロー)やピットレーンでは役に立ってくれるはずです」
もう1つの疑問は、燃焼パターンが2つあると「排ガスの後処理」はどのように最適化していくのかと言う部分です。
「リーン燃焼で『燃焼温度を下げる=Noxは減る』ので、ストイキ燃焼に対してEGRを使うのはガソリンエンジン同様やります。
課題はガソリンエンジンでは全く経験していない超リーン領域です。
酸素が余ると三元触媒で還元しても戻ってしまいます。ここは既存の技術……これまで蓄積してきたディーゼルエンジンに関するノウハウをうまく活用する、もしくはその領域さえすっ飛ばして完全に触媒がいらない所を目指すかですね。
この3つの領域をどう使い分ける……ですね」(伊東氏)
2つ目は「新充填バルブの開発」です。水素エンジンの量産化にはインフラ側の進化も重要な部分となります。
これまでも「早く・たくさん充填」はトライが続けられ、2024年最終戦(富士)では二段階給水素(人のテクニックによる)で現状の理想に辿り着きましたが、今回は技術の進歩によるモノです。
具体的には充填バルブに新構造が採用されています。
従来はバルブ開閉を外部アクチュエータが行なっていましたが、マイナス253度の密閉性に課題があることから内部ピストン構造(コールドフィンガーが直接押して開閉)を採用。
これにより流路面積の拡大が可能となり、充填スピードの約3割向上に加えて2kgの軽量化、そして密閉性が向上されています(安全性向上)。
ちなみに給水素時に入りに対して戻しの量を増やす事で、タンク内の液面の揺れを抑える事による温度上昇の抑制や液体水素の温度管理により、ボイルオフの量を抑える工夫(1度変わってしまうと1周変わるとの事)も。
これは様々なトライ行なってきたからこそ解った要因だそうです。担当者は「今回は速さよりも多く入れる事にこだわりました」と自信を見せます。
3つ目は「ワイヤーハーネスのアルミ化」です。
電源供給や信号伝達のために車内に恥じめぐらされている電線を重ねたモノですが、1つ断線してしまうとクルマは走れなくなる上にその故障探求は非常に困難な部品の1つです。
過去に28号車/32号車共にワイヤーハーネスのトラブルで長時間ピットインを余儀なくされた事もあります。
このワイヤーハーネスは主に銅線で構成されていますが、今回はそれをアルミに変更。
これまで端子部などへの水掛かりにより腐食が課題で材料置換が困難と言われてきましたが、古川電工が開発したファイバーレーザー溶接技術を用いた管形状端子を電線に圧着することで密閉構造を形成する「密閉構造端子(α端子)」の採用によりコストを上げることなく腐食を防止、同時に18%の軽量化(9651.9→7854.9g)を実現しています。
ちなみに水素GRカローラはレーシングカーなのでワイヤーハーネスの量は必要最小限ですが、これが量産車だとその差はより大きいそうです。
モリゾウ選手は「次の開発に活かすためにも、今年は24時間をシッカリ走り切るのが目標」と語ってくれましたが、3年目の液体水素はどのような戦いを見せてくれるのでしょうか。
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