昔であれば、ガソリンスタンドのスタッフがタイヤの異常に気づいて指摘もしてくれることもあったが、最近はセルフスタンドが主流でそんな機会も失われている。ここ10年でパンクが急増している背景については、以下の記事で触れているのでご覧いただきたい。
10年間で激変!! タイヤのパンク なぜ急増?? 背景にある3つの原因とは
【ガガガッってなんの音?】ワイパーから異音が鳴ったときに注意すること
さて、それでもスタッドレスタイヤに交換が必要な地域に住んでいる人は、年に2回はタイヤの状態をチェックする機会があるが、非降雪地域ではクルマを持っていても車検の時くらいしかタイヤをチェックしたことがない……なんて人もいるのではないだろうか。
業者や検査官による部分はあるが、 車検時のチェックで残り溝の深さはチェックしても、ひび割れに関しては酷いものを除き、検査で引っかからないことがある。そうなると、車検も通ったし、溝もあるしまだ大丈夫とクルマに詳しくない人は思いこみやすい。しかし、それは間違いだ。
今回は、意外に見落としがちな、タイヤの消費期限とその重要性について、モータージャーナリストの斎藤聡氏が解説する。
文/斎藤聡
写真/Adobe Stock
【画像ギャラリー】タイヤとうまく付き合うために日ごろからチェックしたい6つのポイント!!
■残り溝は1.6mmまでだが、それだけではないタイヤの大切なこと
タイヤは摩耗したら交換します。というのは、教習所でも習いますよね。残り溝1.6mmになったら交換しなくてはなりません。目安としてタイヤの縦溝の底にスリップサインという凸部がつけられています。この凸の高さが1.6mmになっているので、タイヤの山の部分(トレッド)とスリップサインの高さが同じになったら交換しなくてはいけないわけです。
一般的には「タイヤの溝さえ残っていればダイジョーブ」、そんなふうに思っている人が多いのではないかと思います。でも、じつは保安基準には「亀裂、コード層の露出等著しい破損のないもの」という記述もあるのです。
もっとも亀裂と呼べるような破損や、コード層の露出したタイヤは誰が見ても危険なので、交換することになると思います。こうした法律は、限界ぎりぎりの性能を担保するのに必要な条件です。
サイドウォールなどに、ここまでの”亀裂”と表現されそうなひび割れが発生していれば、点検時に指摘され即交換となるが、細かく入ったひび割れは指摘がされないこともある
例えば残溝1.6mmのタイヤを雨で走らせると、ちょっとした水たまりにタイヤが乗っただけで、とてつもなく滑ります。
法律では残溝1.6mmがタイヤ交換の限度ですが、交換の目安はもっと残溝が深く3.5mmとか3mmくらいといわれています。タイヤメーカーでは、メーカー間の差なくタイヤの磨耗は5分山を下回ったところから急速に耐ハイドロプレーニング性能が悪くなるといっています。新品時のタイヤの溝は、スタンダードタイヤで10mm前後、ハイパフォーマンスタイヤだと7mmくらいですから、この数字を見ても3mmはひとつの目安になるのではないかと思います。
溝だけあればいいかというと、そういうわけにはいきません。タイヤのゴムは経年劣化するので、数年履いたら溝が残っていても交換するのが安全です。
タイヤとうまく付き合うためにも、タイヤに関する情報の読み方を勉強しよう。こちらは製造年月日。このタイヤは2018年40週目(10月1~7日)に製造されたことを示している
ケーキのスポンジが乾燥してボソボソになって美味しくなくなってしまった、なんて経験を持っている人は案外たくさんいるのではないでしょうか。水分が飛んでしっとりした食感が失われてしまうわけです。
タイヤも長く使っていると、ひび割れて柔軟性がなくなり、ゴムとしての性能が落ちてしまいます。
問題はその目安です。うんと大雑把に例を示すと、だいたい交換の目安は4年くらいと考えてもらっていいと思います。この年数は絶対ではなく、使い方やクルマの保管環境によっても変わります。
交換する目安になるのが、タイヤの側面やトレッドブロックの根元にひび割れです。これが出てきたら要注意。ヒビが深くなってきたら要交換です。
■なぜ交換する必要があるのか? 無関心が大事故につながることも
なぜ交換しなくてはいけないのか。ゴムが柔軟性を失って、スリップしやすくなったり、バーストしやすくなるからです。
そんな大げさな、と思われるかもしれませんが、じつはそんなに大げさな話ではありません。数年前に、ディーラーに展示してあったスポーツカーでドライブするイベントがあって、案内役として参加したことがありました。この時、見事にそのスポーツカーが路面に埋めこまれたキャッツアイを踏んでバーストしてしまったのです。
クルマ(新車)がディーラーに来てから2年半。その間ほとんど展示のみで走らせていませんでした。
タイヤを見た時、深いヒビがたくさん入っているので嫌な予感はしていたのですが、参加した方がトンッとキャッツアイを踏んだ瞬間、バスっとサイドウオールが割れてバーストしてしまいました。
そう、タイヤは走ると摩耗しますが、走らないとゴムの劣化が進んでしまうのです。
タイヤがバーストするのは、速度域が高くなる高速道路が圧倒的に多い。JAFがまとめた2018年のロードサービス出動理由で、2位の「燃料切れ」(9080件)に圧倒的な差をつけ、「タイヤのパンク、バースト、エアー圧不足」(2万7045件)が1位になっている
■タイヤは走っても走らなくても劣化する生ものだと知ろう
タイヤは柔軟性を保つためにオイルが練り込まれています。このオイルが、時間が経つごとに抜けて少なくなってしまい、その結果タイヤがカサカサになって柔軟性がなくなっていってしまうのです。
それに加えて、ゴムは時間経過とともに再架橋というのが起こります。少し詳しく説明すると、タイヤを作る最終過程で、ゴムに硫黄を混ぜて熱を加えます。加硫工程というのですが、それによってゴムは分子同士が結びつきを強くします。これを架橋と言います。架橋によって、ゴムは飛躍的に柔軟性と弾性を高め、タイヤとしての耐久性を高めます。
実際には、モールドと呼ばれる釜の中で、内側から圧力を加えながら150度前後の熱を加えてタイヤの形を成形します。蛇足ですが、このモールドに刻まれた模様がタイヤのトレッドパターンになります。この工程を経ることで、タイヤは皆さんが知っているタイヤの性能を得ることができるわけです。
ただ、それで終わりではなくゴムの分子同士が結びつき、ゴムの弾性を高める働きをする架橋は、製造が終わってもゆっくりしたスピードで起こっているのです。これを再架橋と言います。
再架橋が進むとゴムの分子同士の結びつきが強くなりすぎて、こんどは柔軟性が失われていってしまいます。こうなるとウエットグリップ性能が悪くなってしまいます。もちろんウエットグリップだけでなくドライグリップも落ちているのですが、ドライ路面での性能低下はわかりにくいのです。
わかりやすいのは雨です。ゴムの柔軟性が失われると、粘るように(柔軟に)路面にコンタクトする性能が落ちるので、ある程度の力がかかると唐突にツツーッと滑り出したります。そんな状況になる前から、性能劣化の症状は感じられます。
タイヤの柔軟性が失われると、排水性能にも大きく影響する。どんなにクルマが高性能でも、タイヤが機能していなければ、本来の性能を発揮することは絶対にない
雨の日に走っていると、不安定な感じがするとか、レーンチェンジでクルマの動きがぴくぴくする感じになったとか、タイヤの柔軟性が少なくなってくると、しっとりした感触とか、懐の深い寛容な感じというのが薄れていってしまうのです。何となく走りにくいとか不安感があるというのは、実はそんな症状をそれと意識することなく感じているからなのです。
というわけで、購入してからある程度年数が経過したタイヤは摩耗してなくても交換することが好ましいわけです。目安はサイドウオールやブロックの根元に深めのひび割れが入ってきたら。先に4年前後と書きましたが、極端に走行していないクルマのタイヤの劣化は早く進みますので、注意が必要です。
タイヤの消費期限に気を付けてもらいたいが、ほかにも注意してもらいたいのが「タイヤの空気圧」だ。特に冬季は路面温度が低いため、タイヤが温まりにくく内圧が上がらない。
各車両で指定されている適正空気圧よりも大きく低下している場合、高速走行時に異常発熱を起こして、バーストを起こす危険性がある。バーストが駆動輪で発生したりすると、最悪の場合は制御を失い、他車を巻き込む大事故にもつながりかねない。
少なくとも、月に1度の空気圧チェックを習慣にすることが大切だ。
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