2020年12月に三菱エクリプスクロスはデザインを一新して、デビューした。注目はPHEVモデルが追加されたことと、ボディサイズがアップし、エクステリア、インテリアデザインも変更されていることだ。その新型エクリプスクロスPHEVに試乗することができたので、お伝えしよう。
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PHEVを追加
三菱エクリプスクロスは、フロアパネルと前後のサブフレームによるユニット構造になっているが、PHEVモデルのフロアパネルはアウトランダーPHEVのものを共有している。フロアにはリチウムイオンバッテリーを敷き詰め、フロントサブフレームは+35mm、リヤサブフレームは+105mm延長し、合計140mm延長されている。ボディサイズは全長4545mm、全幅1805mm、全高1685mmでホイールベースは2670mmとなっている。
システムはアウトランダーPHEVと共通で、2.4LガソリンのMIVECエンジンと前後に高出力駆動モーターを装備した4WDとなっている。そしてPHEVモデルだけにドライブモードの「ターマック」が設定されている。試乗のポイントはこのターマックモードで、走行フィールをお伝えしたい。
なお、フロントモーター出力は60kW(82ps)/137Nm、リヤモーターが70kW(95ps)/195Nmで、エンジン出力は94kW(128ps)/4500rpm、199Nm/4500rpmというスペックでEV走行可能航続距離は57.3kmとなっている。
走行シチュエーションはタイトなワインディング。三菱の特徴でもあるS-AWCの魅力を堪能できる場面でもある。そしてこのターマックモードは、乾燥舗装路を推奨しているモードなので、ベストな場面での試乗だったと付け加えておこう。
PHEVだけのターマックモード
まずエクリプスクロスPHEVの基本だが、通常はモーター走行するクルマで、電池残量や要求トルクが不足するとエンジンが稼働し、状況次第でシリーズ式からパラレル式になる。また高速での一定車速運転のような状況ではガソリンエンジンのほうが高効率(省燃費)なため、エンジン走行をする。が、直進性をさらに高めるために、わずかにリヤモーターも駆動している。ちなみにエンジン走行はフロント駆動だが、そうしたアシストがあるため常時4WDといってもいいだろう。
ターマックモードになると、モーターのレスポンスが上がり、トルクの立ち上がりが敏感に反応する。そしてエンジンも稼働し常に充電をする状態になる。またサスペンションには電子制御タイプは装備していない。
ワインディング路に入り、すぐに驚くのは回頭性の高さだ。前後のトルク配分は常時変動しており、これもモーターだから可能なのだが、併せてブレーキをつまむことでヨーのコントロールがする。そうした動きが瞬時に反応し、ステアと同時に回頭が始まり、スロットル開度に応じて前後トルク配分が変わる。ブレーキAYCで回頭性が上がり、素早くコーナーを脱出する。
こうした制御が連続的に行なわれ、瞬時にクルマは反応する。が、ドライバーには制御されていることを一切感じることはなく、スポーツ性の高いハンドリングだという印象を持つ。もっと言えば、これまで体験したことのない、回頭性の高さを感じたと言えるだろう。
そして電子制御ダンパーを装備していないにも関わらず、車両のしっかり感も変化するから不思議だ。全体に剛性が上がったように感じ、ハンドルの手応えもスポーティに感じてくる。これは開発の澤瀬氏に伺ったが、タイヤ4本の接地荷重の変化、前後トルク配分の変更などが影響して起こる現象だと説明している。そうした相乗効果を利用したターマックモードは、SUVとは思えないパワフルさと俊敏さを持った走りができるのだ。
静粛性能の高い高速走行
またエンジンは常時稼働しているものの、車速に応じて走行ノイズもあがり、そのノイズに隠れるようなエンジン音に調整しているということで、ドライバーにはエンジンが稼働しているのかどうか、ほとんどその存在感を感じさせることなくEV走行が味わえた。
ひたすら、走行性能の高さに感心した後、高速道路を走行した。ここでは一定車速の高速走行なのでエンジンが中心に走行するわけだが、前述のように走行ノイズに紛れる制御なので、これまでと同様にエンジンの存在が気にならない。またエンジン走行となるのは意外にも60km/h程度から可能ということで、要求パワーが一定で低トルクになるとエンジン走行になるわけだ。
またこのときもわずかにリヤモーターは駆動を続け、直進性をサポートしている。さらに、静粛性が高いことも魅力的で、ひとクラス上のレベルだと思う。こうしたことで、高速道路での直進の座り良さは高く、安心感もあるし、疲労軽減にもつながると感じた。
デザインの変更
フロントフェイスが変更されている。ランプ類のデザインとレイアウトが変更され、アグレッシブさが加わった印象だ。より、未来的な印象なのかもしれない。そしてアンダーガードのデザインも変更され、よりSUVの力強さとどこでも走れるタフが増したように感じる。
サイドビューはクーペスタイルが維持され、全長が+140mm伸びているが、リヤのオーバーハングが+105mmとなった分、まとまりが出た印象だ。
リヤビューも変更され、ユニークな装備だった分割リヤウインドウが1枚ものに変更され、全体的にスッキリとしたデザインに変わった。後方視界も見やすくなった印象だ。
インテリアではシートカラーがオプションの本革にライトグレーが加わったことで、明るく、スポーティな印象になっていた。また上級ファブリックシートにもヘリンボーン柄を採用しており、全体的に上級なイメージを受けつつ、スポーティさもあるデザインになっている。
関連記事:エクリプスクロスPHEV試乗記 新しい走りの世界(ツインモーターS-AWC )
まとめ
プロトタイプをサーキットテストしたときは、S-AWCが制御による動きであることが感じ取れるものだったが、市販され公道で試乗してみると、そうした制御による動きは一切感じることが無かった。これはサーキットという特殊な環境で車両の限界付近での走行となるため、制御による挙動が感じやすかったのかもしれない。公道では限界付近で走行することはあり得ないため、自然な動きとして体感するということだと思う。
そして、エクリプスクロスはCセグメントにカテゴライズされるが、同じCセグにアウトランダーもある。同じようなボディサイズでSUVというポジションにいながら、クルマの性格、狙っているポジションが明らかに異なっていることを確認できた試乗だった。
エクリプスクロスは、かなりスポーティな領域にいるイメージで、ターマックモード以外でも全体に引き締まった走りをするモデルだと感じる。クーペライクなエクステリアが示すように、走ることが魅力という印象だった。またアウトランダーはファミリーを中心とし、ゆったりと効率良く走るモデルで、セダンの進化版なのかもしれない。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>
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