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ジースターの新クリエイティブ・ディレクターにボッターが就任!──“カリブ・クチュール”のデザインデュオが考える環境とデニムとは?

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ジースターの新クリエイティブ・ディレクターにボッターが就任!──“カリブ・クチュール”のデザインデュオが考える環境とデニムとは?

ジースター(G-STAR)の新クリエイティブ・ディレクターに就任したボッター(BOTTER)。ブランドの展望からラグジュアリービジネスまでを、ルシェミー・ボッターとリジー・ヘレブラーのふたりに訊いた。

オランダ・アムステルダムのラグジュアリーデニムブランド、ジースターはブランドにおける最上位ラインとしてこれまで休止していた「ジースター ロゥ リサーチ(G-STAR RAW RESEARCH)」を再始動させ、新しいクリエイティブ・ディレクターとしてデザイナーデュオ「ボッター」のルシェミー・ボッター(Rushemy Botter)とリジー・ヘレブラー(Lisi Herrebrugh)の就任を発表した。ボッターは、2022年2月に3年半にわたりコレクションを担当したニナ・リッチ(NINA RICCI)を退任後、自身のブランドで活動している。

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ボッターの二人は2018年にイエール国際モードフェスティバル(the Hyères festival)でファッション部門グランプリを受賞したコレクション、2022年のANDAM Fashion Awardのグランプリ受賞コレクション、さらに現在に至るまで一貫して“Global Warning”をテーマとした地球環境に対するメッセージを発信してきたブランドだ。

「ジースター 」は2006年からサステイナビリティをビジネスの中核に位置づけ、製品の社会的影響と環境的影響の両方を継続的に改善し、トレーサビリティなどその透明性を自社のホームページで公開している。記憶に新しいところでは23年にタレントのローラをグローバルキャンペーンのモデルに起用した“ダイド・バイ・ミネラルズ(Dyed by Minerals)”のカプセルコレクションを発表。デニムの染色過程での環境負荷を軽減し、再生可能コットン75%、リサイクルコットン25%を使用した素材による循環型経済に配慮する姿勢を明快に示した。

ボッターのルシェミーはオランダ領のキュラソー島出身。アントワープ王立芸術アカデミーで学び、今年2月にジースターとのコラボしたカプセルコレクションを発表したウォルター・ヴァン・ベイレンドンクの教え子。自分自身も90年代からジースターを着用していたという。リジーはドミニカ国で生まれ育ち、アムステルダム・ファッション・インスティテュートで学び、ヴィクター&ロルフでインターンを経験した後、ルシェミーとボッターを設立。いずれもカリブ海の島で育った若いデザインデュオはカリブの島のローカルなテーラー職人の技術を取り入れ“カリブ・クチュール”と評されるなど、そのクラフツマンシップはコレクションの重要な価値をブランドに与えている。

エコフレンドリーなクリエイティブポリシーとジースターが結びついたのは自然であり、今回のジースター ロゥ リサーチへのクリエイティブ・ディレクター就任はその活動に対するジースターからの称賛、アンサーであったのだろう。

1989年にジースター誕生時にバイカーパンツを立体裁断で表現したデニムの革新的なアイテム「エルウッド(ELWOOD)」など、ブランドのレガシーモデルを実際にリアルなユーザーでもあったボッターがどうアプローチするかも楽しみだ。彼らによる本格的なコレクションは2026年1月のパリファッションウィークで発表されるが、ボッターに以下の書面インタビューをおこなった。

──ジースター ロゥ リサーチのクリエイティブ・ディレクターを引き受けるにいたった背景と理由を教えて下さい。ジースター ロゥ リサーチと私たちの旅は、お互いのリスペクトの想いから始まりました。私たちは、彼らのデニムにおける革新性とサステイナビリティ、その両方に対するパイオニア精神を常に賞賛してきました。

私たちにとって、このクリエイティブ・ディレクターの役割を担うことは、私たち自身のコンセプチュアルでエコロジカルなアプローチと、ジースターがこれまでに積み上げた技術的なレガシーを融合させることなのです。そしてこれは単なるコラボレーションではなく、両者による、技術、カルチャー、意識(考え方 / 哲学)の対話です。

強靭さと変革性を併せ持つ生地としてデニムがどのくらい進化することができるのか、私たちは共に探求していきます。

──ジースターの市場におけるポテンシャルは何だと考えていますか?ジースターは、特にデニムにおいて、その信頼性と革新性へのコミットメントにより、常に業界で際立ってきました。技術面と機能面の両方において、強力なインダストリアルのDNAを持ち、それによって世界のオーディエンスを引き付けています。

私たちはジースターのポテンシャルは、特に循環性、生産技術、そして実験的な仕立ての分野において、歴史的な背景を持つヘリテージと未来志向なデザインを調和させる力にあるととらえています。

──ジースターがこれまで行ってきたさまざまアーティストとのコラボレーションのなかでボッターのお二人が印象に残っているプロジェクトがあれば教えて下さい。写真家・アントン・コービン(Anton Corbijn)とのコラボレーションは、私たちにとって際立っています。彼はブランドのイメージだけでなく、その魂まで捉える素晴らしい能力を持っています。彼のレンズは、ジースターの生々しく(RAW)、純粋で、ほとんどシネマティックとも言えるようなエッセンスを引き出してくれました。彼が衣服、人々、空気を切り取るその方法には、静かな強さと迫真性があります。それは単なるファッションのためのファッションではなく、アイデンティティとエモーションについてのものでした。その奥深さは、私たち自身の作品におけるストーリーテリングへの姿勢と共鳴するものです。

──2026年1月に発表されるコレクションでは、ブランドのレガシーモデルの再提案なども予定していますか?はい、コレクションにおいて私たちは「エルウッド」の再解釈を行います。しかし私たち自身の目を通じ、現代的な観点と共に。それはこれらのアイコニックなスタイルが、いかにして今の世界で存在することができるかを探求することです。これらのシルエットには歴史がありますが、私たちはそれを現代に向けて再定義したいのです。それは過去の単純な焼き増しをすることではなく、新たに形作ることであるといえます。

私たちはオリジナルに込められた精神、機能性、構造を保ちながら、しかしアップデートされたボリューム、現代的な素材、そしてより一層柔軟なアイデンティティの感覚により、「エルウッド」を再構築します。

──ボッターにとってデニム素材はどういう存在ですか?デニムはデモクラティック(民主的)でありながら、同時にとてもエモーショナルなものです。デニムは労働、反逆性、そして親密さといった様々な物語を語ります。

私たちはデニムを、身体、時間、場所に適応して変化する生きたキャンバスだと考えています。それはパーソナル(個人的)なものであると同時に、一方ではユニバーサル(普遍的)なものでもあります。私たちにとってデニムは表現のための素晴らしいツールで、特にその従来のイメージを超えて再構築されたとき、その魅力は最大限に発揮されると考えています。

──デニムビジネスが現在抱えている問題は何だと考えていますか?(もし、その改善策、提言があれば教えて下さい)最大の課題は、安定性と持続可能性のバランスをとることです。従来のデニム生産には、大量の水、化学薬品、そしてエネルギーが使われていました。しかし技術革新がこれを変えつつあります。私たちの目標は、再生素材や自然環境に配慮した染色加工、モジュラー・デザイン等により、ジースター ロゥ リサーチをさらに持続可能な実践のステージへと押し進めることです。この業界は、資源の抽出から復元へと移行する必要があるのです。

──メイド・イン・ジャパンのデニムに対してどのような印象を持っていますか?日本のデニムは明確な理由と共に高く評価されています。 職人技、ディテール、伝統への敬意。その完璧さは、ほとんど瞑想的なものであるとすらいえます。

──日本のファッションデザインに対してどのような印象を持っていますか?日本のファッション全体に関しては、ミニマリズムとアバンギャルドな思考がミックスされたもので、長い間私たちに感銘を与えてきました。

──日本のマーケットに関してどのような印象を持っていますか?そして日本のファッションのマーケットは非常に優れた見識があると同時に、デザインの完璧さを深く評価するものだと思います。日本はアイデアが最大限に尊重される場所です。

──日本のカルチャーのなかでお二人が最も興味を持っているものを教えて下さい。日本の日常生活には、物静かな風情があります。そこには単純さと複雑さが共存する姿があり、 そして伝統が革新をもたらします。またそれがデザインであれ、食であれ、哲学であれ、そこには常に目的意識があります。特に私たちは不完全性の中にある美しさと、儚さがもたらす感情的な響きに惹かれます。

──ジースター ロゥ リサーチと日本の技術もしくはアーティストとコラボレーションする可能性はお考えですか?もちろんです。日本はテキスタイルの革新においても、哲学的なデザイン思考においても最先端を走っています。日本のテクノロジーと私たちのコンセプチュアルなアプローチ、そしてジースターのデニムの専門知識を組み合わせたコラボレーションは、真に先進的なものを生み出す可能性があります。

──デザインデュオであるボッターのお二人の役割があれば教えて下さい。(デュオでやるメリット、二人でデザインするようになったきっかけなどもあれば)私たちは対話としてデザインに取り組みます。時に私たちは大きな物語のアイデアから始めます。ルシェミーは感情的で社会政治的なエネルギーをもたらし、ルックをスケッチします。リジーはそのコンセプトに基づいて問いかけ、洗練し、形作り、構造化された現実的なものに仕上げます。デュオであるということは、高頻度でフィードバックを行い、視点のバランスを保つということです。

私たちは直感的に一緒にデザインを始めました。それは決して強制されたものではありません。この力学はごく自然なものであり、私たちが共有する価値観が私たち自身を導いてくれるのです。

──ラグジュアリーブランドに求められる今後の役割をどうお考えでしょうか?ラグジュアリーとは、もはや希少性やステータスのことではなく、責任、持続性、そして本質的な意味のことでなければなりません。今後ラグジュアリーブランドは、革新性、透明性、文化の創造性において業界をリードすることが求められています。

今この世界が必要としているのは多くの服ではなく、より良いシステムとより良いストーリーなのです。ブランドは文化と環境のパイオニアとして行動しなければならないと考えています。

BOTTER2017年、ベルギー・アントワープでルシェミー・ボッターとリジー・ヘレブラーにより創業。ベルギーとオランダ仕込みのテーラリングを掛け合わせた、斬新なラグジュアリースタイルを提案。大胆でカラフルなデザインや、爽やかな佇まい、エッジの効いたディテール、多様性のあるラインナップが特徴。2018年8月より2022年2月まで、ルシェミー・ボッターとリジー・ヘレブラーは「ニナ リッチ」のアーティスティック・ディレクターとして活動。2020-21年秋冬、パリ・メンズ・ファッション・ウィークでのボッター初のコレクション発表した。

立体裁断が新鮮\! 最旬ジーンズトレンド90年代後半に流行った3Dデニムが復活の兆し!可動域を拡げるためにデザインされた立体裁断による機能美がトレンドに躍り出た。文・野田達哉

文:GQ JAPAN 野田達哉
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