■「小さな高級車」の挑戦と現在
1990年代後半の日本の自動車市場は、「ボディサイズが大きいほど上級」という価値観が根強かった時代でした。その中でトヨタは1998年5月、既存のヒエラルキーに属さない異色のセダン「プログレ」を発表しました。
そのコンセプトは、ズバリ「小さな高級車」でした。日本の道路環境に適した5ナンバーサイズの中に、当時の最高級車「セルシオ」や「センチュリー」に匹敵する品質と、「クラウン」クラスの性能を凝縮するという、極めて野心的な試みでした。
【画像】超カッコいい! これがトヨタの「小さな高級車」です! 画像で見る(30枚以上)
車名の「プログレ」はフランス語で「進歩・進取」を意味し、グレード名の「NC」は「Neo Category(新しいカテゴリー)」を表すとされていたなど、既存概念からの脱却を目指す意志が示されていました。
開発背景には、大きなクルマの扱いにくさを感じ、外見よりも本質的な質を重視する成熟したユーザー層が出現したこともあったようです。
プログレは、「コロナプレミオ」と同等のコンパクトなボディ(全長約4.5m、全幅1.7m)に、クラウンなどに搭載される滑らかな直列6気筒エンジンを搭載しました。
そして内外装の品質はセルシオを目標とするなど、当時の常識を覆すパッケージングを採用しました。
これは、コンパクトながら高品質な欧州プレミアムセダンの影響も受けていたと考えられます。
そのコンセプトを体現するように、エクステリアデザインは抑制の効いた落ち着きのあるものでした。
派手さとは無縁のコンサバティブなセダンスタイルで、専用の「P」エンブレムが特徴です。
しかし、プログレの真価はそのインテリアにありました。
室内は「心地よく落ち着きのある空間」を目指し、素材選びから作り込みまで徹底的にこだわって開発されました。
特に上級仕様「ウォールナットパッケージ」では、ダッシュボードなどに本物のウォールナット材が惜しみなく使用され、シートには高品質なファブリックや本革が設定されました。
また部品の触感や組み立て精度は、セルシオに匹敵するレベルを目指したと言われています。
また5ナンバーサイズながら、クラウン並みのロングホイールベース(2780mm)により、十分な居住空間も確保されていました。
■高級車のあり方に一石を投じた名車「プログレ」
メカニズムも、「小さな高級車」の名に恥じない高度なものが採用されました。
エンジンは、トヨタが誇る「名機」、滑らかで静粛性に優れる直列6気筒「JZ」系の2.5リッターと3リッターを搭載しました。
駆動方式は高級セダンの基本であるFR(後輪駆動)を主とし、2.5リッター車にはフルタイム4WD「i-Four」も設定されました。
トランスミッションは、前期型は4速AT、後期型のFR車には電子制御5速ATを採用しています。
サスペンションは、このクラスでは異例ともいえる贅沢な4輪ダブルウィッシュボーン式が奢られ、快適性を重視した上質な乗り心地を実現していました。
さらに、当時としては先進的な装備も導入されています。
DVDボイスナビゲーション(後期標準)や、ナビ情報と連携して変速を最適化する「NAVI・AI-SHIFT」、レーダークルーズコントロール(オプション)、SRSカーテンシールドエアバッグ(前期オプション→後期は標準)などが用意され、高い機能性も備えていました。
しかし、このように意欲的なコンセプトと高い技術・品質を投入したプログレでしたが、商業的には成功を収めたとは言い難い結果となりました。
1998年の発売から約9年間で生産を終了(2007年)しています。
その背景には、コンセプトが時代の先を行き過ぎていたこと、保守的と評されたエクステリアデザイン、5ナンバーサイズとしては割高に感じられた価格設定(同価格帯にはマークII三兄弟などが存在)、そしてセダン市場自体の縮小などが複合的に影響したと考えられます。
2001年には、よりスタイリッシュな兄弟車「ブレビス」も投入されましたが、こちらも大きな成功には至りませんでした。
販売面では振るわなかったプログレですが、その真面目な作り込みと本質的な品質の高さは、一部の自動車評論家やユーザーから根強い支持を集め、現在では「隠れた名車」として再評価されています。
特に中古車市場では、内外装の質感の高さや直列6気筒エンジンの滑らかさ、そして手頃な価格から、独自の価値を見出すファンに愛されています。
※ ※ ※
プログレは、“小さな高級車”という野心的なコンセプトを、当時のトヨタが持つ技術と品質へのこだわりを結集して具現化した、特筆すべきモデルでした。
市場の主流にはなれませんでしたが、高級車のあり方に一石を投じたプログレの挑戦と本質的な価値は、今なお語り継がれています。
時代の先を行き過ぎた、トヨタの異色の挑戦作としてこの先も記憶される一台となるでしょう。
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みんなのコメント
3.0 5ATウオールナットパッケージでした。写真の本革シートではありません。
何百キロの遠出でも疲れ知らずの本当にいい車でした。
シート素材は皇族センチュリーと同じ織物でハンドル、シフト、ウインカーがウオールナットの美しい素材。いい車でしたね。サスが柔らかくくて同乗者が酔うのと、1速から2速の変速時にドスンというショックがあること、運転席左側の足元がモッコリして狭苦しい以外は言うこと無しの名車でした。