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日本の“フェラーリ・ファン”へ──フェラーリ・ジャパン社長インタビュー

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日本の“フェラーリ・ファン”へ──フェラーリ・ジャパン社長インタビュー

フェラーリ・ジャパンのフェデリコ・パストレッリ社長に本誌編集長の鈴木正文がインタビュー。新型モデル「296GTB」や、今後の展望について訊いた!

フェラーリのDNAとは

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「296GTB」という、シンプルで古典的なネーミングを与えられながら、フェラーリ・ブランド初のV6エンジンにプラグイン・ハイブリッド・システムを組み合わせ、コンパクトなボディを採用したあたらしいフェラーリが、10月15日、日本上陸を果たした。

コロナ禍が暗雲で社会を覆ったこの2年間、フェラーリは「ローマ」、「ポルトフィーノM」、「SF90スパイダー」といったニューモデルを矢継ぎ早に放ってきた。2020年1月に着任し、フェラーリ・ジャパンの舵取りを担ってきたフェデリコ・パストレッリ社長は、この激変期をどう乗り切り、今回のニューモデルをどのように日本市場に展開していくのだろう。

すでに296GTBをドライブしたかどうかを問うと、パストレッリ社長は残念そうな顔を見せた。

「コロナの影響で海外渡航ができなかったため、まだ実体験できていないんです」

フェラーリの地元・モデナからもっとも近い大都市であるボローニャに生まれ、ボローニャ大学出身のパストレッリ社長は、当然幼いころからフェラーリの大ファンだった。父とイタリアGPを見に行ったことも、ジル・ヴィルヌーヴが事故で亡くなった日のこともよく覚えているという。そんな彼にとって、あたらしいフェラーリに接することは常に大いなるよろこびであるという。そんな根っからの“フェラリスティ”でもある彼は、296GTBの特徴についてどう捉えているのだろうか。

「まず個人的にはとてもスタイリングが美しく、ラインナップの他のモデルと異なる特徴を備えていると思います。過去のフェラーリの中では『250LM』がとくに好みなのですが、そのデザインとの強いコネクションを感じます。新型について知ったのは、ちょうど私が日本に来たころかと思いますが、このコンセプトにとても深い共感をおぼえました。あたらしいことへのチャレンジは、時にリスキーでもありますが、勇敢に、誰も予言できないようなものを作ることこそがフェラーリのDNAでもあるのです」

すでに十二分に充実しているかに見えるフェラーリのラインナップにおいて、296GTBはほかのモデルの代替ではなく、追加モデルであるという。その目的はどんなところにあるだろう?

「われわれの顧客にこれまでとは異なるあたらしい楽しさを提供するためです。296GTBはV6とハイブリッドの組み合わせにより、傑出したパワーと軽量を実現します。といっても最高速など絶対的な性能の追求には限りがありますから、目標は数字にはあらわれないエモーションを生むことでした。そうすることで私たちはあたらしい顧客を取り込もうと考えています。近年のラインナップ拡充により、われわれがコンタクトするお客様の幅も広がりました。これまでフェラーリをお考えにならなかった方々の需要にも合致するでしょう」

“リクエストの数より1台少なく作れ”

「フェラーリにとって、“エクスクルーシビティ”は特徴であり、強みでもあるので、特定のモデルを多数作ることは避けたいのです。リクエストの数より1台少なく作れ、というのは、もっとも有名なフェラーリの社是ですが、モデルを増やすことによりあたらしい人々にリーチし、既存オーナーも含め、需要を増やしたいと考えています。"Different Ferraris for different Ferraristi, different Ferraris for different moments. "(フェラーリ愛好家にそれぞれのフェラーリを、それぞれのときにふさわしいそれぞれのフェラーリを)という一文がよくフィットするように思います。ウィークエンドはカントリーロードにおいて296GTBで活発に過ごし、ウィークデイはローマで劇場を訪問する、という具合です」

296GTBの特徴は、V6エンジンの搭載によりコンパクトなパッケージングを実現している点だ。かつてフェラーリの製品企画部門にも籍を置いたことがあるパストレッリ社長は、今後、こうした小型化のトレンドは拡大すると考えているのだろうか。

「将来についてはなんとも言えませんが、296GTBはV6エンジンを採用したことでSF90より150mmもホイールベースを短縮することが可能になり、小型化と軽量化を同時に達成しています。こうしたことが実現したのは、エアロダイナミクスの改善によりダウンフォースの発生を高め、短いホイールベースでも高速での安定性を確保できたからです。エンジンのVバンクの角度を120度として、低重心化を図ったことも操縦性改善にひと役買っています。296GTBはフェラーリの新しい世代を切り開くモデルです。顧客の皆さんもこのパワーユニットとアーキテクチュアを気に入ってくれるでしょう」

ところで、噂にのぼっている純電気駆動車については何か新しい情報はあるのだろうか。

「よくは存じません。日本法人としては、最近導入された数々のモデルに全力を注いでいます。フェラーリはとてもダイナミックな会社です。製品に多くの投資をしており、そのことに誇りを感じています」

コロナ禍で変わったコミュニケーション戦略

2020年初頭に明るみに出たコロナ禍は、多くのビジネスに多大な悪影響をもたらしている。パストレッリ社長がフェラーリ・ジャパンに着任したのは、ちょうどダイヤモンドプリンセス号が海上で隔離されて大騒ぎになっているころのことだ。その後の1年半で、しかしフェラーリの日本におけるビジネスはむしろ、大幅に成長したという。

「われわれは突然、これまでと異なるヴィジョンを持ち、革新的に物事を考えることを強いられました。結果としてお客様とのコミュニケーションは一気にデジタル化が進みました。数年分の進化が一度に達せられた感じです。昔はニューモデルのローンチといえば、一度に数百人を呼んで大掛かりなパーティを開くのが当たり前だったものですが、2020年4月に実施されたフェラーリ・ローマの発表会では、さっそくビデオとオンラインを駆使することになりました。現在ではリアルのイベントを復活させることができ、少人数のイベントをいくつかのグループ、何日かに分けて実施しています。このことで、1対1の会話が充実し、よりお客様との距離が近くなったケースもあります。一度にお呼びする方の数については政府のガイドラインに常に従い、安全を保っています」

今回の296GTBにおいても、時間をかけた丁寧なコミュニケーションを図っていくという。

「顧客向けの発表会では1日あたり5回のプレゼンテーションを実施し、1回にご来場いただくのは20人を上限としています。合計4日間イベントを開催後、富士スピードウェイでイベントを実施します。今年はフェラーリ・レーシング・デイズを開催できませんが、10月28~29日に『パッシオーネ・フェラーリ』として296GTBを展示します。その後、日本にある合計9つのディーラーに新型車両を巡回させます。新規のお客様にも、既存顧客の方々にも、わけ隔てなく新型車を楽しんでいただきたいと考えています。ドライブ可能なデモカーは来年初頭に到着しますので、報道関係者やお客様に試乗の機会を提供します。複数の地域のサーキットで体験していただける機会を設ける予定です」

フェラーリといえば、近づきにくいブランドの代表格だったのも今は昔。笑顔を絶やさないパストレッリ社長のもと、日本でのファン層を着実に拡大していくだろう。

【プロフィール】フェデリコ・パストレッリ氏(フェラーリ・ジャパン社長)
2002年にフェラーリのシニアプロダクトマネージャーに就任。「カリフォルニア」などのプロジェクトにかかわる。その後、パーソナリゼーション&アトリエ部門の開発及びマネジメントや南ヨーロッパ・アフリカ地域責任者などを経て2020年1月より現職。

聴き手・鈴木正文(GQ) まとめ・田中誠司 写真・フェラーリ・ジャパン

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