2月のトヨタ「bZ4Xツーリング」に始まり、4月にはスバル「トレイルシーカー」、5月にはホンダ「Super-ONE」など、2026年に入り、国産メーカーから新型のBEVが相次いで登場しています。商用BEVまで含めると、トヨタ・スズキ・ダイハツが3社共同開発したピクシス バン/eエブリイ/e-ハイゼット カーゴ / e-アトレーも加わっており、BEVの選択肢は着実に広がっています。
新型モデルが相次いで登場していることで、「次はBEVも選択肢に入るかな」と考える人も増えているかもしれませんが、気になるのはその使い勝手。充電インフラの問題や航続距離など、BEVにはガソリン車と異なる特性があります。なかでも「夏は航続距離が短くなる」「急速充電に時間がかかる」といわれる点は懸念されますよね。
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真夏のBEVには何が起こるのか。エアコン使用による電費への影響や急速充電の変化、いわゆる「バッテリー熱ダレ」の仕組みについて解説します。
文:吉川賢一/アイキャッチ画像:Adobe Stock_24K-Production/写真:Adobe Stock、NISSAN、TOYOTA、SUBARU、HONDA
エアコンだけではない 夏のBEVで電費が落ちる理由
連日30度を超え、35度以上の猛暑日も珍しくなくなった日本の夏。いまやエアコンは快適装備ではなく、熱中症から身を守るために欠かせない装備です。クルマでも、エアコンを使わずに運転することは、現実的ではありませんよね。
ただし、エアコンを使うと燃費や電費が悪化するのは悩ましいところ。ガソリン車ではエアコンのコンプレッサーをエンジンが駆動するため負荷が増え、一般的には真夏の市街地で5~20%程度燃費が悪化するケースもあるとされています。
多くのハイブリッド車も、エアコンに使う電動コンプレッサーに必要な電力を補うためエンジンの稼働が増え、結果として燃費が低下し、BEVも、走行用モーターとエアコンが同じ駆動用バッテリーの電力を使うため、エアコンの消費電力が増えれば、そのぶん走行に使える電力は減り、結果として航続距離も短くなります。
しかしながら、BEVの冷房による電費への影響は、冬の暖房ほど大きくありません。暖房は熱そのものをつくり出すのに対し、冷房は熱を車外へ移動させる仕組みのため、消費電力を比較的抑えることができる場合が多いからです。
もちろん35度を超えるような猛暑日の炎天下に駐車したクルマでは、熱くなった車内を冷やすためにエアコンの消費電力は一時的に大きくなります。しかし、真夏のBEVにおいてそれ以上に消費電力が大きくなるのが駆動用バッテリーの冷却です。
最近のBEVの多くは、高温になりやすい駆動用バッテリーを適切な温度に保つため、冷却システムを備えています。このシステムも電力を消費するため、渋滞や炎天下での駐車、高速道路での連続走行、急速充電後など、バッテリーの温度が上がりやすい条件では、電費がさらに悪化しやすくなります。急速充電中に車体下部から「ゴーーー」と凄まじいファンの作動音が鳴り響くのは、バッテリーを必死に冷やしている証拠です。
真夏の急速充電が遅くなる? 「バッテリー熱ダレ」の正体
真夏の高温は、急速充電の速度にも影響が及びます。リチウムイオンバッテリーは、高温状態が続くと劣化が進みやすい特性があり、前述の冷却システムはそのための装備ですが、それでもバッテリー温度が高くなりすぎると、今度はバッテリーを保護するための制御が働きます。
これが「バッテリー熱ダレ」とよばれる現象です。バッテリー温度が一定以上になると、車両が急速充電時に受け入れる電力を制限したり、充電速度を抑えたりするものです。リチウムイオンバッテリーは一般的に20~40度程度で性能を発揮しやすく、高温になるほど保護制御が働きやすくなります。これはバッテリーを長く使うための制御であり、「充電器が故障した」「BEVの性能が落ちた」というわけではありません。
とくに真夏は、高速走行や急速充電といった負荷の大きい状況が重なると、バッテリー温度が上昇しやすくなります。そのため、短時間で急速充電を繰り返すと、バッテリー温度が十分に下がらないまま次の充電を行うことになり、充電速度が徐々に低下してしまうことにつながってしまうのです。
最新BEVは暑さ対策も進化 空冷から液冷へ進んだ温度管理
ただ、近年発売されるBEVに採用されている液冷式のバッテリー温度管理システムは、かつての空冷式に比べて冷却性能が高く、高温時でもバッテリー温度を管理しやすくなっており、夏場でも急速充電時の性能を維持しやすくなっています。
さらに一部の車種では、充電開始時から高い充電性能を引き出しやすくなる「バッテリープレコンディショニング」を備えています。ナビで急速充電器を目的地に設定すると、システムがバッテリーの状態を先読みして、到着前から温度調整してくれるもので、これによって充電速度低下を抑制することができます。
そのため、日常の買い物や通勤といった使い方であれば、高温による影響を体感する場面はそれほど多くないでしょう。もちろん真夏に長距離を高速移動し、短時間で急速充電を何度も繰り返すような条件では影響を受けることもありますが、昨今のBEVは航続距離も延びており、充電回数そのものを減らせるケースも増えています。
ちなみに、BEVは冬にも電費が低下しますが、こちらは、前述した暖房の影響のほか、低温によってバッテリー内部の化学反応が鈍くなり、充放電効率が低下、取り出せる電力量が減るなど、バッテリーの性能が十分に発揮できなくなるため。夏のバッテリー冷却による電力消費や、高温からバッテリーを守るための保護制御とは理由が異なります。
過度な心配は不要だが、真夏の高速走行では充電計画に余裕をもたせよう
夏は確かに電費や急速充電に影響が出ることがありますが、その多くはバッテリーを保護し、性能を維持するために車両が行っている制御による影響。さらに、近年のBEVは、液冷式バッテリー温度管理システムやバッテリープレコンディショニングなど、暑さに対応する技術も着実に進化しています。
そのため、必要以上に不安を感じる必要はありませんが、夏休みの旅行や帰省などで真夏にBEVによる長距離移動を予定している場合は、充電速度が低下する可能性も考慮し、充電計画に少し余裕を持たせておくといいかもしれませんね。
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