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「9連休でも帰りません」 お盆休みを揺らす交通費ショック! 47%が「帰省なし」を選ぶ移動市場の変化

掲載 更新 22
「9連休でも帰りません」 お盆休みを揺らす交通費ショック! 47%が「帰省なし」を選ぶ移動市場の変化

お盆移動市場における需要構造の変化

 2026年の夏は、カレンダーの並びから長期の休みを取りやすい。暦通りに休む企業なら、お盆期間の8月13日(木)から16日(日)まで4連休となる。そこに11日(火)の祝日「山の日」を組み合わせるのが2026年の特徴だ。間の12日(水)に休暇を取れば6連休となり、さらに10日(月)も休めれば、8日(土)から「最大9連休」の大型連休となる。まとまった時間を使って遠方へ帰省したり、旅行に出かけたりするには、好条件の日程といえる。しかし、こうした条件の良さとは裏腹に、2026年のお盆の移動では交通費の値上がりを受けて人々の判断が変わった。どの乗り物を選ぶかよりも、何を大事にするかで選び方が分かれる市場になりつつある。WILLER MARKETING(大阪府大阪市)が2026年の夏(お盆)の帰省にかかる費用についておこなった最新のアンケート調査によると、帰省を予定している人の50.0%が、2025年より費用が上がったと答えた。

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 その一方で、帰省で利用したい乗り物は新幹線と高速バスがともに58.7%にのぼる。特定の乗り物に偏るのではなく、目的や予算に合わせて使い分ける傾向が浮かび上がった。

 調査のあらましは次の通りだ。対象はWILLER会員で、有効回答数は1829人。期間は2026年6月8日から6月14日、インターネットを通じて実施された。

 物価高で移動する人が一律に減っているように見える。しかしその内側では、何をそのままにし、何を減らすかという人々の判断が細かくなってきた。人々は移動をひとまとめにして考えるのをやめ、どうしても外せない移動と、予算や日程をやりくりできる移動にはっきりと分けて決めている。

 家計の予算に合わせて乗り物や滞在の仕方をうまく組み合わせる動きが広がり、市場で求められる中身そのものが変わりつつあるのだ。

生活課題に向き合う帰省の役割変化

 今回の調査で最も目立つのは、費用が上がったからといって、帰省する人がそのままいなくなるわけではない点だ。

 2026年のお盆に帰省する予定はないと答えた人は47.1%で最も多かった。一方、予定している人は31.1%、未定は21.9%にとどまる。帰省を予定していない理由としては、仕事や学業、混雑を避けることに加えて、交通費などの費用がかかるためが12.7%を占めた。

 人々にとって帰省は、買い物や旅行のようなお金を使うだけの行事には収まらない。家族と過ごす時間や故郷とのつながりを保つといった良さがある半面、交通費や宿泊費などの負担も生じる。そのため、費用の値上がりに対して、行くか行かないかのふたつにひとつを選ぶのではなく、乗り物や日程、滞在のやり方を工夫する方向へと広がった。

 実際、帰省には心や体に少なからず負担がかかる。「ウェディングドレスショップJUNO」を運営する渕上ファインズ(福岡県福岡市)の調査(2026年7月14日発表)によれば、実家や義理の実家への帰省を普段より疲れると感じる人は、結婚している男女の46.4%に及んだ。特に女性は56.4%と高く、義理の実家への気遣いや事前の荷造り、手土産の準備が重くのしかかる。こうした費用の値上がりや心身の疲れは、習慣や付き合いで行っていた帰省をやめる判断のよりどころとなる。

 それでも負担を引き受けて帰省を選ぶ背景には、離れて暮らす親の様子を確認したり、実家の将来について話し合ったりといった、切実な目的が隠れている。「LIFULL 介護」を運営するLIFULL senior(東京都千代田区)の調査(2026年7月16日発表)では、直接会う帰省を通じて7割以上が親の老いや様子の違いを感じたと答えた。お盆明けには親の衰えを目の当たりにした家族から、老人ホームへの問い合わせが約30%急増するというデータもこれを裏付けている。

 同時に、親が住む実家の扱いも深刻な問題だ。訳あり不動産の再生支援サイトを運営するフィリアコーポレーション(東京都板橋区)の調査(2026年7月29日発表)では、子ども世代の54.0%が自分が死ぬまで実家を残してほしいと望む半面、空き家の管理や建物の老朽化によって厄介なお荷物になることへの対策が重くのしかかる。

 さらに、帰省先での思いがけない出来事も見逃せない。対面診療とオンライン診療を提供するクリニックフォアグループ(東京都港区)の調査(2026年7月24日発表)によると、お盆などの長期休暇中に体調を崩した際、病院が休みなどで受診できない人や我慢してしまう人が計74.2%に上った。慣れない環境で体調を崩す不安を抱えながら、移動を強いられる様子が浮かぶ。

 このように選ばれた帰省は、遊びや楽しみの枠を超えて、親の介護や人生の終わりへの備え、財産の引き継ぎ、空き家の問題に向き合い、病気の不安にも備える重要な行事へと役割を変えつつある。

新幹線と高速バスに二極化する交通選択

 交通の市場では、価格が安いサービスが必ず選ばれるとは限らない。

 今回、新幹線と高速バスを利用したいという割合がともに58.7%となった事実は、その傾向をはっきりと示している。

 高速バスは、費用を抑えたい人にとって有力な候補となる。前述のWILLER MARKETINGの調査では、帰省の費用を節約する工夫として高速バスの利用が47.8%で最も多かった。夜行便で移動する時間をうまく使える点も、時間に限りがある人には価値を生む。高速バスを選ぶ層は、夜の移動時間を睡眠に充てることで、交通費と宿泊費をまとめて抑える対応をとった。

 一方、新幹線は移動時間の短さや快適さを大切にする人からの支持が厚い。長距離の移動では、お金で時間を買うという考え方も成り立つ。混み合う時期に運賃が高くなっても新幹線を選ぶ層は、体の疲れを抑え、現地で自由に使える時間を確保するためにお金を払っている。

 現在の移動市場では、価格の高い安いという分け方ではなく、運賃、かかる時間、体への負担のどれを優先するかによって利用者が分かれた。中間の乗り物ではなく、お金で時間を買う路線と、移動と宿泊を組み合わせて費用を抑える路線という、はっきりと分かれたふたつの求めが並び立っている。

往復1万円の希望額に見る家計防衛線

 人々の判断を読み解くうえでわかりやすいのが、交通費に対する予算の意識だ。

 調査では、往復1万円以内なら帰省したいと考える人が約8割を占めた。一方で、実際には約半数が希望の額を上回る費用を払わざるを得ない。この往復1万円という希望額は、物価高の中で家計を守るために設けられた、気持ちの上での限度として働いている。

 この厳しい予算への意識の背景には、家計へのいくつもの圧力が潜む。日程調整ツール「調整さん」を運営するミクステンド(東京都港区)の調査(2026年7月1日発表)によれば、2026年の夏休みに海外旅行を予定している層はわずか8.7%にとどまった。諦めた理由のトップは、円安で割高に感じることや、現地の物価が高いことだった。海外を諦めて国内の移動に切り替えた層であっても、財布のひもは固い。

 さらに、紙製品や化成品を作るマルアイ(山梨県市川三郷町)の調査(2026年7月15日発表)によれば、帰省したときに子どもへ渡すお盆玉の総額が2025年より増えると答えた人(38.5%)が大きく増えた。帰省先での付き合いや滞在にかかる費用など減らしにくい出費があるため、手前の交通費を削ってやりくりしようとする行動が目立つ。

 こうした違いは、人々が移動そのものを不要と考えているわけではないことを示している。むしろ、帰省したいという思いと、実際に払える金額との間に隔たりが生じている事実を映し出している。

 交通を担う事業者に必要な対応も、一律の値引きや価格の見直しだけでは十分とはいえない。安い価格を求める層、移動時間を短くしたい層、快適さを優先する層など、それぞれの予算や目的に合わせたサービスの展開が欠かせない。

滞在先での体験重視と時間効率の追求

 これまでお盆の移動は、混み合う時期の人の多さをさばく面が強かった。しかし、物価の上昇や生活にかかる費用の変化によって、利用する側の判断の基準は大きく変わった。

 かつては目的地まで最も短時間で着けるかが、乗り物を選ぶ主な基準だった。現在ではそれに加えて、家計への影響、時間の無駄のない使い方、滞在先での過ごし方など、いくつもの条件を組み合わせて決める場面が増えた。

 この選び方の広がりは、移動先や滞在先での行動にも影響している。例えば時間の使い方において、人々は滞在先でも時間に見合う効果を厳しく求め始めた。前述のミクステンドの調査によれば、旅行や帰省先の飲食店での待ち時間は30分未満が66.5%を占める。また7割強が、追加の料金を払って優先して入れる仕組みの利用に前向きな姿勢を見せている。不要な待ち時間を省き、お金を払ってでも滞在中の満足度を高める行動がすっかり定着しつつある。

 また、家計への負担を抑える行動も節約だけに終わらない。全国の短い時間の仕事を結びつけるサービスを運営するご近所ワーク(東京都港区)の調査(2026年7月29日発表)では、物価高への対策として帰省先や旅行先で単発の仕事に参加したいと考える人が40.7%に達した。移動先をお金を使うためだけにするのではなく、空いた時間で働いて費用を取り戻す動きが見られる。

 さらに、帰省先での食卓の形も変化した。高級フレンチのお取り寄せ専門店「ごちそう本舗」を運営するサンク(静岡県浜松市)のデータによると、自社のネット通販の注文の82.4%が自宅で受け取って持ち込む自分たち向けであり、客一人あたりの金額は1万199円と贈り物用(8736円)を上回る。手軽に用意できる点を評価する声も98件に及んだ。高齢の親に料理の負担をかけず、温めるだけの高級なお惣菜を持ち込んで過ごすやり方が広まっている。

 くわえて、若い世代にとっては通信環境の良さも滞在の満足度に直結する。通信の設備事業を展開するALL CONNECT(福井県福井市)の調査(2026年7月29日発表)によれば、20代の49.6%が帰省や旅行中にネットの利用時間が増えると答えた。一方、42.4%が通信の容量不足を経験しており、そのうち41.4%は速度が制限されたまま我慢するという。滞在先での困りごととしては、宿泊先のWi-Fiが不安定なこと(26.7%)や通信速度の遅さ(27.2%)が上位にあがる。ネット環境の良し悪しも、現地での快適さを左右する大切な条件だ。

 この変化は、交通を担う事業者やサービスを提供する企業にとっても、これまでの対応を見直すきっかけとなる。利用する人の数を保つには、価格を見直すだけでなく、移動時間や滞在先で求められる価値に合わせたサービスを広げていかねばならない。利用者にとっても選べる幅が広がることで、目的や予算に合わせたしなやかな移動ができるようになった。

輸送量の競い合いから価値適合への移行

 物価の高止まりを背景に、お盆の移動市場ではこれまでのような一律の回復ではなく、利用する人ごとの条件に合わせた選択が広がっている。

・新幹線を選ぶ人
・高速バスを選ぶ人
・帰省の時期をずらす人
・旅先で働く人
・そもそも移動を見送る人

など、その選び方はさまざまだ。それぞれの判断には、費用、時間、生活の環境という異なる事情がある。これまで交通を担う事業者は、混み合う時期にどれだけ多くの人を運べるかという人数の多さを競ってきた。しかし、利用者の行動が細かく分かれた現在、事業者に求められる競争のポイントは、規模を確保することから大きく切り替わった。

 これからの移動市場では、どの乗り物が勝つかという見方よりも、どのような条件を持つ人にどのような価値を届けるかという見方が問われる。予約の取りやすさや柔軟な価格の仕組み、現地での滞在の手段とうまく結びつけるなど、利用する人の状況に合わせた移動全体の使い勝手が、事業者の評価を分けるかもしれない。

 お盆という大勢が移動する機会は、交通サービスの優劣を競う場ではなく、人々が移動に何を求めているのかをはっきりと映し出す場へと変わったのかもしれない。(キャリコット美由紀(観光経済ライター))

文:Merkmal キャリコット美由紀(観光経済ライター)

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みんなのコメント

22件
  • あつし
    混雑がわかってて、無駄な労力は使いたくないから移動はしない。
  • とましの
    暑いので無理に動かない方が良いですよ。
    お金も使わなくて済みます。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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