この記事をまとめると
■コブラやGT350などの大排気量FRスポーツカーで有名なシェルビー
クルマ好きが狂喜するバカっ速伝説! 1960年代に300km/hオーバーを達成した「シェルビーACコブラ」とは何ものか?
■じつはシェルビーはFFハッチバックもチューニングして限定販売していたことがあった
■オムニGLHSの2016年のオークション落札価格はたった275万円だった
キャロル・シェルビーによる隠れたホットハッチ
「シェルビー」と聞けば、たいていの人はフォード・マスタングをベースにチューニングした「GT350」や「GT500」、ACエースに大パワーV8をぶち込んだ「コブラ」といった刺激的なスポーツカーを思い浮かべることだろう。実際、大排気量エンジン、後輪駆動、そして強烈なパフォーマンスがシェルビーの代名詞ともいえる。
しかし、シェルビーの歴史のなかには、少し毛色が違いながらも「狂気」が宿ったモデルが存在している。それが、1980年代に生み出された「シェルビー・オムニ GLHS」だ。
オムニとは、当時のクライスラーがダッジブランドで販売していた前輪駆動の小型な4ドアハッチバック。いわば実用性を重視したコンパクトカーで、見た目からしても速そうな雰囲気はまったくない。ところが、この小さなクルマにキャロル・シェルビーは目をつけた。
1984年、ダッジはシェルビーによってエンジンとサスペンションが強化された「オムニGLH」を発売する。この「GLH」というネーミングが、すでにブッ飛んでいた。「GLH」とは「Goes Like Hell(猛スピードで行くぜ)」の頭文字なのだ。大衆車にこんな物騒な名前を付けるあたりが、いかにもシェルビーらしい。
そんなオムニGLHをシェルビーは自ら500台確保し、最終進化版を1986年に限定車として発売。それこそが「シェルビー・オムニGLHS」だ。ちなみにこちらの「GLHS」は、「Goes Like Hell S’More」、つまり「もっと猛スピードで行く」といった意味。もう、名前からしてふざけている。
しかし、その中身はなかなかに侮れない。2.2リッター直4ターボのタービンをGarrett製として大型化。さらにインタークーラー、専用インテーク、大容量インジェクターなどを投入し、最高出力は175馬力、最大トルクも175lb-ft(約237Nm)に達したという。
それでも「175馬力しかないじゃないか」と思うかもしれない。しかし、GLHSの武器は「軽さ」にある。車重は約2540ポンド、つまり約1150kg。現在の感覚からしてもかなり軽量であり、そこにシェルビーのチューンドターボエンジンを組み合わせたことで、0-60mph(約96km/h)は6.5秒とされた。実際、当時の広告には、「ポルシェ、フェラーリ、アウディ、BMWを全車、後ろに置き去りにする」といった過激なコピーを謳っていた。
もちろん、シェルビーはエンジンだけをいじったわけではない。サスペンションには調整式KONIダンパーを採用し、アンチロールバーも強化。15インチのシェルビー・センチュリオン・アルミホイールには205/50VR15の高性能タイヤを組み合わせ、全車5速MTの設定だったなど、ハンドリングにもしっかりと手を入れて走る楽しさを追求していた。
外観はブラックのボディに専用グラフィックを与え、インテリアにはレザーステアリングやシェルビーのシリアルプレートが装備されるなどの差別化も図られていた。
シェルビーといえば、自然吸気の大排気量エンジンをその排気量に任せてカリカリにチューニングしたFRのスポーツモデルというのが一般的なイメージだが、じつはそれとはまったく逆なFFホットハッチも手がけていたのだ。
ちなみにシェルビー・オムニGLHSであるが、キャロル・シェルビー自身が所有していたという1台が2016年のモントレーのオークションに出品されている。走行距離も7733マイル(=約1万2445km)でキャロルの愛車というヒストリーありの上物であったにもかかわらず、その落札価格は2万7500ドル。当時は1ドル約100円であったから日本円にして約275万円だ。きっと当時は誰も注目していなかったのだろう。
しかし、いまあらためてシェルビー・オムニGLHSを振り返ってみると、どうしてなかなか痛快な一台だったのではないだろうか。もしも同車がいま再びオークションに出品されたらいったいいくらで落札されるのか、非常に気になるところだ。
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