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洗練されたスーパーSUV──新型アストン・マーティンDBX707試乗記

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洗練されたスーパーSUV──新型アストン・マーティンDBX707試乗記

アストン・マーティン「DBX」に追加された高性能版「707」に今尾直樹が乗った!

まるでロータスみたい

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最高出力707ps!
最大トルク900Nm!
最高速310km/h! 
0~100km/h加速3.2秒!

「世界でもっともパワフルなラグジュアリーSUV」をうたうアストン・マーティンDBX707に東京都内で試乗した。走りはじめるやいなや、う~む。こんなことがあるのか……。と驚嘆した。

DBX707はDBXの単なるパワーアップ版ではなかった。マッチョ・テイストではないのである。まったく。むしろより洗練されている。まるで……と筆者は大まじめに主張するのですけれど、まるで……、思い切っていいますね。まるでロータスみたいなのだ!

そんなアホな!? いくらなんでも、全長5mで、ホイールベースが3mを超え、車重がカタログ値で2245kg、車検証だと2310kgもある。ラグジュアリーSUVのなかでは軽いにしても、絶対的には重たい。フロント・エンジンの背の高い4WDの、メルセデスAMG製4.0リッターV8ツイン・ターボを載せた、怪獣のような風貌の5人乗りの乗用車が、車重1tを切るライトウェイト・スポーツカーの代表作「エリーゼ」みたいだなんて! それはない。絶対にないやろ。

といいつつ、ツッコミのひとが運転してみると、あ、ほんまや。

というのがある種の会話のパターンだけれど、あいにくツッコミ担当はいないため、筆者のひとり語りは続く……。

エリーゼはいくら比喩だとしても、大袈裟かもしれない。では、V6の「エヴォーラ」ならどうか。似ている。エヴォーラはエリーゼの延長線上にある。であるなら、DBX707はロータスみたいだ。という筆者の印象は間違っていないのではあるまいか。あくまで個人のイマジネーションのお話です。でも、どうしてそんなことを思ったのか、以下ドキュメンタリィ・タッチでお伝えしたい。

う~む。と驚嘆せずにはいられない。

それは、7月某日の夕方のこと。小雨がちょっと降っていた。青山一丁目にあるアストン・マーティン東京の2階屋上の駐車場で、筆者は試乗車のDBX707に乗り込み、その華やかな車内に一驚した。

センター・コンソールにカーボンが用いられていたりして、昨年試乗したDBXの初期型より、つくりがよくなっている気がした。スポーツカー然としたシートは、最近の流行なのだろう。どこかSFっぽいデザインに思える。

ダッシュボード中央に丸いボタンが5つ並んでいるのは近年のアストン・マーティン共通で、真んなかのひときわ大きなボタンを押す。4.0リッターV8ツイン・タ―ボは、例のごとくヴオンッという、ちょっとエレガントな爆裂音とともに目覚め、静かにアイドリングを開始する。この瞬間、DBX707はそうとう洗練されている、という予感がした。

アクセル・ペダルを踏み込み、動き出した、その動き始めのレスポンシヴなこと。坂道をくだって歩道に降り、小さな段差を越えて青山通りに出ようというその刹那、青山通りに躍り出て、数m先の青山一丁目を左折すべく、ステアリングを切ったときのステアリング・フィール、身のこなし、アクセルをもうちょっと踏んだときの反応に、筆者はいちいち感心したのだった。う~む。と驚嘆せずにはいられない。

大きなクルマは大きなクルマのように反応する。という予測を、人間だれしもするものである。少なくとも自動車を運転するひとなら。ところがDBX707きたら……、まるで小型車を運転しているみたいなのだ。まるで……、と浮かんできた車名は、われながら信じられない。まるで……と筆者は大まじめに主張するのですけれど、まるで……、思い切っていいますね。まるでロータスみたいなのだ!

というわけなのである。 

乗り心地のよさは奇跡

DBX707についての理解を深めるために、スペックを確認しておこう。前述したように発表は本年2月1日。ごく簡単に申し上げれば、昨年上陸したアストン・マーティン史上初のSUV、DBXの高性能版である。

ハードウェア上のハイライトは、3982ccV8の2基のターボチャージャーにレスポンスに優れるボール・ベアリング式と独自のエンジン・キャリブレーション(calibration:最適化)を採用していることだ。これにより、最高出力は550ps/6500rpmから707ps/6000rpm、最大トルクは700Nm/2000~5000rpmから900Nm /4500rpmへと大幅に向上している。最高出力では500rpm低い回転数でプラス157psものパワーを稼ぎ出していることに注目で、それが可能になったのは、200Nmもトルクをぶ厚くすることに成功しているからだ。

エンジンの性能アップに合わせて、9速オートマチック・トランスミッションを、トルクコンバーター式から湿式の多板クラッチ式に変更していることもハードウェア上の注目点である。トルクコンバーター式より大出力に対応でき、ギア・チェンジがより素早く、シフト・フィールもよりレスポンシヴでダイレクト。というのがアストン・マーティンの主張で、一旦流れに乗ってしまうと、その変速の瞬時にしてスムーズなこと、でも、歯切れのよい軽いショックを伝えてくれることに感心する。

試乗車はオプションの23インチを装着しており、タイヤはピレリPゼロ、前285/35、後ろは325/30という薄さである。さぞや硬いだろう……と、覚悟をしていたけれど、ここでも裏切られた。DBX707の乗り心地のよさは奇跡である。いったいどうやって、このような快適性をつくり出しているのか?

ひとつにはカーボン・セラミック・ブレーキを標準装備していることがある。これによりバネ下が40.5kg軽くなっている。ダンピング、エア・サスペンションをはじめとする足まわりの最適化も施されていて、その動きが絶妙に感じられる。23インチの巨大なホイールが足元でバタバタ動いている印象がまったくない。エア・サスペンション特有のフワフワした浮遊感もない。

エンジンもまた、ボール・ベアリング式ターボチャージャーが効いているのだろう。大きな風ぐるまは、強い風を与えないとまわらないわけである。もちろん。それがフツウの大排気量V8ターボ・エンジンのフィールというものだ。フェラーリに代表されるように例外もある。と書いて、ちょっと気になったのでネットで検索してみたら、フェラーリ「488GTB」のターボチャージャーは日本のIHIのボール・ベアリング式だというフェラーリのHPの記事が出てきた。でも、707の4.0リッターV8ツイン・ターボは、488GTBともちょっと違っている。大きなタンクにトルクがいっぱい入っていて、蛇口をひねると、それが自在に出てくる。というのがフェラーリのV8だとすると、DBX707のV8はどこかにトルクが貯められている、というのではなくて、蛇口をひねると、欲しいだけのトルクが出てくる。タンクを背負っている感じがしない。

普通のことばでいうと、軽快ということになるわけですけれど、4.0リッターV8、しかもメルセデスAMG製をベースである。いやいや、それはない。絶対にないやろ。

といいつつ、ツッコミのひとが運転してみると、あ、ほんまや。……相方がいると、いろんなバリエーションができるわけである。いまのところひとつしかないけど。

というわけで、今回はごく限られた時間、ごく限られた状況でのアストン・マーティンDBX707のファースト・インプレッションを報告させていただきました。価格は3119万円。DBXより600万円ほど高価だけれど、お求めになった方は、お金持ちであることの幸せを感じられるのではあるまいか。

DBX707はDBXの持っていたライトウェイト感覚、人馬一体感にいっそう磨きがかかっている。そういえば、本年2月1日に発表されたDBX707のプレスリリースにこんな一文があったので紹介しておきましょう。

A sabre in a segment of sledgehammers.
大型ハンマーのセグメントにおけるサーベル。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)

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  • でもエンジンはメルセデス製なんだよなぁ。自社開発じゃないW
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