「アグリカルチャーバイク」や「ファームバイク」という存在をご存じでしょうか? 直訳すれば「農業バイク」という意味ですが、文字通り、そういうジャンルのバイクが世界にあるんです。
とりあえず、当記事では「農業バイク」とそれらを呼ぶことにしますが、どんなバイクかというと、アメリカやオーストラリアなど広大な土地で農業や牧畜業を行っている国々で、作業者が農地や牧場内を移動するために用いられるバイクです。
【関連写真14点】巨大なキャリヤや泥除けなど、農業バイクは無骨な装備がカッコいい!?
……というわけで、そうした環境がない日本国内では販売されていないバイクですが、実は、日本メーカー4社全てが海外向けに「農業バイク」を生産しています。
パッと見、オフロードバイクのような「農業バイク」ですが、ならではの装備として、左右両方にサイドスタンドがあったり、フロントとリヤに大型のキャリヤを備えていたり、そして、長い泥よけを装着していたりする点が挙げられます。
まず、左右両方にサイドスタンドがあるのは、農地や牧場では、必ずしも左側にサイドスタンドを立てて、安定して車両を停められるとは限らないため。
農地や牧場の地面といえば、当然、土、草地、砂利など未舗装なのが当然。そして、地面は平らとは限らず、あぜ道は狭い。
そんな状況下でも、左右それぞれにサイドスタンドがあれば、どちらかのスタンドで安定して駐車できるほか、あぜ道の左右両方に畑などがある場合、スムーズに目的の畑へと降車できます。
キャリヤはもちろん、作業道具や収穫物などをたくさん運ぶため。
泥よけは……ここまで読んでいただいたら、説明不要でしょう(笑)
日本メーカーの車両でありながら、残念なことに輸出専用車である「農業バイク」は日本で見ることはできない……と思いきや、なんと「農業バイク」を手に入れて、日本で乗っている人を発見!
一体「農業バイク」のどんな部分を魅力に感じたのでしょうか?
農業バイクのスズキTF125に乗って楽しんでいる様子をTwitterなどで発信しているうるちさんに話を聞きました。
南米では今も新車で販売されている スズキTF125
──なぜ「農業バイク」のTF125を購入しようと思ったのでしょうか。
10年間くらい乗っていたスズキ バーディー50からの乗り換えで、通勤にも使える125ccのバイクを探していたんです。
CT125・ハンターカブも検討していたのですが、納車まで時間がかかるようなので断念しました。
そもそも、林道走行にも興味があったのでオフロードをある程度走れるバイクで、移動手段として使うので大きなキャリヤが装備しているバイクがいいなと思っていたのですが、その条件を満たすバイクとして「農業バイク」という選択が出てきたのです。
牧場や農場など過酷な環境下でも活躍する「農業バイク」は、タフなイメージがあるのもいいな、と。「農業バイク」ならではの装備ってカッコいい!と思うようになり(笑)。
──「農業バイク」と言っても色々ありますが、TF125を購入する決め手となった理由はありますか?
「農業バイク」の中では、ヤマハ AG100やスズキ DF125も検討しましたが、中古でしか購入できないのでこちらも断念……。そうこうしているうちに、TF125なら新車が購入できることを知り、最終的に決定したという次第です。
あと、TF125はデザインが気に入りました。
オフロードバイクっぽいのにリヤサスペンションは2本ショックでレトロな雰囲気ですし、ハンドル周りの無骨なガード類や国産車っぽくない奇抜な色使いなども味があって。
CT125・ハンターカブは超売れているといいますが、TF125というチョイスならカブる人もいないと思いますし、いいバイクを買ったのかなと思います(笑)。
──本来、牧場や農地などを走らせるためのバイクである「農業バイク」ですが、キレイに舗装された公道を走ったときの乗り心地はどんな感じなのでしょうか?
「農業バイク」として使う分にはいいのかもしれませんが、舗装された道を走らせると少し厳しい部分があるように思います。
スポーツバイクみたいな感覚で運転するとスルッと滑るし、純正装着されていたブロックタイヤはウェット性能が無いに等しいので、雨の日に運転はけっこう注意が必要です。
タイヤは交換しようとも考えていたのですが、せっかくなら「農業バイク」ならではの乗りにくい状態をしばらく味わってみようかなと思って、タイヤもそうですが、ちょっと暗い感じのヘッドライトなどもそのままにしています。
これといった故障もなく手が掛からないスズキTF125
──日本で販売していないバイクですから、万が一故障してしまうと部品を調達するのも大変そうだと思うのですが……故障もあったりして手が掛かるバイクでしょうか?
手が掛からないバイクだと思います。これといった故障もなく、購入した時からキャブの調整もしてないし、エンジンのかかりが悪くなったこともありません。
強いて言うなら、車両の発電量が足りないのか、ウインカーを多用する場面が多いと、バッテリーが上がってしまうことくらいです。
あとはギヤ抜けですね。この車体に対する最大の不満はギヤ抜けと言っても過言ではないです。
スズキ TF125はシートの座り心地がいい!?
──ブログでは、シートの座り心地を絶賛していましたね。
すごく良いですね。自宅のある愛知県から静岡県まで往復400km走ってもお尻が痛くなりませんでした。
ハンドルも丁度いい位置にあって、普通のオフロード車と比べても姿勢がラクなので腰も痛くなりづらいですね!
──うるちさんがTF125に乗っていて一番楽しいと感じる部分はどこですか?
2スト全般に言えることかもしれませんが、パワーバンドをつかんでどんどんギヤを変えて走るのがとても面白いです。ゲーム感覚じゃないですけど、その瞬間は乗ってていて本当に楽しいと感じますね!
冒頭でお伝えしたように、TF125のような「農業バイク」は国産メーカー各社が生産していて、様々な車種があります。
次は、その一例として、オーストラリアやニュージーランドなどで活躍する農業バイクを紹介していきます!
ホンダ XR190
オーストラリアやニュージーランドで販売されているホンダ製「農業バイク」の定番モデルで、184ccの空冷単気筒エンジンはフューエルインジェクションを採用。
販売される国ごとにフロントホイールのサイズが違い、オーストラリアは21インチ、ニュージーランドは19インチとなるほか、オーストラリアでは「AG-XR」の別名も与えられています。
リヤとフロントの大型キャリヤ、ハンドガードや大型の泥除けフェンダー、エンジンガード、左右それぞれにあるサイドスタンドなど、「農業バイク」おなじみの機能は完備!
ちなみに価格はオーストラリアで5099オーストラリアドル(日本円で約38万円)、ニュージーランドでは5295ニュージーランドドル(日本円で約40万円)となります。
ヤマハ AG200F
オーストラリアやニュージーランドで販売されているAG200Fですが、80年代の日本でも「AG200」という車名で販売されていた時期がありました。
ただし、「国内仕様」といえるAG200は普通のバイクと変わらずサイドスタンドは左側に1本だけでしたが、AG200Fは「農業バイク」のスタンダードともいえる左右両方サイドスタンド仕様となっています。
このほか、AG200Fはクラッチを握った状態でもレバーをロックできる機構や、大型の泥除け&前後キャリヤなど「農業バイク」らしい装備が与えられていますが、これら装備はAG200F専用というわけではなく、国内版のAG200にも付いていました。
スズキ DR200SE/トロージャン
ニュージーランドではDR200SE、オーストラリアではトロージャンの名で販売される「農業バイク」。
どこかで見たことあるような……と思う人もいるかもしれませんが、同車のベースとなっているのは1993年に発売されたオフロードバイク・ジェベル200。
燃料タンク容量もジェベルの特徴を受け継ぎ、13Lと「農業バイク」にしては多めとなっています。
とはいえ、「農業バイク」定番の装備はほぼそろっており、左右それぞれのサイドスタンド、大型の前後キャリヤ、大型の泥よけ、エンジンガードなどが装着されています。
価格はオーストラリアで4490オーストラリアドル(日本円で約34万円)、ニュージーランドでは5999ニュージーランドドル(日本円で約42万円)となります。
まるで軍用オフロードバイクのような無骨なデザインのAG200Fですが、「農業バイク」の中では車重が128kgと軽量なのも大きな特徴。
しかも、ただ軽いだけでなく、最大20kgまで積載できるリヤキャリヤを装備しているためガッツリ荷物を積むことも可能です!
価格はオーストラリアで5799オーストラリアドル(日本円で約44万円)、ニュージーランドでは5899ニュージーランドドル(日本円で約41万円)です。
カワサキ ストックマン250
さすがカワサキ、「農業バイク」でも、もちろんライムグリーンで攻めてきます!
オーストラリアやニュージーランドで販売されているこのストックマン250は、1997年に発売されたオフロードバイク・スーパーシェルパがベース。
スーパーシェルパのエンジンは「闘う4スト」のキャッチフレーズがつけられたKLX250のエンジンを空冷化したもの。
スーパーシェルパからストックマン250に転身(?)するにあたって、エンジンは変更されていないため、DOHC4バルブの「闘志にあふれた農業バイク」でもあります。
とはいえ、前後の大型キャリヤ、ハンドガード、エンジンガード、左右それぞれのサイドスタンドなど「農業バイク」らしい装備は完備。クラッチレバーを握った状態でロックできる機構も備えています。
価格はオーストラリアで6299オーストラリアドル(日本円で約48万円)、ニュージーランドでは6343ニュージーランドドル(日本円で約45万円)です。
レポート●モーサイ編集部・小泉 写真●うるちさん/ホンダ/ヤマハ/スズキ/カワサキ
備考:日本円への換算は記事執筆時、2020年9月の各通貨のレートを参考にしました。
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みんなのコメント
妙にゴツい(かなり年季の入った)オフ車を見た事があるのですが
このカテのバイクでしたか!(謎が解けてスッキリしました♪)
左右にサイドスタンド/大型キャリア装備とかイイなぁ~!
(日本でも普通に販売してくれないかな?欲しい!!!)