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セダンはクルマの基本形ではない? ミニバンこそクルマの元祖である理由

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セダンはクルマの基本形ではない? ミニバンこそクルマの元祖である理由

 商用車やバスなど2ボックス全盛時に3ボックスは憧れの的だった

 新しいセダンが発売されると、開発者からは「乗用車の基本形とされるセダンを復権させたい」といった言葉が聞かれる。しかしセダンが復権したことはない。なぜならミニバンこそがクルマの基本形で、セダンの時代が終わり、ミニバンが復権したからだ。

「高級ミニバン」vs「高級セダン」 後席で移動するならどちらが快適か

 ミニバンがクルマの基本形であることは、1930年頃までに北米などで生産されたクラシックカーを見れば明らかだ。ボディの前側にはエンジンルームがあり、その後方は箱型になる。ボディがエンジンルームと室内空間に二分割された2ボックススタイルで、後端部分は真っ直ぐに直立していた。まさに今日のミニバンそのものだ。

 そして荷物をたくさん積みたいときは、ボディの後端に荷台を装着して、旅行で使うような大きなトランクを載せた。スペアタイヤもフェンダー、あるいはボディの後端に装着した。

 1940年代に入ると「流線形」のデザイントレンドが生まれ、後部に装着した荷台とトランクが、ボディの後部に融合されていく。ここで生まれたのが、エンジンルーム/居住空間/トランクスペースに分割された3ボックスのセダンスタイルだ。居住空間の後ろ側に高さの低いトランクスペースを加えると、外観が滑らかでカッコ良く見える。実際の空力でもセダンは有利だ。

 また荷物を積むバン、コンテナ状の荷室を備えたトラック、バスなどは、車内を広く確保できる1ボックスか2ボックスの形状だ。そうなると3ボックスのセダンは、広さを重視する商用車やバスとは違う、乗用車の証明でもあった。

 そのためにバンと同じボディ形状のステーションワゴンは、1950年に発売された日産ダットサンDW-2型の時代から、日本では長年にわたり人気を得られなかった。独立したトランクスペースを備えたセダンでないと、憧れの乗用車と認められなかったからだ。

 ただし1970年代に入ると、小型車で新しい流れも生まれつつあった。1972年に発売された初代シビックは、明確なトランクスペースを備えないファストバックスタイルだが、人気車になってその後のモデルも好調に売れている。1975年には初代フォルクスワーゲンゴルフが輸入を開始して注目され、1980年に発売された5代目ファミリアも人気を高めた。乗用車の基本形は依然としてセダンであったが、コンパクトな車種を中心に、トランクスペースを備えないハッチバックも普及していった。

 日本ではエスティマの登場がミニバン人気を決定づけた

 流れが変わったことを実感したのは、1990年に新しい乗用車の形として、ミニバンの初代エスティマが発売されたときだ。価格は300万円前後に達したが、憧れのクルマとなった。1991年にはバネットセレナ、1994年にはオデッセイ、1996年にはステップワゴン、イプサム、タウンエースノア/ライトエースノアが一斉に発売されて、ミニバンの売れ行きが一気に加速した。

 クルマが贅沢品で憧れの対象だった時代には、商用車とは異なるスマートなデザインのセダンが人気を得たが、1990年代には国産セダンも普及開始から約30年を経過していた。もはやクルマが憧れの対象ではなくなり、女性の運転免許保有者数も増えたため(1990年の女性の保有者数は1970年の4.8倍だ/男性は1.8倍)、日常的に便利に使える空間効率の優れたミニバンが好まれるようになった。

 このようにして1940年頃から1990年頃まで続いたセダンの時代が終わり、ミニバンが復権した。クルマが普及して生活のツールになれば、実用性が重視される。クルマの黎明期と同様、車内を広く確保できるミニバンスタイルへの回帰は当然の成り行きだった。

 このデザインの変遷を見事に表現しているのが、クライスラーPTクルーザーだ。クラシックカーがまさにミニバンであったことがわかる。

 ミニバンが復権した以上、もはやセダンが主流に戻ることはない。ただし悲観すべきことではないだろう。セダンは低重心で、後席とトランクスペースの間に隔壁があるからボディ剛性も高めやすい。実用性ではなく、優れた走行安定性と乗り心地、つまり安全と快適を高められることがセダン本来の価値だ。

 販売の主流から外れると、価格の割安感などはあまり問われないから、セダンは理想の安全と快適を追求できる。ミニバンの復権により、セダンは実用性という束縛から解き放たれ、ますます本領を発揮するようになるだろう。

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