大幅に強化された四輪駆動のシャシー
リフトアップされたフォード・レンジャー・ラプターを見て、ちょっとまだ控えめかな、と感じたことはあるだろうか。少なくとも筆者はない。
【画像】フォード・レンジャー・ラプター 日本メーカーのピックアップ・トラックと比較 全97枚
無骨なオフロード用サスペンションをホイールアーチの間から覗かせつつ、ブロックの大きいオフロードタイヤが見るものを威圧する。入り組んだ英国の道路環境では、すでに充分な存在感を湛えている。悪路性能にも不足はない。
しかし現行型レンジャーのモデル末期を迎え、さらにもっとを求める人のために、スペシャルエディションが登場した。これなら、不足を唱える人もいないだろう。
レンジャー・ラプターをベースに、ボディへレーシングストライプが与えられ、ブラックのトリムとホイールで統一。さらにインテリアには、赤いアクセントが追加されている。
従来以上に目立つピックアップトラックに仕上がっていることは、いうまでもない。広大なショッピングモールの駐車場でも、一発で発見できそうだ。
四輪駆動のシャシーは、標準のレンジャーから大幅に強化されている。バハ1000のごとく、荒野での疾走にも対応できるように。
トレッドは150mm広げられ、車高はフォックス社製のリフトアップ・サスペンションと、ゼネラル・グラバー・タイヤのおかげで51mm高い。アメリカで売られているフォードF-150 ラプターを模した、ゴツいフロントグリルも装備する。
見た目の迫力とは裏腹に動力源はそのまま
ただし見た目の迫力とは裏腹に、パワートレインやメカニズムは、通常のレンジャーと基本的に違わない。エンジンは2.0L 4気筒ターボディーゼルで、トランスミッションは10速のオートマティック。最高出力は、控えめに感じる213psとなる。
0-100km/h加速は、10.5秒がうたわれる。レンジャー・ラプターは通行人に荒々しい性格を想像されるかもしれないが、マイルドなディーゼルエンジンのノイズを伴い、程々の勢いで加速する。
ラプターが意味する猛禽類のような野蛮さはないとしても、燃費効率には優れる。今回の160kmほどの試乗では、高速道路で10.6km/Lという数字を記録した。日常的に乗ることも、難しくはないだろう。
フルスロットル時には、パイプで導引されるエンジンノイズが賑やかなものの、普通に運転している限り車内は静か。10速ATも適切なタイミングでテンポ良く変速してくれる。
車高は持ち上げられているが、コーナーではタイトにボディを制御し、オンロードでの走りも犠牲にはなっていない。巨大なオフロードタイヤは、想像以上にノイズが静かだ。サイドウォールが厚く、歩道の段差でホイールを傷つける心配もない。
オフロードで泥まみれになって楽しむことが前提の、レンジャー・ラプター。だが、コンクリートやアスファルトで固められた市街地にも、充分に対応することができる。
自己主張の強い熱烈なファンのため
ボディサイズは大きく、駐車場や都心部などでは取り回しに気を使う。しかしステアリングホイールの操舵感は軽く、運転席からの視認性も良好で、低速域でも扱いやすい。フロント側のパーキングセンサーが省かれたことは謎だが。
レンジャー・ラプターの荷台の最大積載量は、620kgに限定される。他のレンジャーなら、1tを超えるのに。トラックという実用性でいえば、最も劣るレンジャーではある。英国では、商用車としての登録もできない。
税金も普通車と変わらないし、リフトアップ・キットなどのおかげで値段も安くない。英国価格は、5万3160ポンド(約823万円)だ。
といっても、レンジャー・ラプター・スペシャルエディションに興味を持つような人は、ベースモデルとの価格差もいとわないだろう。自己主張の強い、ある種のカリスマ性を備えた、熱烈なファンのためのフォードだ。
そもそも、オンロードでの動的能力や加速性能は求めていない。厳しい悪路でも、感嘆するほどのパフォーマンスを発揮してくれる。高い実力を、現実環境で試すことは難しいかもしれないけれど。
フォード・レンジャー・ラプター・スペシャルエディション(英国仕様)のスペック
価格:5万3160ポンド(約823万円)
全長:5363mm
全幅:2083mm
全高:1873mm
最高速度:170km/h
0-100km/h加速:10.5秒
燃費:9.3km/L
CO2排出量:277g/km
車両重量:2510kg
パワートレイン:直列4気筒1996ccターボチャージャー
使用燃料:軽油
最高出力:213ps/3750rpm
最大トルク:50.9kg-m/1750-2000rpm
ギアボックス:10速オートマティック
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