大阪東部の拠点駅で四半世紀を超える大工事
JR大阪駅から大阪環状線外回り電車で3つ目の京橋駅は、大阪市東部の拠点駅です。ホーム南端から階段を降りた地平部に、学研都市線(片町線木津~京橋)とJR東西線(京橋~尼崎)のホームがあり、主力の207系、321系電車が市街地の真ん中を行き来しています。乗り換えの移動は便利ですが、朝夕だと階段は混み合います。
【え、これあと何年かかるの!?】京橋駅地上ホーム「地下化」後の変化(地図/写真)
この京橋駅付近1.3kmの地平区間を地下線に切り替える計画が、2025年5月、大阪市の有識者会議で示されました。2014年度に休止となった連続立体交差事業を再開しようというものです。
京橋駅地平ホームが繁華街を東西に分断することで、地域の発展は長年阻害されてきました。市街地を南北に結ぶ幹線道路2本は未完です。地下化に伴う再開発で、街並みは大きく変貌するでしょう。
ただ、大阪市建設局の資料では「事業完成2053年度」とあり、SNSでは苦笑いするコメントが続出しました。今の30歳の若者が定年間近に、50歳なら後期高齢者の仲間入りをしている遠い未来の話です。なぜ事業期間がこんなに長くなるのか。大阪市役所に聞いてみました。
「大阪第4のターミナル駅」
京橋駅は大阪環状線とJR東西線、学研都市線、京阪本線、大阪メトロ長堀鶴見緑地線が交差する大阪第4のターミナル駅で、1日約50万人(JR27万人、京阪19万人、地下鉄4万人)の乗降客が駅周辺を行き交います。高層ビルと、高度成長期の香り漂う繁華街が隣り合う独特な街並みが広がります。
学研都市線とJR東西線のホームは地平部に位置し、地上2階にあたる盛土上に大阪環状線ホーム、地上4階にあたる高架に京阪本線ホーム、少し離れた場所の地下3階に地下鉄ホームがあります。大阪環状線と京阪本線の乗り換え客が特に多く、JR北口改札と京阪中央改札を結ぶ約50mの駅前広場は終日、鉄道利用者でごった返しています。
昭和ぁ~な匂い漂う駅前どうなる?
今回示された学研都市線の地下新ホームは、市道片町茨田線の地下を想定しています。1970年代に鯰江(なまずえ)川を埋め立てて整備された道路で、現在線の地平ホームと京阪京橋駅との間に位置します。
新ホームは地下2階、コンコースが地下1階となります。駅北口方面への乗り換え通路も想定されています。今の地平ホーム敷地や南口付近は駅前広場として整備される構想です。
現ホームと新ホームとの間には、広大な遊休地が広がります。旧ダイエーで有数の大型店だったイオン京橋店の跡地で、2019年に閉店となりました。西側には、1997年に廃止された旧片町駅跡の未利用地が残っています。今後、地下線切り替えに合わせて、大規模な再開発が実施されることになるのでしょう。
新ホームの北側には、京阪京橋駅と駅ビル、ホテルがあります。学研都市線ホームからの距離が近くなるので乗り換えは便利になるでしょう。京阪ホールディングスは京橋駅周辺再開発の事業化に取り組んでおり、報道によると、2030年に新たな高層ビルの建設に着手するようです。
構想自体はなんと半世紀前から!?
京橋駅地平ホームの地下化構想は1970年代からありました。学研都市線の都心延伸となるJR東西線の地下新線計画に合わせて検討され、地元向けに説明会が開催されました。JR東西線京橋~尼崎間は1997年に開業しますが、京橋駅付近の地下化は見送られました。新線の事業費が膨らむことが懸念され、地平ホームが残りました。
その後、大阪市は、2000年に京橋駅付近の連続立体交差事業をスタートさせ、地下線着工の準備に取り掛かりますが、具体化しませんでした。
大きかったのは大阪市の財政問題です。90年代に大規模開発を進めてきた反動で、市財政は危機的状態となりました。市長選が繰り返され市政が混乱する中、各プロジェクトの見直しが行われていました。
いろいろ“ムリ!”で止めた過去
2000年代当時は、駅の設置場所も未決定でした。当初案では現在の地平ホームの直下に新駅を作ろうとしましたが莫大な工費がかかります。別案として現案と同じ市道片町茨田線の下で地下化するプランもありました。施工法や事業費、用地取得、乗り換え客の動線、大規模埋設物との調整などが検討されましたが、方針は固まりませんでした。
また、都市計画道路の市道「玉造筋線(都島阿倍野線)」の扱いも悩みの種でした。玉造筋線は大阪環状線の西側を南北に結ぶ幹線道路で、現在、大阪城公園駅北側の寝屋川から京橋駅地平ホームを超え、国道1号京橋西交差点までの区間700mが未着手です。予定地の一部は駐輪場や北口広場として活用されています。
ただ、この道路の予定地はJR京橋駅北口と京阪京橋駅との乗り換え通路を横切る形になります。毎日数十万人の乗降客が行き交っていることを考えると、地平道路での整備はできません。高架道路、もしくは地下道路にする案もありましたが、設計面でも環境面でも無理がありました。
代わりに、京橋地区と国道1号を結ぶルートとして、大阪環状線の東側を南北に結ぶ市道「豊里矢田線」の整備が期待されていました。京橋駅地平ホームの東側にある新喜多踏切で交差しているのが現道で、こちらも都市計画道路としては寝屋川と学研都市線を挟む約500mが未完です。用地買収が完了しておらず、現在、鴫野橋の部分は北向き1車線の一方通行となっています。
当初、地下化1.3kmの事業費は400億円とされました。ただ、大都市の都心部で、かつ地下線であるJR東西線との接続を考えると難工事は必至で、そんな予算で完成するはずはありません。こうして、大阪市は、連続立体交差事業の都市計画決定すらできないまま長年放置し、2014年度に事業休止としました。
それがなぜ、このタイミングで復活したのでしょうか。
機が熟した? ついに「お鉢」が回る
担当の大阪市建設局道路河川部に聞くと、「大阪城公園周辺地域まちづくり方針」(2025年)で、京橋駅周辺における地域分断の解消や駅機能の集約化の方針が示されたのがきっかけとのことです。京橋・大阪城公園地区は2017年に国の再生緊急整備地域に指定されており、まちづくりと再開発計画の具体化が急がれています。
また、大阪市の連続立体交差事業で懸案となっていたJR東海道線支線の大阪駅地下ホーム(うめきたホーム)が完成し、阪急淡路駅周辺の高架化も目途がついたことで、次の候補だった京橋駅がクローズアップされたのです。
課題の一つだった京橋駅北口を通過する市道玉造筋線計画については、「まちづくり方針」で「人中心の広場を備えた駅前空間」「歩行者ネットワーク」と位置づけられています。図面では曖昧な描き方ですが、クルマの走らない歩行者中心の道路と想定しているのでしょう。新駅の真上で予定されていた市道片町茨田線との平面交差も見送られる公算です。
完成まで23年、事業費は2.6倍に膨張!?
大阪市のプランだと、2030年度に事業着手し、地下線切り替えは2051年度、事業完成は2053年度とされています。また、1.3kmの地下化の総事業費は1031億円とされています。25年前の試算は400億円とされていたので、その2.6倍です。
なぜ、事業期間も事業費もこんなに膨らんだのか。大阪市建設局道路河川部によると、市が大規模事業のリスク管理に取り組んだのが要因だといいます。
大阪市の過去のプロジェクトでは、予算超過や事業期間の大幅延長が続出し、市財政の大きな負担となりました。1997年度に事業がスタートした阪急淡路駅付近の連続立体交差化事業もその一つです。2009年度完成予定でしたが、今は2031年度とされ、近隣の市民にとって不満の種となっています。事業費も1613億円から2326億円と大幅に超過しています。
そこで大阪市は、市内の大規模事業について、物価高騰や用地買収など不確実なリスクを事前に予測して事業費を算出するようになりました。京橋駅地下化についても、2025年の試算では事業費の中に、将来の人件費や材料費、物価の高騰、そして旧鯰江川跡地道路の汚染物質の処理、第二次大戦時の不発弾処理なども想定して盛り込みました。ゆえに事業費が大幅に上振れしたのです。
そして事業期間も2030年度の着手から完成まで23年間と長い期間を想定しました。期間が短い方が事業費を抑えることはできますが、用地買収交渉などで理想通りに進まないのも現実です。現段階で詳細なルート設計がされておらず不確定要素は残りますが、逆に施工の工夫で事業費や事業期間が圧縮される可能性もあるようです。
大阪市は、今後、計画を検討した上で、2026年2月頃にも方針を定めることになります。
ただ、学研都市線・JR東西線の京橋駅利用者の視点からすると、大阪環状線との乗り換えがかなり不便になるのは悩みの種です。
現在、大阪環状線ホームは地上2階、学研都市線・JR東西線は地平にあるので、階段を降りれば1、2分で移動できます。ただ、地下の新ホームは地下2階になるので、移動時間は長くなるのでしょう。仕方ないこととはいえ、エスカレーターで直結するなど配慮が欲しいところです。(森口誠之(鉄道ライター))
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みんなのコメント
そして、列車本数も比較的多いからそれなりに長い時間閉まったままになるので、
無謀横断が後を絶たないんだな。
それでさらに列車が止まって遅れが増えていく悪循環。
世界ランク住みやすい街7位、アジア最高ランクになりましたし。日本人だけが大阪の変わり様を知らないんじゃないですかね。