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【大衆より上級】フォルクスワーゲンではなく、メルセデス・ベンツが一番売れる日本市場の不思議

2015年以降、メルセデス・ベンツがトップ

text:Kenji Momota(桃田健史)

【画像】メルセデス・ベンツ/フォルクスワーゲン 最新の注目モデル【Eクラス/ゴルフ】 全133枚

世界的な高級ブランドであるメルセデス・ベンツが、欧州では大衆ブランドのフォルクスワーゲンより数多く売れる。ここ日本での現状である。

理由はどこにあるのだろうか?

日本自動車輸入組合は毎年、ブランド別輸入車新規登録台数を公表している。

それによると、過去10年間でメルセデス・ベンツがフォルクスワーゲンを抜いて、輸入車シェアでナンバーワンとなったのは、いま(2020年)から5年前の2015年と、まだ日が浅い。

さらに時代を遡ってみると、1999年にメルセデス・ベンツがフォルクスワーゲンを抑えてシェア1位だったが、2000年から2014年までフォルクスワーゲンが15年連続でシェア1位を維持していた。

それが2015年から、業界図式が徐々に変わり始めた。

2014年にフォルクスワーゲンは6万7438台だったが、2015年に1万台以上減少し、2016年が4万7234台、2017年が4万9040台、2018年が5万1961台、そして直近の2019年は4万6794台と平行線を辿り、シェア3位の座に甘んじている。

一方、メルセデス・ベンツはフォルクスワーゲン、BMWとの競争でシェア2位、または3位の時代が長かったが、2012年にBMWを抜いてシェア2位の座を確実とした後、2015年以降はシェア1位の座を維持している状況だ。

メルセデス・ベンツ優位の状況は、これからも続くのだろうか?

それとも……。

ヒエラルキーで販売台数が決まってきた

ヒエラルキー(階層)と言葉。

日本ではあまり聞きなれないかもしれない。

クルマにおけるヒエラルキーとは、所得階層によって乗るクルマが違うということ。お金持ちはメルセデス・ベンツに乗るという古典的な方程式である。

一般論では、メルセデス・ベンツオーナーの年齢層は、BMWに比べて高く、欧米企業が採用しているエグゼクティブ通勤用に支給されるカンパニーカーでも、メルセデス・ベンツユーザーの年齢は高めの印象がある。

一方、フォルクスワーゲンはドイツ語の直訳で国民車であるように、欧州大衆ブランドのド真ん中であり、庶民の乗り物というイメージは健在だ。

そうした古典的なジャーマン・ヒエラルキーに捉われず、市場拡大を狙う中で、メルセデス・ベンツとフォルクスワーゲンは、必然的に戦略が違う。

メルセデス・ベンツは「S、E、C」という定番高級路線から「A、B、CLA、GLA」へと、人口の多い庶民の「手が届きやすい方向」にラインナップを拡充。

フォルクワーゲンはその逆で、「より高級」へ向かうと、当然そこではアウディとバッティングする、という壁にぶちあたる。

メルセデス・ベンツのほうが多モデル化の恩恵が受けやすい。

こうしたブランドの基本構造を踏まえた上、日本でのメルセデス・ベンツ販売拡大には別の要素が見え隠れする。

広尾、六本木、世田谷のセレブ効果

メルセデスのオーナーといえば、男性が中心のイメージが強かった。個人所有ではなく、企業オーナーが会社の経費でSクラスやEクラスを買うというイメージもあった。

そうした状況がモデルラインナップの拡充が進んだ2000年代以降、徐々に変化が見てきたと感じる。

変化をもたらした要因は女性ユーザーの増加だ。

セレブが多い、広尾、六本木、世田谷など東京の高級住宅地で定点観測してみると、20代から40代の女性を中心に、メルセデスが乗用車としてのミニマムリクワイアメント(必要最低条件)のような雰囲気がある。

しかも、Aクラス、Bクラスではなく、中位以上のモデルが多い。

こうした東京・都心の生活トレンドが、城南地域(横浜・川崎)、埼玉、千葉などに直接的な影響を、また大阪、名古屋、福岡などの地方大都市にSNSなどを通じて間接的な影響を及ぼす。

さらに、金沢や仙台といった古くからの富裕層が多い中規模都市にも、東京都心トレンドへの憧れから、女性のメルセデスユーザーが増えていった印象がある。

なお、メルセデス・ベンツ日本よると、どのモデルについても所有者、使用者の男女比は非公開。

そのうえで、車検証の名義が夫で、使用頻度が高いのが妻などの家族というケースは当然あるものの、実態は把握していないとのことだ。

バブル世代と団塊ジュニア 買い方も変化

男性ユーザーでは、バブル世代の50代中盤から後半、また40代後半から50代中盤の団塊ジュニア世代(団塊の世代の子供)でメルセデスの人気が高い印象がある。

バブル世代は若い頃、自身にとっての初めての輸入車としてフォルクスワーゲンを買った人も多い。それが、生活に余裕が生まれて、若い頃に高嶺の花だったメルセデスに手を伸ばしている。

SUVやクロスオーバーなどメルセデスのモデル・バリエーションが増えたことも、バブル世代にとってはメルセデスが愛車として現実味が増えてきた大きな要因だ。

また、男女や世代と問わず、買い方も賢くなっている。

メルセデス・ベンツ日本によると、コンパクトモデルでのリース利用が増えているという。また、日本では2011年にオープンしたメルセデスという商品に気軽に出会える場である、メルセデスミーの存在も大きいと分析している。

こうした各種情報と筆者自身の体験を合わせると、日本でのメルセデス人気の背景には、男性の中核ユーザー層が、団塊の世代から中年層へと上手くシフトしていること。

さらに、広い世代における女性セレブの情報発信力に支えされているからだと推測する。

日本におけるメルセデスはもはや、単なる高級ブランドではなく、ライフスタイルを充実させるためのブランドなのだと思う。

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