2025年5月13日、日産は2024年度通期の決算を発表、営業利益は698億円、当期純損失は6709億円と発表した。比較可能な1986年3月期以降で過去3番目の赤字だという。
米国市場および中国市場での販売不振に加え、工場の資産価値の見直し、経営立て直しに向けた人員削減などの損失を計上したことが主な理由だとしており、厳しい事業環境を乗り切るための十分な資金も確保しているとしているが、ここから挽回できなければ、日産に明るい未来はない。はたして、いまの日産には、ここから復活していくための「種」となる要素はあるのか!?? 考えてみよう。
日産赤字6700億円! 工場7つ閉鎖!! 従業員2万人削減!! 希望は…復活の可能性は……ある!!!!!
文:吉川賢一/写真:NISSAN
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社長が商品企画出身であることは大きな希望
日産が復活していくための「種」となりうるひとつが、2025年4月1日のイヴァン エスピノーサ氏のCEO就任だ。
エスピノーサCEOは、2003年10月にメキシコ日産に入社したあと、主に商品企画を担当してきた人物だ。そこでの活躍が認められたことでグローバル商品企画も担当。さまざまな役職を経て、2024年3月時点では、グローバル商品企画本部、グローバルプログラムマネジメント、グローバルモータースポーツ、コーポレート市場情報統括本部のチーフプランニングオフィサー(CPLO)など、複数の部署を担当する専務執行役員(SVP)となっていた。
もちろん経歴だけでここからの采配を語ることはできないが、商品企画を熟知したエキスパートであることから、市場でどういった商品が求められているのか、それに対して日産のリソースで何が提供できるのかなど、現場を理解できる経歴をもつことは確かであり、いまの日産に必要な思考をもつ人物であるように思う。元日産社員(筆者)としては、CEO就任発表時の「日産はこんなものではないと、心から信じている。」という言葉にも大いに希望を感じた。
2024年度決算と同時に発表となった経営再建計画 Re:Nissanでは、グローバルで17ある工場を10に集約するほか、人員削減も2万人に増やすとのこと。大きく重たくなった会社を実力に沿ったかたちにスリム化し、再び輝かせることができるか、大いに期待している。
2025年3月11日に行われた日産オンライン会見の模様。「日産を再び輝かせるために活動してきた内田さんの後を継ぐことを、大変ワクワクしている」と話すエスピノーサ新社長
技術力はトヨタにだって負けていないはず
そしてもうひとつが「技術力」だ。よく「日産は、クルマはいいんだけど…」といわれたりもするが、(商品の方向性などはさておき)クルマ自体の出来はすこぶるよく、評判も決して悪くないと思う。
開発費のコストダウンが厳しい中でも第3世代e-POWERを開発し、弱点といわれ続けたe-POWERの高速燃費を改善するほか、20%ものコスト低減も実現するなど、新技術を生み出せることは、いまも高い技術力をもつ証だと思う。また日産が「次世代の運転支援技術」としている最先端の運転支援技術も、2027年度から市販車に導入することを発表するなど、その技術力はトヨタにだって負けてはいない。
特に第3世代e-POWERの投入は、日産にとって大きな希望だ。日産はこの第3世代e-POWERによって、「2026年にe-POWER車のコストをエンジン車と同等にする」としており、これが実現できるのなら、かなり希望が持てる。是非ともグローバルで展開して欲しいユニットだ。
特に、期待できるのが新型エルグランドだ。新型エルグランドには、この第3世代e-POWERの搭載が明言されているが、もし新型エルグランドが、第3世代e-POWERによってエンジン車と同等のコストとなるのなら、アルファード/ヴェルファイアに見飽きていたラージサイズミニバンユーザーの心を撃ち抜くことができるかもしれない。久々に面白い日産車が登場することになると思う。
日産が2023年に3月に公開した、新開発電動パワートレイン「X-in-1」。モジュール化したことで、パワートレインコストを大幅ダウンし、2026年までにe-POWER搭載車をエンジン車と同等の車両コストにするという
2023年6月に日産が公開した「交差点事故を回避する技術」。2027年登場の市販車に搭載されるという
これまでの「財産」があることも日産の希望
また、これまでクルマを数多く開発し、ファンに愛されてきたことも日産の希望だろう。日本国内では、ここ2年間ほど新型モデルを発表していないが、海外では2024年度だけで、新型キックスや新型ムラーノ、新型キャシュカイ、新型アルマーダ/パトロール、インフィニティQX80などを投入しており、グローバルでのラインアップは決して少なくない。
そのため、新規開発が難しくても、たとえば米国市場や欧州市場に、国内のノートオーラやエクストレイルe-POWER、軽自動車を投入してみたり、国内に米国キックスやムラーノやパスファインダー、英国ジュークやキャシュカイを投入するということはできるはず。また、かつて販売していたクルマを最新にアレンジして販売したり、既存のモデルを使って過去の名車をオマージュしたようなモデルを開発するというのもいいと思う。
もちろん何でもかんでもやればいいというわけではなく、コストも膨大にかかることなので慎重にやるべきではあるが、最小限のコストで利益を得ることができるよう、使えるものは使うべきであり、それがあること自体、日産の大切な財産だ。日産関係者によると、他市場のクルマを販売するという案はこれまでも企画開発チームから幾度も出ていたそうだが、全てお蔵入りとなってきたそう。新しい経営体制でこうした方面にも動きがあることを期待したい。
各地域で専売となっている日産車。ほかの地域で販売しても、ヒットするクルマもいくつかあると思われる
2025~2026年度に日産が計画している新型車。ハイブリッド、PHEV、BEVと、マルチソリューションで戦う姿勢を示した
まずは悪しき風習をリセットし「種」を大切に育ててほしい
日産によると、2024年度の売上高は12兆6332億円だという。営業利益と当期純損失は冒頭で触れたように698億円と6709億円だ。2023年度は売上高12兆6857億円、営業利益5687億円、当期純利益4266億円、2022年度は、売上高10兆5967億円、営業利益3771億円、当期純利益2219億円だったので、売上高はほぼ変わっておらず、営業利益が激減していることが大きな問題。
日産は「主に米国市場や中国市場の需要に対し、適切な商品を適切なタイミングで供給できていなかったこと(販売パフォーマンスの悪化)が原因」としており、北米や中国でクルマが売れないことで、多大なインセンティブ(販売奨励金)を出したことが主な要因だ。実力に見合わない過剰な生産設備を確保していることも損失に繋がっただろう。
これまでは技術力があっても商品としては空振りも少なくなかった日産だが、商品企画出身のエスピノーサ氏の社長就任で、この「適切な商品を適切なタイミングで供給できなかった」という点はずいぶん解消できるような気がする。日産が復活のために勝負するべきなのは、やはり米国市場だ。まずは現在の値引き販売をやめ、いいクルマを適正な価格で売る流れに正したうえで、こうした「種」を大切に育て、復活してくれることを期待している。
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本当ならとっくの昔に終わってたけどガリバーだから延命できてただけ。epower 以降ポテンヒットだらけ。それでは得点に結びつかない。