現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 知ってたらオジサン確定。日産車が飛ぶように売れた「シーマ現象」とは何だったのか。

ここから本文です

知ってたらオジサン確定。日産車が飛ぶように売れた「シーマ現象」とは何だったのか。

掲載 82
知ってたらオジサン確定。日産車が飛ぶように売れた「シーマ現象」とは何だったのか。



日本がバブルに沸いていたちょうどその時代に、1台の高級車が誕生した。これまでパーソナルカーの世界に3ナンバーボディ専用車というものは存在しなかった。その殻を破り登場した初代シーマは、ワイドボディの最新鋭高級サルーンという常識的な枠に収まるはずがなかった。3LのV6DOHCターボの圧倒的な加速感は、ある意味、暴力的とも言えるクルマであった。高級車+ワイルドすぎる加速感の相反する性格をもつクルマに人々は魅了され、そして「シーマ現象」という社会現象が生まれていった。

【写真多数】→「飛ぶように売れたぞ!」バブル景気を駆け抜けた日産・シーマ。

●文:月刊自家用車編集部

豊かな時代の波に乗って人々の心を掴んだ高級車

1980年代頃までの日本において、3ナンバーの普通自動車は贅沢品の象徴だった。自動車税ひとつを取っても、税額が4万円以内に抑えられた排気量2L未満の小型車に対して、排気量2Lを超えるといきなり8万1500円。さらに排気量が3Lを超えると8万8500円と、大排気量車には倍以上の自動車税が課せられていた。当時は、排気量が2Lを超える3ナンバー車は、運転手付きのショーファーカーか、一部の富裕層が所有する輸入車というイメージが強く、オーナーになるなんて夢のクルマだったのだ。

ところが、日本が豊かになるにつれて、それをパーソナルカーとして乗り回す富裕層が増えてきた。さらに、市場開放を求めるアメリカは、高すぎる日本の自動車関連税を非関税障壁として糾弾。それを受け、1989年4月の消費税導入に合わせて、高級製品にかけられていた物品税を廃止、その流れで自動車税制が改正され、排気量2.5Lまで4万5000円、3Lまでが5万1000円と細かな区分けと大幅な引き下げが行われたことで、大排気量車を所有する敷居がかなり低くなった。

そんな時代の波を察知し、バブル景気を駆け抜けたのが、1988年1月に発売されたシーマだった。それまでは、セドリック/グロリアやクラウンのように上級グレードとして排気量2Lを超えるモデルはラインナップされていたが、どれもベースグレード=5ナンバーボディに大排気量エンジンを搭載したものがほとんどで、外観上の差別化はなされていなかった。しかし、それを嫌った富裕層は、輸入車に流れ始めていた。

そこでトヨタは、1987年に投入する8代目クラウンに3ナンバー車専用ボディを与えることを決定。その情報を得た日産も、次のセドリック/グロリアへの3ナンバー車専用ボディ導入を決めたのだ。

だが、クラウンが1987年9月に3ナンバー/5ナンバーボディを同時に発表したのに対して、それに先立つ6月に発表した7代目セドリック/8代目グロリアには、3ナンバー専用ボディの開発は間に合わなかった。そこで6月の発表時には、遅れて3ナンバー専用車が登場することをアナウンス。車名にもシーマのサブネームを付けて差別化した。それが、シーマにセド/グロとは異なる上級車のイメージを持たせるプラス作用となったのである。

開発責任者が日産初の営業部門出身者だったのも、このクルマの個性を強めていた。最前線で客の生の声を聞いてきた彼は、スケジュールを曲げてでも5ナンバー車とは明確に異なるデザインを通し、本来はレパード用に開発されていたV6の3Lターボを、社内を拝み倒して先に搭載させたのだ。そうして生まれたシーマは、セド/グロよりひとクラス上の存在感を放ち、255馬力の高性能で、パワーボートのような尻を沈めて加速する豪快さに喝采を浴びた。500万円の国産車の爆発的な売れ行きは好景気の象徴となり、「シーマ現象」という言葉は、1988年の流行語大賞銅賞にも輝いたのだった。

初代シーマの変遷

―― 1987年10月 東京モーターショーに出品。1988年1月 セドリックシーマ/グロリアシーマとして販売開始。1989年8月 マイナーチェンジ。フロントグリルデザインを変更。また内装スイッチの形状変更、漆塗りの本木目パネルの採用など。1990年6月 廉価グレード「タイプLセレクション」をラインナップ。1991年8月 フルモデルチェンジで2代目に移行。

―― ベースとなるセドリック/グロリアとはまったくデザインを異にする3ナンバー専用ボディを纏った初代シーマ。

―― セドリック・シーマ タイプIIリミテッドAV(1989年式) ●全長×全幅×全高:4890mm×1770mm×1380mm ●ホイールベース:2735mm ●トレッド(前/後):1500mm/1525mm ●車両重量:1670kg ●乗車定員:5名 ●エンジン(VG30DET型):V型6気筒DOHCターボ2960cc ●最高出力:255ps/6000rpm ●最大トルク:35.0kg-m/3200rpm ●10モード走行燃費:7.6km/L ●ガソリンタンク容量:72L( 無鉛プレミアム) ●最小回転半径:5.5m ●トランスミッション:4AT ●サスペンション(前/後):ストラット式コイルバネ/セミトレーリングアーム式コイルバネ ●タイヤ(前/後):205/65R15 96H ◎新車当時価格(東京地区):471万5000円

―― グロリア・シーマタイプIIーS(1988年) 販売チャンネルが異なることからグロリアのネーミングが付けられているが基本的な仕様は同じ。セドリックシーマとの違いはボンネットに装着されたエンブレム形状。

―― インパネの雰囲気はベース車セドリック/グロリアと大きく変わらないが、オーディオ/エアコン/ASCDなどの操作ができる光通信のステアリングスイッチなどを採用。後期型にはオプションでデジタルメーターも用意された。

―― シートはウール素材が基本で、本革シートはオプション。助手席背もたれの一部が後ろに倒れ、後席パッセンジャーのフットレストになる「リラックスシート」も選べた。

―― エンジンはV6の3.0Lで、NAとターボをラインナップしていた。

―― V6ターボの圧倒的パワーで、高級車らしからぬ暴力的加速も魅力としたシーマ。3ナンバーの4ドアハードトップだけのラインナップ。

文:月刊自家用車WEB 月刊自家用車編集部
【キャンペーン】第2・4金土日は7円/L引き!ガソリン・軽油をお得に給油!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

「非常に美しいが…悲劇のクルマ」「時代を先取りしすぎ」絶版後、大人気になった4代目クラウン。
「非常に美しいが…悲劇のクルマ」「時代を先取りしすぎ」絶版後、大人気になった4代目クラウン。
月刊自家用車WEB
時代が違えば伝説だった?? 忘れられた名車にもう一度エールを!!
時代が違えば伝説だった?? 忘れられた名車にもう一度エールを!!
ベストカーWeb
欧米に「追い付け」精神から生まれた「ジェット機」モチーフのデザイン。それなのに愛称は、なぜか「ダルマ」に…【30年超えで愛され続けているトヨタ人気旧車を解説】
欧米に「追い付け」精神から生まれた「ジェット機」モチーフのデザイン。それなのに愛称は、なぜか「ダルマ」に…【30年超えで愛され続けているトヨタ人気旧車を解説】
月刊自家用車WEB
「頑張れ!日産」の願いを込めて人気日産車をテストドライブ 「日産セレナe-POWERルキシオン」これなら長く付き合えるの巻
「頑張れ!日産」の願いを込めて人気日産車をテストドライブ 「日産セレナe-POWERルキシオン」これなら長く付き合えるの巻
AutoBild Japan
「アメ車が売れない」って嘆く大統領! こんなバカ売れしたミニバンもありました! 日本でブームを巻き起こした「シボレー・アストロ」がいまでもバズる可能性あり
「アメ車が売れない」って嘆く大統領! こんなバカ売れしたミニバンもありました! 日本でブームを巻き起こした「シボレー・アストロ」がいまでもバズる可能性あり
WEB CARTOP
知ってたら博士級? パンダがベース:ランチア Y10 小さなロールス・ロイス:パンサー・リオ 小さな高級車(1)
知ってたら博士級? パンダがベース:ランチア Y10 小さなロールス・ロイス:パンサー・リオ 小さな高級車(1)
AUTOCAR JAPAN
究極の高級ミニ:デヴィル 小さく非力なキャデラック:シマロン 知ってたら博士級? 小さな高級車(3)
究極の高級ミニ:デヴィル 小さく非力なキャデラック:シマロン 知ってたら博士級? 小さな高級車(3)
AUTOCAR JAPAN
日産の斬新「“2列6人乗り”ワゴン」に注目! 全長4.3m“ちょうどいいボディ”&「前席に3人乗れる」シート採用のティーノ! メーカー初「低燃費パワトレ」も魅力的なハイトワゴンとは?
日産の斬新「“2列6人乗り”ワゴン」に注目! 全長4.3m“ちょうどいいボディ”&「前席に3人乗れる」シート採用のティーノ! メーカー初「低燃費パワトレ」も魅力的なハイトワゴンとは?
くるまのニュース
これだからホンダファンはやめられんのよ! ホンダ以外誰も作れない奇想天外なSUV2選
これだからホンダファンはやめられんのよ! ホンダ以外誰も作れない奇想天外なSUV2選
WEB CARTOP
2025年版 自動車専門誌が選ぶ、最高の小型車 10選 スタイリッシュで気楽な都市生活の相棒
2025年版 自動車専門誌が選ぶ、最高の小型車 10選 スタイリッシュで気楽な都市生活の相棒
AUTOCAR JAPAN
新型「グランディス」欧州で世界初公開【ミツビシ期待のSUV、国内導入の可能性は如何に?】
新型「グランディス」欧州で世界初公開【ミツビシ期待のSUV、国内導入の可能性は如何に?】
月刊自家用車WEB
ホンダビートは爽快な走り!! 軽の2シーターミドシップオープンここにあり!!! こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】
ホンダビートは爽快な走り!! 軽の2シーターミドシップオープンここにあり!!! こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】
ベストカーWeb
週末の大人ドライブを彩る輸入車7選 “自分時間”を優雅に過ごすなら、こんなクルマ
週末の大人ドライブを彩る輸入車7選 “自分時間”を優雅に過ごすなら、こんなクルマ
グーネット
心ときめくロイヤルコーデ!ミツオカ「ビュートストーリー」初の特別仕様車
心ときめくロイヤルコーデ!ミツオカ「ビュートストーリー」初の特別仕様車
グーネット
海外モデルだけど日本でも販売!? 異様な経歴を持つ日産 クエストとは
海外モデルだけど日本でも販売!? 異様な経歴を持つ日産 クエストとは
ベストカーWeb
思わず二度見…「本当に商用車か?」アウトドア仕様で生まれ変わったスクエアボディ。荷物も夢も全部積んで走れ!
思わず二度見…「本当に商用車か?」アウトドア仕様で生まれ変わったスクエアボディ。荷物も夢も全部積んで走れ!
月刊自家用車WEB
アルファードPHEVはHVよりも183万円高い! いまや軽も250万円! そもそもなんで最近の新車価格は爆上がりしているのか?
アルファードPHEVはHVよりも183万円高い! いまや軽も250万円! そもそもなんで最近の新車価格は爆上がりしているのか?
ベストカーWeb
人生最後のクルマはソリオで決定だ!! 小型車の原点「スズキ ソリオ」の使い勝手が最高すぎる件
人生最後のクルマはソリオで決定だ!! 小型車の原点「スズキ ソリオ」の使い勝手が最高すぎる件
ベストカーWeb

みんなのコメント

82件
  • hai********
    初代シーマも全く見なくなった
    寂しいね
  • メタリックレッド
    あの頃は、トヨタと日産がしのぎを削ってたよね。
    今、クラウンの対抗はなんだ?ないんだな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

630 . 0万円 787 . 5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

28 . 8万円 550 . 0万円

中古車を検索
日産 シーマの買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

630 . 0万円 787 . 5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

28 . 8万円 550 . 0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村