「あんなに盛り上がったのは、2013年の第7戦オートポリス以来でしょうか。あのときは、千代勝正選手が予選2番手を獲得してくれましたから」とレース後、NILZZ Racingのスタッフが笑顔で語ってくれた。スーパーGT×DTM特別交流戦の併催イベントとなるGT300クラスを主流とした『auto sport web Sprint Cup』では、思わぬ“伏兵”がレースを盛り上げることになった。
12台とふだんのGT300クラスの盛況ぶりから考えると、やや台数が少なく「きちんと盛り上がるだろうか……?」という事前の予想もあった『auto sport web Sprint Cup』。8時40分から行われた公式予選では、今季第6戦オートポリスでも優勝を飾ったSYNTIUM LMcorsa RC F GT3が、吉本大樹/宮田莉朋のコンビでポールポジションを獲得していたが、迎えた11時35分からの決勝では、スタート前に小雨が舞うなど、非常に難しいコンディションとなっていた。
auto sport web Sprint Cup:レース1は植毛GT-Rが快走も、最終周の逆転でSYNTIUM RC Fが優勝
各車ともスターティンググリッド上でタイヤ選択に頭を悩ませることになるのだが、スプリントという性格、またジェントルマンドライバーも多いなかで、ほとんどのチームがウエットタイヤを選択した。これで“外して”しまってはスプリントだけに取り返しがつかないからだ。
しかし、今回予選で田中勝輝と飯田太陽が好走をみせた植毛GO&FUN GT-Rは、予選5番手のグリッドに着く前の試走で田中が「スリックでいけるかもしれない」とチームにインフォメーションする。当然チームとしては悩んだが、その決断はスタート後数周で実を結ぶことになった。
スタート直後、SYNTIUM LMcorsa RC F GT3の吉本大樹が「しまった!」とコクピットで感じていたとおり、コース上は急速に乾き、スリックが俄然優位になったのだ。今季スーパーGTのシリーズ戦で残念ながら1ポイントも獲得できなかった植毛GO&FUN GT-Rが快走をみせ、一気にトップに浮上した。
しかも、ここでこのレースのレギュレーションの妙が働く。ふだんのシリーズ戦であれば、すぐにピットインしてスリックに替えればダメージが少ないが、このレースはスタートから残り30分から20分の間にピットインしなければならず、かつピットインからアウトまでの時間が70秒(ジャッキアップしたとき=タイヤ交換を行ったときは100秒)に定められている。つまり、ウエットスタート組は残り30分まで粘れなければならなかったのだ。
この間に田中が築いたリードを飯田が繋いでいくことになるが、ここで後半追い上げたSYNTIUM LMcorsa RC F GT3の宮田の力走が光った。一時は37秒ものギャップがあったにも関わらず、ABSやトラクションコントロール等の電子デバイスを駆使し、その差を詰めるとファイナルラップにオーバーテイク。第6戦オートポリスでもみせたかのような逆転劇を披露した。
2位となった植毛GO&FUN GT-Rは悔しいレースだったが、田中も飯田も表彰台を喜んだ。今季スーパーGTのシリーズ戦では悔しいレースが続いただけに、なおさらだろう。
一方、予選2番手につけたHOPPY 86 MC、予選3番手につけた埼玉トヨペットGB マークX MCとも、タイヤのウォームアップに苦しむ結果となった。車重が軽いGT300マザーシャシーは、タイヤの発熱に苦しむことが多いが、今回はそれが大きく影響してしまうことになる。HOPPY 86 MCの松井孝允も交代直後に大きく順位を落としたが、終盤それを取り返すような展開となった。埼玉トヨペットGB マークX MCも同様で、最終的に3位を奪還する結果となった。
そして『auto sport web Sprint Cup』の特徴として、決勝レース1の表彰式で、翌日のレース2をリバースグリッドにするか否かの抽選が行われたのだが、見事(?)吉本がリバースグリッド決定を引き当てた。
「あの箱の中は絶対『リバース』の紙しか入っていなかったんじゃないかと思います(笑)」と吉本は笑うが、これでポールポジションスタートには6位となったBH AUCTION CORVETTE GT3(武井真司/笹原右京)が、2番手にはLMcorsa Ferrari 488 GT3(河野駿佑/菅波冬悟)がつけた。おそらく笹原と菅波がスタートを担当するはずで、どんなレースをするか楽しみなところ。そして、今日のレースでウォームアップに苦しんだマザーシャシー勢も“対策”を検討している様子。速さを増しているTOYOTA GR SPORTS PRIUS PHV apr GTの2台など、11月24日のレース2も見どころの多い戦いになるはずだ。
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