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スタートからまったく違う 4モーター1070psのFCX-1とは? 静かな電動ラリークロス・マシン 

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スタートからまったく違う 4モーター1070psのFCX-1とは? 静かな電動ラリークロス・マシン 

電動パワートレインと相性がいいラリークロス

日本では馴染みが薄いものの、オンロード・コースとオフロード・コースが混在したサーキットを高速で駆け回るラリークロスは、欧州や北米では比較的人気のモータースポーツになっている。

【画像】静かな電動ラリークロス・マシン 1070psのFCX-1 クワッドモーターのEVは他にも 全125枚

ハイパワーなマシンが競い合うエキサイティングなレースだが、スプリント形式で走行距離は短く、実は電動パワートレインとの相性がいい。既に多くのチームが、バッテリーEVで戦っている。

それでは、内燃エンジン・マシンとの違いはどんなものなのだろう。ドライバーへ求められるスキルは異なるのだろうか。筆者はアメリカへ渡り、直接確かめることにした。

電動のラリークロス・マシンを駆るアンドレアス・バッケルド氏は、そんな変化を受け入れた1人だ。過去7年間はターボエンジンを積んだマシンで戦い、2021年シーズンには欧州チャンピオンに輝いている。

ノルウェー出身で31歳。ドライヤー&ラインボールド・レーシングが運営する、モンスター・エナジー・ラリークロス・チームに所属し、北米を中心にシリーズ戦が開かれるニトロクロス・シリーズのトップクラスに挑んでいる。

ドライヤー&ラインボールド・レーシングは、4基の駆動用モーターで1070psを発揮する「FCX-1」を2022年シーズンに導入。バッケルドは、アプローチを根本から変える必要があったと振り返る。

「ターボエンジンで身につけてきたことは、電動マシンの場合、同じようには活かせません。慣れるまで、多くの人より苦労したと思います。順応を求められることが、多くありました」

スタートからまったく違う静けさ

その違いは、グリッドに並んだ時から存在するという。「格闘技の試合と同じように、アドレナリンが溢れる感覚はありますが、スタートからまったく違うんです」

「ターボエンジンのマシンでグリッドに並び、回転数を上昇させてグワーッというサウンドが放たれると、興奮が高まります。気が引き締まり、時間があっという間に過ぎます」

「しかし、電気自動車は静かなまま。シグナルが点灯するまで、不自然なほど時間が長く感じるんです」

それでもスタートすれば、1070psを開放するラリークロスマシンに、ドラマ性が不足することはないようだ。エグゾーストノイズがなくても。「このクルマは、今まで経験したことのないものでした。とにかく速いんです」。とバッケルドが笑う。

フルタイム四輪駆動で、発進直後から最大トルクが放出される。可能な限り多くのパワーを、タイヤへ効果的に伝達することがカギだという。

「本来の自分のスタイルは、滑らかにアクセルペダルを操ること。世界チャンピオンにも輝いた、レーシングドライバーのマティアス・エクストロームさんと同じチームにいた時は、彼より0.1秒だけ速く周回できるサーキットがありました」

「データを確かめると、彼はサーキットの67%でアクセル全開。でも、わたしは7%しかフルスロットルではなかったんです。お尻へ伝わるフィーリングで、トラクションの具合を感じ取っていたんです」

とても面白くて速いことは間違いない

「しかし瞬間的に大きなトルクが生まれる場合、一気にフルスロットルにして路面をタイヤで蹴り出すことが重要になります。トラクションを得るのは、それからです」

FCX-1は車重が1700kgほどあり、内燃エンジンのマシンより500kgも重い。その違いは、コーナリング時のレスポンスに表れるという。早い段階で直進状態へ整え、パワーを掛けることが大切になるらしい。

ラリークロス・コースの特徴となるジャンプセクションでも、重さによる違いがある。内燃エンジンのマシンはフロントノーズが重く、ダウンフォースも大きく働く。

しかし、電動マシンは前後の重量バランスが良好で、ダウンフォースが大きくは発生しない。「ジャンプ中は有利ですね」。とバッケルドが続ける。

ノイズの欠如は、走行中にも影響を与えるそうだ。「フロアに蹴り上げた土や石が当たる音など、様々なノイズが響きます。グリップやトラクションの状態を把握するために、聴覚的な違いも学ぶ必要がありました」

バッケルドは、一般的な電動ハイパーカーで失われる音響的な体験にも触れる。それが少し残念だと認める。

「ノイズが懐かしいです。でも、とても面白くて速いことは間違いありません。テレビを消音にしてラリークロスのビデオを見ているような、そんな感覚かもしれません」

電動ラリークロス・マシン FCX-1の特徴

このFCX-1は、ラリークロス・チームのオルスバーグスMSEと、電動モビリティを得意とするQEVテクノロジーズ社による共同開発。コストを抑えつつ高い性能を実現し、2022年シーズンから導入が始まっている。

モンスター・エナジー・ラリークロス・チームで技術者を務めるジョナサン・キャリー氏は、これまでのキャリアで多くのマシンに携わってきたが、FCX-1に匹敵するものはなかったと振り返る。そんな彼に、マシンの特徴を伺った。

パワートレイン

「モーターは4基。タイヤ毎に分割されているのではなく、4基が一体になっています。フルタイム四輪駆動で、トルク分配率は50:50の固定。基本的にはメカニカル・デフですが、パワーが大きいのでユニット自体も大きいですね」

トランスミッション

「バッテリーEVでは珍しく、リア側に3速シーケンシャルが組まれ、フロントデフへ伝達するプロペラシャフトが備わります。トルクが太いので、レースでは2速と3速しか使いません。1速はバラストみたいなものです」

ブーストモード

「5種類のブーストモードが用意され、ドライバーが選べます。最大の300kW(約407ps)のブーストを有効にするには、駆動用バッテリーの残量が80%以上必要で、約2周は使えます。弱いブーストなら、もっと長く有効です」

サスペンション

「非常にアグレッシブな特性で、ダンパーの長さはかなり短いんです。車重が1700kgあり、バネ下重量も軽くないので、ダンパーの開発には相当な努力が費やされています」

「ダートやジャンプを前提に、スプリングはソフトに設計されています。姿勢制御は油圧でまかなわれている感じです」

ブレーキ

「ブレーキは強力。制動力を補助する目的で、回生ブレーキも備わります。アクセルペダルを戻した時に有効にするか、ブレーキペダルを踏んだ時に機能させるか、ドライバーが選べます」

タイヤ

「わたしたちのチームでは、ポルシェのGTレース用ウェットタイヤを履かせています。ラリークロス用ではありませんが、ダートコースでも問題無く使えることに驚いています。将来的には、専用タイヤの開発も検討されているようです」

FCX-1 ラリークロス・マシンのスペック

英国価格:−ポンド
全長:−mm
全幅:−mm
全高:−mm
最高速度289km/h(予想)
0-100km/h加速:1.4秒
航続距離:21km
電費:−m/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:1700kg(予想)
パワートレイン:クワッド・アキシャルフラックス・モーター
駆動用バッテリー:51.27kWh
急速充電能力:−kW(DC)
最高出力:1070ps
最大トルク:111.9kg-m
ギアボックス:3速シーケンシャル(四輪駆動)

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